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東京都豊島区目白、西武池袋線椎名町駅より徒歩3分、JR山手線目白駅より徒歩10分の五色湯。創業70年を迎えた今年、9月15日にリニューアルオープンしました。それと同時に、2代目の父親から経営を受け継いだのは3代目の柳澤裕太さん。柳澤さんに、経営を受け継いだ思いや、“心の湯治場銭湯”をコンセプトとしたリニューアル時のこだわり、五色湯の原点の話に至るまで、じっくりお話をうかがいました。
 
 

橋梁の設計コンサルタントから五色湯の3代目へ

 
9月15日にリニューアルオープンした五色湯
9月15日にリニューアルオープンした五色湯
――柳澤さんは、どのような経緯で五色湯の3代目に就任されたのでしょうか?
 
前職は橋梁の設計コンサルタントの仕事をしていました。楽しく仕事をする反面、繁忙期は月に100時間以上の残業が必要な環境だったんです。ストレスフルな社会生活で、私自身いつも仕事終わりに入る銭湯に精神的に助けられていました。そんな中、2代目の父が五色湯の廃業を検討していると知り、「約70年続いてきた日本の伝統文化の一つをなくすのはもったいない」と思い、継ぐことを決めたんです。たまたまですが、父が五色湯を本格的に受け継いだのも今の私と同じ29歳の時だったと聞いています。
 
――今回のリニューアルに至ったきっかけも教えてください。
 
設備の老朽化もあり、今後運営するうえでも経営を継ぐタイミングで改装するのがふさわしいと判断したんです。また、改装前は主に地元のご高齢の方や銭湯ファンが来る “昔ながらの銭湯”だったので、現代の顧客のニーズに合っておらず、集客も難しいと感じていました。昔の銭湯は、体を洗う目的で利用する場所というイメージが強くありましたが、内風呂の普及率が95%以上の現代で、今さらそれを再現しても意味がないのではと考えたんです。リニューアルでは前職のコンサルタント業務経験を活かし、PDCA(Plan・Do・Cheak・Action)を意識して回していけるように、事前段階から着手できるPlan(計画)の部分に注力しました。特に設計は自分の考えや思いを形にしていただけると感じた、数多の銭湯設計を手がけている今井健太郎建築設計事務所にお願いし、今井さんと話し合いながら“心の湯治場銭湯”というコンセプトで、お客様に心からリラックスできる空間を提供することをテーマに進めていきました。
 
暗色で統一された落ち着いた雰囲気のロビー
暗色で統一された落ち着いた雰囲気のロビー
いぐさ香る畳調のござが敷かれた脱衣所
いぐさ香る畳調のござが敷かれた脱衣所
 
――柱などの躯体以外は、全面改装されたそうですね。
 
はい。家具や建具に関しては昭和の日本家屋を意識して本物の木材を使用し、これと調和するように壁紙は全体的に黒色や灰色といった暗色を基調に、照明は電球色に統一しました。広々とした脱衣所には本物のいぐさを使用した畳調のござを敷くなど、昔の温泉宿を意識した内装にしています。浴室には、シルク湯として44℃の高温風呂、ジェットエリアのある40℃の中温風呂、男性95℃・女性85℃のサウナ、16℃の地下水を使った水風呂、そして外気浴スペースも新設しました。また、駅近なのもあって下駄箱の横にスーツケースやテニスラケットなど大きな荷物が入るロッカーを4つ、脱衣所にも小・中・大の3種類のロッカーを設置したのも特徴です。来店時に荷物が多くても安心ですよ。
 
――大きいロッカーがある銭湯は珍しいですね! 内装を一新した一方、リニューアル前から引き継いでいるものも多いですよね。
 
そうですね。下駄箱は長年使用してきたものをリメイクして、札だけ新調しています。館内の昔ながらのアナログ体重計、お釜ドライヤー、按摩機も現役でお使いいただけますし、施設の玄関口にある欄間や、浴室の滝の描かれたタイル絵など五色湯の歴史から受け継いでいるものも多くあります。ちなみにロビーでライトアップされている多数のプラモデルは私と父の趣味で、部屋の雰囲気に馴染むように飾っているんですよ(笑)。
 
 

五色不動が由来の“五色湯”の五色を生かす

 
浴場には改装前から受け継いだ滝のタイル絵も
浴場には改装前から受け継いだ滝のタイル絵も
地下水を利用した水深が深めの水風呂
地下水を利用した水深が深めの水風呂
――浴室の窓ガラスには5つのカラーが使用されていて、とてもきれいですよね。あれは“五色湯”の名前に沿ったデザインなのですか?
 
はい。五色湯の五色は、五色不動や陰陽五行思想が原点となっているんです。そこで、五色湯のホームページの施設紹介でも、中温風呂を赤、高温風呂を黄、水風呂を青、外気浴を緑、サウナを白、と陰陽五行の五色に絡ませてご紹介しています。これはテーマパークに来たかのような没入感を演出したかったのと、五色湯ならではのキャラクター性をつけることを意識しました。スタッフユニフォームの「五色湯」のロゴは五色不動のうち五色湯から最も関わりあいのある目白不動尊(真言宗豊山派の寺院)にあやかって、真言宗の開祖である空海の書体から取ったものを使用しています。温泉マークの入った五芒星のマークも活かして、いずれはTシャツやタオルなどグッズ展開していければと考えています。家系的に祖父が真言宗豊山派の人だと聞いているので、そういった先代からの思いや歴史的な背景を受け継ぐ意味でも、今後もそういった精神的な柱は大切にしていきたいですね。
 
――グッズ展開楽しみです! 実際に営業を再始動された感触はいかがでしたか。
 
多くの方に来ていただけて、素直に驚きました。事前の情報収集などで、新たなターゲットの客層であった若者やファミリー層が周辺地域にたくさんお住まいであることはわかっていたのですが、本当にそうした層のお客様にご来店頂いているのを見ていて地域に新しい活力があることを日々実感しています(笑)。とはいえまだオープンして間もないので、今後はのCheckの評価、Actionの対策・改善の部分もしっかりこなしていくつもりです。
 
広々としたサウナ。利用者が混雑しないよう工夫も
広々としたサウナ。利用者が混雑しないよう工夫も
男・女湯ともに外気浴が可能!
男・女湯ともに外気浴が可能!
 
 

週1回でも「銭湯を利用する習慣をつけること」が一番重要

 
――銭湯経営をするうえで工夫している点や大事にしていることはありますか?
 
現在雇用している女性スタッフと共に笑顔と挨拶を基本に、元気な接客を心がけています。また、サウナ待ちのお客様で浴場が混雑して他の方がストレスを感じることのないよう、定員オーバーになったら、ロビーや外で順番待ちをしていただく形をとっています。加えて、銭湯では “清潔感”が一番重要だと考えているので、日頃のメンテナンスにも力を入れています。浴室の鏡はもちろん脱衣所と浴場を隔てる大きなガラス部分も毎日磨き、一定期間ごとに専門業者にコーティング施工してもらうことで、きれいな状態を保っていますね。
 
――今後の展開についてはどのようにお考えでしょう。
 
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まずは経営の安定化を目指します。いずれ外の駐輪場のスペースを利用したテントサウナなどのイベント開催、五色湯のオリジナルグッズ販売、1年後くらいにはフットマッサージなどのリラクゼーションサロンも2Fに併設できればと考えています。個人としては、コンサル出身ということもあって、今回のリニューアル後の1年間の客足、混雑する時間帯、お客様からのニーズなどのデータを取りまとめた資料をつくりたいです。それが、今後の銭湯経営に携わる若者に役立てれば嬉しいです。また、私はこれからも銭湯文化を残していくことを考えるうえで、お客様が週1回でも「銭湯を利用する習慣をつけること」が一番重要ではないかと思っています。なので、かつては競争社会だった銭湯業界も、今後はお客様を各地域の銭湯が、相互にシェアできるような仕組みづくりがより活発化してくれれば嬉しいですね。
 
――銭湯文化を担っていく一人として、前職の経験も活かして後進に銭湯改装時のノウハウを受け継いでくれるのは、業界的にも大きな力になると思います。まだ再スタートを切ったばかりですが、ますます五色湯のカラーを打ち出して、銭湯業界を盛り上げていってください。ご活躍を楽しみにしています!
 
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3代目の柳澤裕太さん
 
 
(取材:2022年10月)
 
 
五色湯
■住所 
〒171-0031 東京都豊島区目白5-21-4
■アクセス
西武池袋線「椎名町駅」より徒歩3分/JR山手線「目白駅」より徒歩10分
■営業時間:月~火、木〜金曜日16:00~深夜0:00/土曜・日曜日15:00~深夜0:00
休業日:水曜
■URL:https://goshikiyu.jpn.com
 
復活する銭湯
vol.9“心の湯治場銭湯”として顧客を癒す目白の五色湯
 
(2022.10.26)
 

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