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企業が取り組む「BCP(事業継続計画)」とは
シリーズ第5回 CSR(企業の社会的責任)としてBCPをどう考えるか

 
 
 

各企業でCSRにおけるBCPの位置づけは異なる

 その、CSRに関する情報開示をしている企業396社のうち、95%がCSRに関する情報をインターネット上に公開していた。企業のWebサイトをチェックしてみると、最近はBCP構築そのものをCSRの柱の一つとして据えている企業が多くなってきていることがわかる。
 例えば、NECは、災害時における社会的責任を果たすことが大事であること、SCMが複雑、高度化している中で供給責任を果たすため、事業活動を通して社会的課題解決への貢献を果たすことなどをうたっている。
キリンビールや住友電気工業など、CSRレポートや有価証券報告書にBCP策定を大々的に記載している企業も増えている。投資家(とくに外国人投資家) は、BCPが策定されているかどうかで企業のリスクを測っているからなのだろうか。 
 自社のWebサイトでBCPをPRしている企業も多い。その場合も、CSRの一環として取り組んでいることを明示している。日本ユニシスグループでは、CSR推進部を設け、CSRレポートの中で、新型インフルエンザ対策と事業継続計画(BCP) について詳しい取り組みを紹介している。
 ニコンでは、CSR委員会傘下の総合防災BCM委員会としてBCMの取り組みを進めている。例えば、BCMは企業の生命線を決めることであり、経営戦略そのものにほかならない。各事業部門やグループ会社のBCM担当者の 「座学」 「訓練」 を行い、顧客、取り引き会社社員、地域社会への支援活動を行い、社会や経済の安定に貢献するのが企業の社会的な責任を果たすことであるとうたっている。 
 コクヨグループでは、2004年にコクヨグループのCSR憲章を定め、2007年にはBCPの策定を実施。2008年度には 「安否確認システム」 の構築と訓練の実施、大規模避難訓練、新型インフルエンザ対策に取り組んでいる。コクヨグループでは、BS25999の認証をオフィス家具業界で初めて取得している。
 
 

優秀実践賞を受賞したパナソニックのBCP

 CSR経営を支えるガバナンスの一つとしてリスクマネジメントを掲げ、その中でBCPの取り組みを積極的に打ち出しているのがパナソニックだ。
 同社では社長と取締役・役員で構成される 「グローバル&グループ リスクマネジメント委員会」 を設置し、グローバルかつグループ横断的に様々なリスクに対応できる体制を構築している。2009年度の全社重要リスクとして「大規模自然災害/新型インフルエンザなどの感染症感染/火災など大規模事故/技術情報漏洩/品質問題(不安全事故)/主要データセンターシステム停止/独禁法違反/輸出管理法違反/個人情報漏洩/移転価格税制の強化/リスク発現時の対応不全」の11のリスクを決定している。
 中でもBCPに直結するのが大規模自然災害対策と感染症対策だろう。大規模自然災害リスク対策では、大規模地震リスクを想定し、2009年度までにすべての事業ドメイン会社でBCPを策定完了するとともに、事業ドメイン会社内の他拠点への横展開を推進しているという。
 感染症感染リスクについては、同社では昨年、新型インフルエンザのBCP策定に着手した。社員・家族の生命の安全はもとより、厚生労働省が要請する 「感染拡大の防止」「不要不急の業務の縮小・休止」 を重視した事業継続のあり方や、地域社会貢献といった視点を取り入れた内容になっている。BCPを策定することでステークホルダーからの信頼・信用を高め、ブランドイメージの向上や競争力向上に努めると同時に、同社の事業継続能力を高めて企業の社会的責任を果していくという。このような取り組みに対して、事業継続推進機構(BCAO)より2008年度BCAOアワード優秀実践賞が授賞された。
 
 
 各企業で、CSRとしてのBCPの取り組み内容や位置づけが異なるのは、CSRのSが 「Social=社会」 で、意味が広すぎて漠然としているからではないだろうか。ここで紹介した大企業でなく、中小企業がCSRの一環として自然にBCPを捉えるとき、このSは 「Stakeholder」 と考えた方がぴったりイメージできるようになる気がする。経営トップは、会社の成長、発展と運命を共有しているすべての関係者=ステークホルダーに責任を持たなければならない。そのようにはっきりした認識を持つとき、BCPが単に “生き残る” 企業の原動力でなく、“勝ち残る企業づくり” の原動力になるに違いない。 
 
 
 
 

 プロフィール 

古俣愼吾 Shingo Komata

ジャーナリスト

 経 歴 

1945年、中国生まれ。新潟市出身。中央大学法学部卒業。広告代理店勤務の後フリーライターに転身。週刊誌、月刊誌等で事件、エンターテインメントものを取材・執筆。2000年頃からビジネス誌、IT関連雑誌等でビジネス関連、IT関連の記事を執筆。2006年から企業の事業継続計画(BCP)のテーマに取り組んでいる。

 
 

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