情報化社会では、昔よりも情報の価値が低くなりました。インターネットを使えば、簡単に必要な情報を得られるからです。その意味で言うと情報化社会は、単なる知識に価値がなくなっていく時代とも言えます。
ですから皆さん、知識ではなく知恵を手に入れましょう。知恵は体験を通してしか身に付きません。そして、自分のものになった知恵をどう使うかが大事です。これからは知恵を持ち、それを使いこなせる人が魅力的に輝く時代です。
今回のテーマは「努力を続けることで得られる成果と、危機感や劣等感について」。
皆さんと一緒に、未来を切り拓いていく言葉を獲得するためのトレーニングをしていきます。私と一緒に考えながら、あなた自身の言葉を磨く助けにしてください。
複利の発想を利用しよう
「人類最大の発明は、複利である」
という言葉があります。複利とは元本と利息をあわせ、さらに利息をかけて、上乗せしていくこと。この複利の発想を活用すると、ほんの少しでも毎日努力を継続し続けることの大事さとすごさがわかります。
例えば、いつも通りに過ごした1日を100%とします。そして、いつもより1%だけ何らかの努力をした場合、その数値は101%になるとする。その翌日も1%分だけ余分に頑張る。それを1年間続けたらどうなるでしょうか。普通に考えると、毎日1%だけプラスなので、365日で、プラス365%、何もしない時の3.6倍と考えがちですが、とんでもない。実際には複利で増えていくのです。つまり、101%の365乗の成果が得られます。なんと、何もしないで過ごした場合の、約38倍です。
毎日1%余分に努力すれば、それだけの成果が得られるのです。1日は24時間。仮に8時間睡眠をとるとして、残りの16時間のうちの1%は、約10分です。その10分を使って本を読む、語学を勉強する、体を鍛える――何でもいいから、複利の発想でチャレンジしてみてはどうでしょう。1年後にはきっと、誰の目にも明らかな成果が得られるはずです。
危機感は成長を加速する
また、自分にプレッシャーや危機感を与えることで、自分の成長が加速します。自らが、「このままではダメだ」と危機感を持って仕事をしている人は優秀です。なぜなら、自分自身の成長のために、日々、新しいことにチャレンジするなど変化を厭わずに努力できるからです。漫然と仕事をこなしているだけの人材よりも、会社の経営者や上司は、そういう部下をほしいと思っているはず。
ここで有名な、「ゆでガエルの法則」を紹介しましょう。カエルを熱いお湯に入れるとどうなると思いますか? 当然、熱いですから外に出ようと飛び跳ねます。それに対して、水に入れてから徐々に熱すると、カエルは緩やかに上がり続ける水温に慣れていくので、外に出ようとしません。そして、知らぬ間にゆでガエルになって死んでしまうのです。
これはビジネスシーンでよく使われる寓話です。現状に甘んじるのではなく、自ら危機感を持って状況を変化させていくことの大事さを言っていることが、よくわかりますよね。
変化を恐れる気持ちを乗り越えるには
しかし、変化をすることに苦痛に感じる方もいると思います。身の回りの環境を変えるのには、不安が伴いますからね。そうやって一歩踏み出せない自分に対して、劣等感を持ってしまう人もいるかもしれません。
皆さんは自分のことを、劣等感の強い人間だと思いますか? 劣等感ってマイナスな印象がありますよね。でも私は劣等感を持つのは必ずしも悪いことではないと思います。本当の意味での劣等感とは、自分の理想と比べて今の自分が劣っていると感じる場合に限ります。他人との比較ではありません。自分の理想像よりも現在の自分はまだまだ劣っている――そう感じる人は現状に不満があるという、向上心・意欲を持っているわけですから、いいことなのです。
理想の自分に近づきたいのに行動を起こせない方に、とっておきの方法があります。
それは「銃殺されたとしてもできないか?」と考えてみること。
できれば避けたい、やりたくないと思っていることでも、それをしなければ3日後に銃殺されてしまうとしたら、どうしますか? 当然、やりますよね(笑)。変化を迫られ、それに対して臆してしまう自分に気付いたら、そのことが、自分の命を取られてもしたくないことなのかを考えてみてください。そうやって考えてみると、大抵のことはできるものです。
当協会の認定講師養成講座には、結構な分量の原稿を一定期間で完全に暗記する――など、なかなかチャレンジングな課題・宿題がいくつかあります。講座の課題以外でもお仕事や家事などやらないといけないことがいっぱいの、受講者の皆さんに私はこう言います。「大変お忙しい皆さんにプレゼントです。もし、時間がないと思ったら『銃殺されてもできないか?』そう考えてみてください。しかもリアルに」。すると皆さん、そろって課題を成し遂げられます。人生を濃く生きるヒントかもしれませんね。
第9回 1日10分の努力が1年後に38倍の成果になる
著者プロフィール
西村 貴好 Nishimura Takayoshi
一般社団法人日本ほめる達人協会 理事長
経 歴
1968年生まれ。大阪府出身の「泣く子もほめる!」ほめる達人。ホテルを経営する家の三代目として生まれ、経営術を学びつつ育つ。関西大学法学部卒業後、大手不動産に入社して最年少トップセールスを樹立。その後、家業のホテルを継いで経験を積み、2005年に覆面調査会社「C’s」を創業する。短所ではなく長所を指摘することが調査対象の企業成長に効果があると発見し、「ほめる」ことの重要性に気付く。数々の実績を上げる中で、2010年2月に「ほめ達!」検定を実施する、一般社団法人日本ほめる達人協会を設立し、理事長に就任。以降、検定を通じて「ほめ達!」の伝播に尽力している。著書に『繁盛店の「ほめる」仕組み』(同文舘出版)、『ほめる生き方』(マガジンハウス)、『心をひらく「ほめグセ」の魔法』(経済界)、『泣く子もほめる!「ほめ達」の魔法』(経済界)、『人に好かれる話し方41』(三笠書房)などがある。
日本ほめる達人協会オフィシャルサイト
西村貴好オフィシャルブログ
http://ameblo.jp/nishitaka217/
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