「ホコリと掃除」という小さな問題から
経営改革の根幹について考えた
なぜこんな、「ホコリ」「掃除」という初歩レベルの話から始めたかというと、つい最近自分の中で体系化されてきた考え方がわかりやすく説明できると思ったからだ。
どういうことかというと、2010年代までのサトーカメラは男性主体の男っぽい会社だった。女性は昇進しにくいとか昇給が抑えられているとかそういうことではなく、例えば道具一つでも、男性が使う前提で選んでいた。
だから、店の床を拭くモップは業務用のデカい重いやつ。掃除機も業務用の大型掃除機。本体が重くてバケツみたいな形になっているのがあるでしょう。あれだった。
けど、ふと気付いたら、2020年以降に入ってきた店舗スタッフは、大変なんだよね。モップも掃除機も重過ぎて。デカ過ぎて。なぜって、2020年から店舗スタッフを女性主体に切り替えているから。
もちろん、10年20年勤めてもらっている女性スタッフは重い掃除道具に順応してくれているけど――今思えば大変な思いをさせてたんだなぁと反省しきりだ――、新しく入ってくるスタッフのことを考えたら、男性視点の環境、仕組み、道具は全部、改めていかなきゃならない。経営改革を進めていくうえで男性主体の職場から女性主体の職場に変えているんだから、なおさらだ。
言われた側が視点を変えられない理由
それでも変わってもらわなきゃいけない
そのことに気付いたから、私は、自分が8月のあいだに回った店舗の一つで、掃除道具のフロア用コロコロを試験的に導入してみた。そうしたら女性スタッフから高評価を得たので、直近の会議で「ホコリ対策の掃除道具として、手軽に使えるフロア用コロコロを追加しないか?」と部課長会議で提案してみた。
そうしたら、見事に却下されてね(笑)。その理由は「そんなんで店がキレイになるはずがない!」、「ホコリはモップのほうが取れる」「業務用に慣れてもらわないと困る」、などなど。
言葉はさまざまだけど、それを聞いて私は気付いた。「人は自分主体の視点からなかなか抜け出さないものなんだな」と。そして思った。「どっちが正しいとか正しくないという話ではなく、視点を変えてほしいだけなんだけどな」と。
別に、今までの道具(モップと掃除機)を否定しているんじゃない。それはそれで必要に応じて使えばいい。けど、「変えよう」と言われた側は、自分たちの覚えて馴染んでやってきたやり方や経験を否定されたみたいに感じるんだろうね。私としては「そういうことじゃないんだ。前提が変わったのに対しどう適応しようかって話をしてるんだ」ということなんだけどね。
こういうとき、昔は「いいからやってください」と指示命令してトップダウンでやらせていた。――けど、それを変えるべく経営改革に着手したのだから、それらを進めるためには、部課長自ら気付いて変われるようになってもらわなきゃいけない。私に命令されて変えるのではなく、視点を変えることで思考を変え現状を解読していく成長プロセスを、自ら起動できるようになってもらわなきゃいけない。
視点→思考→道具→行動→意識→結果→
成長サイクルを回す
まず【視点】を変える。これはいわば「気付きを得る」ことだ。視点が変わると【思考】(考え方)が変わる。
思考が変われば【道具】が変わる。仕組み、システム、やり方等々を変えること。
道具が変わると【行動】が変わる。それも自動的に変わるのが道具変えのいいところだ。
そうすると【意識】が変わり、意識が変わると【結果】が変わる。
その結果から再び、最初に始めたときの視点を変えたりする。そうやってサイクルを何度も回していくわけだ。
人材マネジメントの分野で、「(部下の側に)やらされてる感がある」という言い方をよく聞くが、あれはこの図左下の【行動】と【意識】だけにフォーカスして人材を動かそうとするからだ。
昔は情報が遮断されていたのでそれで良かった。行動を変えさせるために部下に指示命令し、意識を変えさせるために部下を褒めたり叱責したりする。それが人を動かす手段だった。私自身もそうしてきた。
けど、万人がいつでも情報収集できるスマホ(道具)を持つようになったことで、時代(人々の行動と意識)が変わった。
今の若い人たちは昔の若者より、知識と情報をスマホ(道具)で得ている。自分が納得しないと動かないのは当然だ。だから、会社組織も、本人に意思決定(行動)させて成長を促す仕組みに変えないと時代に乗り遅れるのだ。
先ずは変化を信じて
待とう
先述した通り、道具を変えると行動が自動的に変わる。ある意味、「こう使ってくれ」という指示が道具のほうから発せられるからね。
そうやって行動が変わると、行動というのはアウトプットする行為だから、以前と違う現象が自分の外に“見える化”されることで、たとえその時は自覚が追いつかなくても、意識は微妙に変化をこうむる。そのぶん結果も変わる。
ここまで来ると、社長がやるべき事柄のもう一つが浮上してくる。「変わった結果を評価してあげる」だ。「こっちは変わり映えがないけど、こっちはすごく良くなってるな」と変化を拾ってあげる。また、「これがこんなに良くなったのはなぜだと思う?」と問いかけて、気付き(視点)を促せばいい。
そうやってもう一度サイクルに乗せてあげれば、【視点】→【思考】→【道具】→【行動】まで来て、前みたいに指示が飛んでこない――今度は皆さんは見ているだけだからね――ことを怪訝に感じた瞬間に、彼らは悟るだろう。「あ、そうか。本来の起点は【視点】を変えることだ。自己否定がスタートなんだ」と。
もちろん、これはキレイ過ぎる展開で、現実はそううまくはいかない。二回りめの【行動】を見ていても一向に変わる気配がなくて、再び指示命令で動かさなきゃいけない場合のほうが多いはずだ。イライラを抑えながら再度褒めたり叱ったりと、意識を変えさせなきゃいけないケースも多々あるだろう。
けど、それらを徐々に控えていくことはできる、辛抱強く続ければ、各自の中でサイクルが回り始めていく。実際、うちも少しずつ回り始めてホッとしているところだ。
https://fb.me/e/7gVbqgrrx
事務局 おぐま経営研究所 勝友会
■10月28日 岐阜勝人塾
事務局 メイクオーヴァ
■最新著書「地域密着店がリアルとネットで全国繁盛店になる方法」
https://amzn.to/3EfDs6W
■佐藤勝人YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UC4IpsvZJ6UlNcTRHPgjellw
■佐藤勝人LINE公式会員募集中
セミナーやイベント等の最新情報が届きます
→ https://lin.ee/qZEREN1
■佐藤勝人の講演・セミナー・個別支援のお問合せ
日本販売促進研究所 担当/佐藤夏美 contact@jspl.co.jp
vol.95 自己否定から始まる成長サイクルの話
(2024.9.18)
著者プロフィール
佐藤 勝人 Katsuhito Sato
サトーカメラ代表取締役副社長/日本販売促進研究所.商業経営コンサルタント/想道美留(上海)有限公司チーフコンサルタント/作新学院大学客員教授/宇都宮メディア.アーツ専門学校特別講師/商業経営者育成「勝人塾」塾長
経 歴
栃木県宇都宮市生まれ。1988年、23歳で家業のカメラ店を地域密着型のカメラ写真専門店に業態転換し社員ゼロから兄弟でスタート。「想い出をキレイに一生残すために」という企業理念のもと、栃木県エリアに絞り込み専門分野に集中特化することで独自の経営スタイルを確立しながら自身4度目となるビジネスモデルの変革に挑戦中。栃木県民のカメラ・レンズ年間消費量を全国平均の3倍以上に押し上げ圧倒的1位を獲得(総務省調べ)。2015年キヤノン中国と業務提携しサトーカメラ宇都宮本店をモデルにしたアジア№1の上海ショールームを開設。中国のカメラ業界のコンサルティングにも携わっている。また商業経営コンサルタントとしても全国15ヶ所で経営者育成塾「勝人塾」を主宰。実務家歴39年目にして商業経営コンサルタント歴22年目と二足の草鞋を履き続ける実践的育成法で唯一無二の指導者となる。年商1000万〜1兆円企業と支援先は広がり、規模・業態・業種・業界を問わず、あらゆる企業から評価を得ている。最新刊に「地域密着店がリアル×ネットで全国繁盛店になる方法」(同文館出版)がある。Youtube公式チャンネル「サトーカメラch」「佐藤勝人」でも情報発信中。
オフィシャルサイト
オフィシャルフェイスブック
https://www.facebook.com/katsuhito.sato.3?fref=ts
サトーカメラオフィシャルサイト
YouTube公式チャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCIQ9ZqkdLveVDy9I91cDSZA (サトーカメラch)
https://www.youtube.com/channel/UC4IpsvZJ6UlNcTRHPgjellw (佐藤勝人)