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ノウハウ 株式会社One & Only 代表取締役 森島真弓 Womenomicsの経営論 vol.1 性別による住み分けから性差を尊重する社会へ 株式会社One & Only

ノウハウ
 
 保育士の仕事は肉体労働であり、子どもの安全や健康を常に配慮して気苦労も多いです。最近では延長・休日・夜間保育等のニーズが高まり、長時間の労働になることも珍しくありませんが、一般的に言って、それにしては賃金が低い業界であることは否めません。労働条件や待遇の厳しさを、子どもへの愛情で乗り越えてモチベーションを維持できるかといえば、難しい問題となるでしょう。
 弊社に登録しているスタッフも幼稚園・保育園に働いていた方が多く在籍しておりますが、口を揃えて 「保育士のお給料では生活も厳しく、長時間労働で体力的にも大変だった」 と教えてくれます。しかしながら、労働条件でいえば弊社も賃金は大幅に変わるわけではありません。さらに、ベビーシッターという個々のお客様のニーズに合わせた保育を、オーダーが一定しない状況で提供する仕事ですから、賃金の保障はありません。それでも 「今の仕事はやりがいがある」 と言ってもらえる背景を定義することはできることに気が付きました。それは他の業種で人材確保にご苦労されている方にも参考になることかと思います。
 
 

好きな職業に就く

 
 仕事においてのモチベーション維持の大前提は好きな職業に就くということです。好きな仕事であれば労働条件の良し悪しに関わらず、自分の時間や情熱を傾けることに抵抗がないです。面接の時点で、「生活のために仕事をしなければならない」 と思っているのか、「この仕事を好きだからしたい」 と思っているのかを見極めることが大切です。必ずしも 「生活のため」 と思っている人が良くないというわけではありませんが、その中にも仕事への愛情や想いがある人を採用することが雇用の安定につながります。幸い、保育士やベビーシッターという仕事は 「子ども」 という共通の愛する対象を本当に好きか否かが判断基準になりますので、とても分かりやすい面はあります。これが企業の営業であれば、「営業によってどんな幸せを得られるか、営業職の何が魅力か」 というような平凡な質問であっても、天性として営業が好きな人は面接官が 「なるほど」 と思う答えをするはずです。
 私が以前、面接して目からうろこが落ちた答えは、「子どもと一緒に遊んでいると、日頃のストレスなどがなくなり爽やかな気持ちになります。そばにいるだけで幸せです」 というものでした。育児ノイローゼの問題もささやかれ、保育士でさえも体力的にきついと思う育児・保育の仕事に対して、そのような気持ちで臨めることは天性の子ども好きだと判断しました。その方は保育士の資格がなく、保育士以下の低賃金で保育園に働いていました。他のシッター会社では資格がないので断られたとのことでしたが、私は即採用をし、結婚で休職をするまでの3年間、たくさんのアイデアと努力と愛でお仕事をしている姿に、何度感動したか分かりません。大切なことは仕事に情熱を持てる人を確保すること。これが大前提です。
 
 

モチベーションは経営者次第

 
 大手保育園経営会社の担当者様とお話をした時のことです。「保育士はすぐに辞めてしまうし、モンスターペアレンツの対応で会社も園長もへとへとです。どうやったら良い人材を確保できるのですか?」 と聞かれました。私が 「御社では園に会社の方が入って保護者への対応などはなさっていますか?」 とうかがうと、「保護者への対応は園長にとどめたいのですが、ただ、大手だと思って保護者もすぐに訴訟だの賠償だのという話にされるので、結果的に会社で対応しています」 とのことでした。
 実は、その保育園に働く保育士の方が私の会社の面接を受けにいらした際にお話ししていたことがありました。それは園長のサラリーマン意識による責任感のなさです。問題が起こると、「あー、また私が対応しなくちゃいけないわ。モンスターの・・・」 と言って嫌々対応にあたる姿を見て、若い保育士たちは保育への責任や情熱を感じない指導者だと感じ、彼女を尊敬しなくなっていました。また、保育士によってはその対応が園長に似てきてしまい、怠慢な雰囲気が園全体に蔓延していく傾向にあるとのことでした。さらに会社も保育をビジネスと考えているため、コストがかかる衛生面や現場の声には耳を傾けず、問題は現場任せという対応をするため、保育士は大手にいても安心ができないというお話でした。それが一人だけでなく、数名の保育士からの意見であったので真実も多くあると思い、それとなく担当者の方にはアドバイスをいたしました。
 そこにある問題は、決してその会社や保育園だけのことではないと思います。他業種であっても、経営側がいかにその仕事に愛情と責任を持つ姿勢でいるか。さらにはモンスターペアレンツ (他業種ではクレーマー等) に対して保育士 (他業種では社員) が働きにくい状況であると判断した際には、経営者がいかに身を呈して守ってあげられる体制が整っているかという点に、仕事に取り組む社員のやる気がかかっていると考えます。
 この事例でいえば、弊社ではシッターがトラブルになった時は必ず会社の者が一緒に対応し、謝罪をします。意見の食い違いがあるお客様に対しては、納得がいくまでお話をすることによりシッターや保育士の不安を取り除き、お子様を幸せにするという仕事に集中できる環境づくりを心がけています。そしてなにより、経営者である私本人が、時間も労力も惜しむことなく保育に対して大きな情熱を持っているということを示し、実行していることから、シッターたちは不安定な収入の中にもやりがいを見つけて在籍してくれているという意識をいつも感じます。それは彼女たちと私自身が好きな職業に就いているからです。会社で働く社員も全員が、「この仕事、この会社にいたい」 と思っていることを私は信じています。もちろん、小規模な会社だからできることですが、中小企業であれば経営者が示す姿勢が社員の指針でもあることは共通だと思います。人の確保は経営者の意識から始まり、その行動次第です。
 
 

女性経営者であるからこそ

 
 育児に関わる仕事に対しては女性であることを100パーセント活用できます。私が経営者であっても妻であり、母であることは、マネジメントされる側の保育士・シッターに対して、大きな安心となっていることでしょう。私が心がけていることは、在籍しているスタッフが将来を大切に設計できるよう、一人一人お手伝いをすることです。若い人には幸せな結婚や夢が叶うようなアドバイスや機会を作り、さらに相談も常に受けます。同世代の人には進みたい方向や目標を共有し、共に考えます。女性やママの先輩でもある方々には、今までの経験を生かし、そして気持ち良く働いていただける土壌づくりを心がけています。そのような相互理解によって、お互いへの愛情が生まれ、年月が経つにつれそれは深くなります。愛は力です。ただ単に仕事をするのではなく、愛を感じて打ち込めるライフワークを持つことが、スタッフが自分自身の人生を充実させることにつながります。経営者が深い愛を持ってその環境を作り上げることが、良い人材を確保するコツです。
 
 
 
次回は、社員のモチベーションアップにもつながる 「モンスターペアレンツ (クレーマー) と仲良くする方法」 についてです。
 
 
 
 
 Womenomics(ウーマノミクス)の経営論 ~子育て事業からの提言~
 第2回  優秀な保育士(社員または派遣社員)を確保するコツ!

 執筆者プロフィール 

森島真弓 Mayumi Morishima

株式会社One & Only代表取締役

 経 歴 

大学在学中に派遣会社を起業し、順調に推移させた後、大学を卒業して広告代理店に就職。結婚、出産を経て退社し、フリーのコンサルタントとして活動した期間をはさんで渡米。アメリカで見つけた子供服に魅せられ、2003年に子供服輸入販売業として(株)MRK. INTERNTIONAL(現・One & Only)を起業。2008年からはベビーシッターサービスを新たに開始。経営者としての経験の豊富さに2児の子育てを通じて得た視点と発想を加え、ウーマノミクスの時代に即した事業を展開している。

 オフィシャルホームページ 

http://www.little-star.biz/

 
 
 
 

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