大切にしているものを主役に
暮らしに寄り添うプロダクト
fungus

◆ものづくりの街・足立区から発信!
老舗町工場の自社ブランドに注目
かつて、“ものづくり大国”と謳われた日本。製造拠点の海外流出や後継者不足といったさまざまな問題から、一時はこのまま衰退していくかと憂慮されました。しかし近年、各地のものづくりの現場では従来の技術力と時代を見据えた斬新なアイデアの化学変化によるイノベーションが起き、再び盛り上がりを見せているようです。
都内屈指のものづくりの街・足立区では、2000を超える町工場の中でも技術と信頼が高く、未来への大きなビジョンを持つ優れた企業を「足立ブランド」として認定し、区内の産業の発展を後押し。個性豊かな認定企業が名を連ね、互いに切磋琢磨し技術や製品をさらに進化させています。
今回はそんな足立ブランド認定企業の一つ、創業95年を誇る株式会社オーエムをクローズアップ。精密樹脂加工を手がける老舗町工場であるオーエムでは、2024年、新たに自社プロダクトを開発しました。“大切にしているものを主役にする”――そんなコンセプトのもと生まれた、暮らしに寄り添うプロダクトシリーズ「fungus(ファンガス)」。fungus誕生の歩みと、無限の可能性を秘めた令和のものづくりのドラマに迫ります。
◆優れた精密加工技術と提案力で
暮らしに寄り添うプロダクトを開発
1929年創業、万年筆の胴軸製造からスタートしたオーエム。その後、切削技術を活かして、絶縁性のプラスチック加工による電話交換機のジャック製造をはじめ、ATMや医療機器などで使われる樹脂製の内部機械部品や陳列用アクリル製の什器など、現在に至るまで幅広いニーズに応えるものづくりを手がけています。寸法精度10ミクロンという精密加工技術を大きな強みに、新素材などにも柔軟に対応しながら、オーエムは創業以来、時代の変化と共に歩みを続けてきました。
fungusの開発など、新事業を牽引するのはアメリカで機械工学を学んだ同社の4代目、大村賢二専務取締役です。現場で培った確かな技術と、樹脂素材や加工の知識、営業力を駆使し“提案型町工場”のスタイルを確立。この提案力は新たなプロダクトを開発する際のデザイナーとのセッションにおいても、大いに役立っていると言います。
万年筆の胴軸製造という創業当時は“ハイカラ”な製品を手がけてきたこともあり、新しいものづくりへの挑戦にも前向きなオーエム。fungus以前にも、業種交流会で知り合ったデザイナーとコラボし、溝のついたブロックを組み合わせて上から落とした玉の軌道をつくる知育玩具「btrail(ビートレイル)」や電源不要のスマホ用スピーカー「bomboo(バンブー)」といった、職人技を活かした製品を生み出してきました。そして2024年、満を持してスタートした自社ブランドがfungusです。「使う人の暮らしや人生にそっと寄り添うものをつくりたい」という思いから、メガネスタンドを皮切りに、“大切にしているものを主役にできる”魅力的なプロダクトが続々と誕生しました。
◆大切にしているものを主役にする
シンプルなデザインと機能性
fungusの第一弾は、メガネスタンド「fungus cone」、アクセサリートレイ「fungus dimple」、カードスタンド「fungus slit」、ディフューザー「fungus plash」をラインナップ。オーエムが加工を得意とするアクリルと人工大理石を組み合わせた洗練されたデザインは、地元・足立区内のデザイン事務所とタッグを組みつくりあげたもの。それぞれの素材を精密加工し、接着剤を使うことなく互いに圧入させており、まさに高い寸法精度のなせる業と言えるでしょう。
「普段使いから老眼鏡まで、どんなタイプのメガネでも置けるように工夫を重ねた」という突起状の樹脂がユニークなfungus coneは、外したメガネを飾って見られるという、メガネ好きにはたまらない逸品です。また、アロマスティックを立てて使用するfungus plashはディフューザーとしてはもちろん、一輪挿しとしても利用可能なのだとか。いずれもシンプルだからこそどんなインテリアにも溶け込み、添えるアイテムを主役として存分に引き立ててくれます。
キノコや菌類を意味するブランド名のfungus。2025年初夏頃には、新作として第二弾も登場予定とのことで、まるでキノコが派生していくように、ラインナップが増えていくのが楽しみです。品質、信頼、技術を受け継ぎながら、新たな挑戦を続けるオーエム。日本のものづくりの古き良き精神と未来への広がりを感じるfungusの展開から、目が離せません。
〒121-0075 東京都足立区一ツ家3-24-23
https://ohemu.com/