地味な仕事をコツコツ続ける職場などでは、大きな成功体験を得られることがあまりない。では、そういう仕事場の経営者や上司の方は、従業員をどのようにほめて、モチベーションをあげればいいんでしょうか。
今回も皆さんと一緒に、未来を切り拓いていく言葉を獲得するためのトレーニングをしていきます。私と一緒に考えながら、あなた自身の言葉と考えを磨く助けにしてください。
「貢献の実感」を与えよう
「貢献の実感」を感じさせてあげればいいんです。
仕事として存在する以上、誰の役にも立たない業務はありません。ですから、当たり前のように、やるべきことをやってくれていることが、組織に貢献しているのだということを実感させてあげる。これが大事です。
以前私は、現代に働く若者たちは、「心の報酬」を求めている――というお話をしました。心の報酬とは何か。一つは成長の実感。そして、もう一つが貢献の実感です。
では、さほど変化のない環境で仕事をしている従業員に、貢献の実感を与えるためにはどうすればいいのか。
一人ひとりの従業員に対して、他者との比較で評価をするのではなく、その従業員自身がどのように変化して、どのように貢献してくれたのかを、認め伝える、光を当てる、すなわち、ほめることが大事です。
仮に、80点の仕事が求められている職場で、今まで55点だった従業員の評価が60点になったとします。あなたはその従業員を認めますか? 認めないと、ほめられないですよね。その従業員が5点アップしたというプラスの変化をきちんと評価する。これが大事です。大切なことは、他者との比較で評価しないことです。「ほめる」の反対は「比べる」ことなのだと、覚えておいてください。
感謝の気持ちを伝える
とはいえ、なかなかほめることが見つからない従業員もいるかもしれません。その場合は、小さい頼みごとをしてみるのがいいでしょう。そして、その仕事をきちんとこなしてくれたことに対して、「ありがとう」と伝える。
感謝の言葉は、最高のほめ言葉の一つです。感謝された本人も、貢献の実感を得られる。従業員一人ひとりの得意なところを見つけて仕事を頼む。ほめることが見つからないと思う経営者や上司の方は、そういう視点で部下を見ることが大切だと思います。
相手に関心を持つ
しかし、そうやって部下の得意な部分を把握しておくためには、全員の日常の仕事ぶりを、きちんと見ておくことが大事です。相手に関心を持つことが、ほめる達人への第一歩です。
哲学者の西田幾多郎氏の言葉に「物を知るには、これを愛さねばならず、物を愛すには、これを知らねばならない。」という言葉があります。対象に関心を寄せることが、それに近づくためのきっかけなんですね。
つまり、相手の喋ったことを聞き流すのではなく、関心を持って踏み込んでみる。質問してみる。出身地が同じだったり、相手と共通の趣味があったりすれば、一気に相手との心の距離が縮まります。またその一方で、正反対の性格の人同士も仲良くなりやすいものです。自分と異なるものを有していることも、価値になるんですね。
自分にはないものを持っている、自分の幅を広げてくれる人だと思えば、関心の対象になるはず。何に対しても興味を持って、自分とは違うからと拒否するのではなく、懐に入り込もうとする姿勢が大事です。
会社の後輩や上司と接するときもそうですね。どんな人に対しても興味を持って接してみる。最初は大変かもしれませんが、続ければ習慣になります。ぜひ、試してみてください。
第13回 大活躍していなくても、ほめることはできる
(2018.4.25)
著者プロフィール
西村 貴好 Nishimura Takayoshi
一般社団法人日本ほめる達人協会 理事長
経 歴
1968年生まれ。大阪府出身の「泣く子もほめる!」ほめる達人。ホテルを経営する家の三代目として生まれ、経営術を学びつつ育つ。関西大学法学部卒業後、大手不動産に入社して最年少トップセールスを樹立。その後、家業のホテルを継いで経験を積み、2005年に覆面調査会社「C’s」を創業する。短所ではなく長所を指摘することが調査対象の企業成長に効果があると発見し、「ほめる」ことの重要性に気付く。数々の実績を上げる中で、2010年2月に「ほめ達!」検定を実施する、一般社団法人日本ほめる達人協会を設立し、理事長に就任。以降、検定を通じて「ほめ達!」の伝播に尽力している。著書に『繁盛店の「ほめる」仕組み』(同文舘出版)、『ほめる生き方』(マガジンハウス)、『心をひらく「ほめグセ」の魔法』(経済界)、『泣く子もほめる!「ほめ達」の魔法』(経済界)、『人に好かれる話し方41』(三笠書房)などがある。
日本ほめる達人協会オフィシャルサイト
西村貴好オフィシャルブログ
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