弊社に登録しているスタッフも幼稚園・保育園に働いていた方が多く在籍しておりますが、口を揃えて 「保育士のお給料では生活も厳しく、長時間労働で体力的にも大変だった」 と教えてくれます。しかしながら、労働条件でいえば弊社も賃金は大幅に変わるわけではありません。さらに、ベビーシッターという個々のお客様のニーズに合わせた保育を、オーダーが一定しない状況で提供する仕事ですから、賃金の保障はありません。それでも 「今の仕事はやりがいがある」 と言ってもらえる背景を定義することはできることに気が付きました。それは他の業種で人材確保にご苦労されている方にも参考になることかと思います。
好きな職業に就く
私が以前、面接して目からうろこが落ちた答えは、「子どもと一緒に遊んでいると、日頃のストレスなどがなくなり爽やかな気持ちになります。そばにいるだけで幸せです」 というものでした。育児ノイローゼの問題もささやかれ、保育士でさえも体力的にきついと思う育児・保育の仕事に対して、そのような気持ちで臨めることは天性の子ども好きだと判断しました。その方は保育士の資格がなく、保育士以下の低賃金で保育園に働いていました。他のシッター会社では資格がないので断られたとのことでしたが、私は即採用をし、結婚で休職をするまでの3年間、たくさんのアイデアと努力と愛でお仕事をしている姿に、何度感動したか分かりません。大切なことは仕事に情熱を持てる人を確保すること。これが大前提です。
モチベーションは経営者次第
実は、その保育園に働く保育士の方が私の会社の面接を受けにいらした際にお話ししていたことがありました。それは園長のサラリーマン意識による責任感のなさです。問題が起こると、「あー、また私が対応しなくちゃいけないわ。モンスターの・・・」 と言って嫌々対応にあたる姿を見て、若い保育士たちは保育への責任や情熱を感じない指導者だと感じ、彼女を尊敬しなくなっていました。また、保育士によってはその対応が園長に似てきてしまい、怠慢な雰囲気が園全体に蔓延していく傾向にあるとのことでした。さらに会社も保育をビジネスと考えているため、コストがかかる衛生面や現場の声には耳を傾けず、問題は現場任せという対応をするため、保育士は大手にいても安心ができないというお話でした。それが一人だけでなく、数名の保育士からの意見であったので真実も多くあると思い、それとなく担当者の方にはアドバイスをいたしました。
そこにある問題は、決してその会社や保育園だけのことではないと思います。他業種であっても、経営側がいかにその仕事に愛情と責任を持つ姿勢でいるか。さらにはモンスターペアレンツ (他業種ではクレーマー等) に対して保育士 (他業種では社員) が働きにくい状況であると判断した際には、経営者がいかに身を呈して守ってあげられる体制が整っているかという点に、仕事に取り組む社員のやる気がかかっていると考えます。
この事例でいえば、弊社ではシッターがトラブルになった時は必ず会社の者が一緒に対応し、謝罪をします。意見の食い違いがあるお客様に対しては、納得がいくまでお話をすることによりシッターや保育士の不安を取り除き、お子様を幸せにするという仕事に集中できる環境づくりを心がけています。そしてなにより、経営者である私本人が、時間も労力も惜しむことなく保育に対して大きな情熱を持っているということを示し、実行していることから、シッターたちは不安定な収入の中にもやりがいを見つけて在籍してくれているという意識をいつも感じます。それは彼女たちと私自身が好きな職業に就いているからです。会社で働く社員も全員が、「この仕事、この会社にいたい」 と思っていることを私は信じています。もちろん、小規模な会社だからできることですが、中小企業であれば経営者が示す姿勢が社員の指針でもあることは共通だと思います。人の確保は経営者の意識から始まり、その行動次第です。
女性経営者であるからこそ
執筆者プロフィール
森島真弓 Mayumi Morishima
株式会社One & Only代表取締役
経 歴
大学在学中に派遣会社を起業し、順調に推移させた後、大学を卒業して広告代理店に就職。結婚、出産を経て退社し、フリーのコンサルタントとして活動した期間をはさんで渡米。アメリカで見つけた子供服に魅せられ、2003年に子供服輸入販売業として(株)MRK. INTERNTIONAL(現・One & Only)を起業。2008年からはベビーシッターサービスを新たに開始。経営者としての経験の豊富さに2児の子育てを通じて得た視点と発想を加え、ウーマノミクスの時代に即した事業を展開している。
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