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企業が取り組む「BCP(事業継続計画)」とは
シリーズ第4回 サプライチェーンにおけるBCPの課題と提言

 
 
 

サプライチェーンのBCPは発注者側の問題

 
 2007年に、富士通が重要な取引先約300社に対して行った事業継続能力の評価によると、BCPを策定していた取引先は国全体の平均値よりも多いことがわかったが、300社の中の30%程度にとどまった。その後、サプライチェーン全体の強化に力を入れてきたため、2009年の段階では50%弱にまで向上しているという。
 中小企業でのBCP策定がなかなか進まないいま、BCPへのモチベーションを上げるにはこうした大企業からの要請と支援が必要となるのではないだろうか。
 しかし、「できてないからやれと言うだけでは意味がないと」 伊藤氏は言う。それでは、発注側のメーカーが本来抱えるリスクを得意先に投げつけるだけでしかないというのだ。
 
 「取引先が進歩するために、われわれに何ができるかということを踏み込んで考えます。取引先によって取り組みの内容は変わってくるので、遅れている、あるいはわからないというところには、無償のセミナーやBCP構築の講座を富士通の費用でやっています。いい加減に評価して『やっておけよ』などということはあまりにも無責任。『やっています』 といわれて安心しているわけにもいきません。評価した結果は、必ず課題を含めてフィードバックしています」
 
 評価の枠組みは、まず物理的な対策として何をやっているか、もう一つは、それが経営の中でマネジメントシステムとして機能しているかということだという。例えば、
 
  • 経営者が意識した活動になっているか
  • 改善のプロセスがあるか
  • 訓練をちゃんとやっているか
  • 重要なデータをバックアップしているか
  • 重要な製造ラインがやられてしまったときに代替手段を持っているか
 
 など、ハードとソフトの両面を見るようにしているという。
 BCPの策定に手をこまねいていると、サプライチェーンからはじき出されかねない時代である。サプライヤは、取引関係から「外圧」をかけられたらBCPを策定せざるをえない状況にある。しかし、本当の意味でのBCPが構築できていないのに、「あります」という答えをもらっているのが現状ではないかと伊藤氏は警鐘を鳴らす。
 
 「サプライチェーンのBCPとは、発注者側の問題なんです。やっていますと言われれば安心しますが、発注サイドが成熟してBCPの考え方を理解していないと、自分たちの持っているリスクを投げつけてしまっていることになる。取引先企業を追い詰めるだけで、形ばかりのBCPを作るということで終わってしまう。これまで日本では、中小企業庁が中小企業に『BCPを作れ』とけしかける形で進んできましたが、本来は経産省あたりが発注サイドの企業に対して、事業継続の考え方とかサプライチェーンでBCPを進めることについて、考え方や指導を行っていかなければならないのではないかと思います」
 
伊藤氏が指摘するように、サプライチェーンのBCPは、中小企業が 「外圧」 として受け止めるのでなく、発注者側の立場からもその意味を考えることが大事だという気がする。
 
 
 
 
 

 プロフィール 

古俣愼吾 Shingo Komata

ジャーナリスト

 経 歴 

1945年、中国生まれ。新潟市出身。中央大学法学部卒業。広告代理店勤務の後フリーライターに転身。週刊誌、月刊誌等で事件、エンターテインメントものを取材・執筆。2000年頃からビジネス誌、IT関連雑誌等でビジネス関連、IT関連の記事を執筆。2006年から企業の事業継続計画(BCP)のテーマに取り組んでいる。

 

 
 

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