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アニメや漫画、ゲーム、アイドル・・・。自分の“推し”をこよなく愛し、とてつもない熱量を持って応援するオタク。最近ではSNS上でオタク同士のコミュニケーションが活発化し、オタクを自称しやすくなったことで、その言葉に対する否定的な印象が薄れてきたように思います。こうした状況下で、オタクビジネスに参入する企業も続々登場。オタク目線の発想で、推し活を充実させるサービスを展開しています。そんな“オタクのオタクによるオタクのためのビジネス”を繰り広げている企業をピックアップ! オタクビジネスの醍醐味などをうかがいます。
 
第一号店となった池袋Aスタジオ
第一号店となった池袋Aスタジオ
第1回は株式会社クララボが運営するオタク女性向けパーソナルジム・Clara(クララ)をフィーチャー。その名の通り“推しに恥じない身体をつくりたい“オタク女性のためのジムで、さまざまなアニメや漫画などのグッズで彩られた空間の中、お気に入りのアニソンを聞きながらトレーニングに励めるというオタクには夢のような場所。トレーナーも全員オタク女性とあって、”推し語り“に花を咲かせながら楽しく身体を鍛えることができるのです。推しのためにきれいになりたいけど、非オタのトレーナーにそれを伝えるのは恥ずかしいし、陰キャだからジムに馴染めないかもしれない・・・という悩める乙女を救う、新形態のジム・Clara。その誕生の裏側と、オタク向けジムとしての工夫の数々に迫りました。
 
 

「こんな場所を待っていた」 萎縮せずに通える、オタクの聖地のようなジム

 
オタクが安心できる空間がコンセプト
オタクが安心できる空間がコンセプト
たくさんのフィギュアがお出迎え!
たくさんのフィギュアがお出迎え!
Claraは2021年7月、東京・池袋にオープン。設立の背景には、クララボの代表取締役社長CEOを務める作田耀子氏(以下、活動名のSAKU社長)が一般のパーソナルジムで味わった、「こんなこと言ったら引かれるかもしれない」という思いがありました。コスプレ歴18年以上、「生粋のオタク」を自称するSAKU社長は、自ら手がけた衣装を着こなすべくトレーニングを開始。理想の体型を手に入れはしたものの、「男装映えする腹筋をつくりたい」という肝心の目標をトレーナーに言い出しづらく、トレーニング内容にズレが生じることもしばしば・・・。食事の報告する際も、アニメのコラボカフェで食べたメニューはバレないように伝えていたといいます。
 
学生時代から「オタクを幸せにするサービスを0からつくりたい」と、オタクビジネスで独立を夢見ていたSAKU社長。ITベンチャーで培ったノウハウを活かし、オタク女性向けマッチングアプリの開発を行う目的で、2020年にクララボを立ち上げました。ただ、自身がジムで萎縮してしまった経験と「健康のためにジムに行きたいけどちょっと怖い」というオタク仲間の声を聞き、「同じ思いを抱えるオタクの力になりたい」と一念発起。いったんアプリの構築を中断し、まったくの未経験であったジムの運営を決意したのです。通っていたジムがコロナ禍でも伸びていたことも、「マンツーマン指導のパーソナルジムなら需要が見込める」と、SAKU社長の追い風になりました。
 
業界初のオタク向けジムとして多数のメディアから脚光を浴び、Claraにはオープン当初から入会希望者が殺到。「こんなジムを待っていた」というオタクの声に応え、昨年8月には2店舗目を、今年3月には3店舗目を立ち上げました。今後もさらに新店舗をオープンする予定だといいます。Claraがこれほどまでに反響を呼んだ理由をあらためてSAKU社長に聞いてみると、「コロナ禍でトレーニング需要が高まったことに加え、推し活のためにも身体を鍛えたい! というオタクの方々が増えてきたと感じています。また、オタク同士が集まれる機会が減る中、トレーナーとの推し語りを楽しめるというのも魅力になったようです」。イベントや舞台など“現場”で仲間と会いづらくなってしまったオタクにとって、共通の思いを持つトレーナーとの時間は、身体を鍛える以上に有意義なものになっているのかもしれません。
 
Aスタジオとは対照的に、かわいらしい雰囲気の池袋Bスタジオ
Aスタジオとは対照的に、かわいらしい雰囲気の池袋Bスタジオ
「缶バッジのなる木」に飾られた推しに会いに来る会員も多い
「缶バッジのなる木」に飾られた推しに会いに来る会員も多い
 
 

相手の推しを否定しないオタクへの優しさが大事

 
新オープンのスタジオの1室。推しグッズが映えそう!
新オープンのスタジオの1室。推しグッズが映えそう!
推し語りを楽しみにやって来る会員のためにも、「お客様の話を傾聴でき、自身も何かしら推している存在があって“推し愛”に共感できる」トレーナー人材の見極めは、Claraにとって最重要課題。もちろん、ある程度のアニメや漫画などに関する知識は必須で、SAKU社長によれば身体づくりに精通していても、むしろオタク文化に明るくないとClaraのトレーナーとしては厳しいのだとか。そして、何よりも大事にしているのが、会員の「推しを否定しない」こと。一般のジムでは気が引けてしまうオタクが、Claraだからこそ居心地の良さを感じられるよう、“オタクへの優しさ”を持つことを徹底しているのです。ちなみにSAKU社長がオタク用語集を独自に作成しているため、トレーナーはちょっとした“勉強”ができるのだそう。会話に詰まらない対策がされているのも、会員への優しさが感じられます。
 
ただ、いくらオタク向けとはいえジムというとやはり「キツそう」というイメージが付いて回り、通うのには多少緊張してしまうはず。そこでClaraでは、最もユーザーの目に留まりやすいTwitterを駆使し、オタクに安心感を与えています。確かにClaraのアカウントを見てみると、トレーニングや食事にまつわる話以外にも、スタッフの推し活の様子や推しの誕生日を祝う投稿が。SAKU社長いわく「私たちも本当にオタクなんだよと伝えることで親近感を持ってもらえるように」心がけており、Claraに通っている人やこれから入会を考えている人の不安を払拭する狙いがあるのだそうです。こうした、オタクだからこそできるオタクへの配慮が、Claraが支持される理由の一つなのでしょう。
 
 

オタクでつながる出会いに喜びを

 
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SAKU社長の夢は「世界中のオタクを幸せに」
トレーニングを行う場としてだけでなく、オタクにとって憩いのスポットともなっているClara。アニメや漫画業界がその存在を放っておくわけがなく、提携のオファーも次々と寄せられています。ゆくゆくはさまざまな作品とタイアップしたトレーニング用品の販売や、声優とコラボしたトレーニング応援ボイスアプリの開発なども行っていきたい考えで、中にはSAKU社長がかねてよりファンだったという作品との企画も進行中なのだそう。「オタク起業家としてこれ以上ない喜び」を叶えられたといいます。
 
そんなSAKU社長に、Claraと共にどんな未来を描いていきたいか聞いてみると、「日本中、そして世界中のオタクを幸せにしたい」。その一歩としてClaraの全国展開を目指し、年内にも大阪へ進出する準備が進められているとのこと。さらに、「遠方に住むClaraの会員同士が励まし合えるコミュニケーションアプリの開発を考えている」とも。Claraを入り口にして、オタク同士がつながる世界を創出する夢を語ってくれました。
 
自身がオタクでその気持ちを誰よりも理解できたからこそ、ありそうでなかったオタク女性専門ジムの立ち上げに成功したSAKU社長。最後に、オタクビジネスを手がけていて良かったと思うことを聞いてみました。
 
「オタクとしてこの仕事をしているからこそ出会えた方々がたくさんいます。皆さんにもオタクでつながる縁をぜひ楽しんでもらいたいです」。
 
 
(取材:2022年2月)
 
 
オタク向け女性専門パーソナルトレーニングジム Clara
https://www.claragym.com
Twitter
https://twitter.com/ClaraGym_Group
 
池袋Aスタジオ
■住所
〒171-0022 東京都豊島区南池袋1-14-2 リフュージュ・アイ・ノース301 
■アクセス
各線池袋駅徒歩7分
 
池袋Bスタジオ 
■住所
〒170-0013 東京都豊島区東池袋1-28-1 タクトT・Oビル702 
■アクセス
各線池袋駅徒歩5分
 
池袋Cスタジオ 
■住所
〒171-0022 東京都豊島区東池袋2-9-5 第3野萩ビル5F 
■アクセス
各線池袋駅徒歩7分
 
 
オタクのオタクによるオタクのためのビジネス
vol.1 推しを愛する者の拠り所 オタク向け女性専門パーソナルジム Clara
(2022.3.9)

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