精神科医学の概念「遡行」が
私が長年やってきたやり方と同じだった
私は毎年、年明け最初の講演では「今年どうしますか?」と参加者に必ず聞きます。本当は「10年先に向けて今年どうしますか?」と聞きたいところだけど、大体は今月とか来月が厳しいというので皆さん困っているから、あまり先までは考えさせられない。
で、それを考えてもらうときに私が採る手法が「遡行」だ。他誌の仕事で精神科医療の世界にこの概念があるのを知って、読んでみると私がやってきたことと発想が同じだったから、最近はこの言葉で自分のやり方を説明させてもらっている。
図を見てほしい。壁の前で人が立っている。目の前の壁はつまり〈今〉だ。普通の人たち、要は一般の従業員は、壁の先は見えない。自分の目の高さより高いからだ。でも、先が見える視点の高い人たちもいて、そういう人たちは例えば5年先が見えている。いわゆる幹部クラスの人たちだ――もちろん1年先が見えているだけでも御の字だけどね。
そして、何人も社員を抱えている経営者なら、やはり10年ぐらい先は見据えたい。私自身はといえば、「よくそんなに先の変化が読めますね」と言われることが多いから、10年先ぐらいまでは見えているんだろう。
先が見える見えないは頭の良し悪しではなく
遡行する距離が違うだけだった
誰だって過去にいろんな決断や判断をしてきているわけで、後で悔やんだ判断も中にはあるだろうが、そのときはそれが最善だと決めたからそうしたわけでね。よくよく思い出して整理すれば、「そうか、あのときはこの条件が調わなかったから実行できなかったんだ」とか、「あのときは失敗に終わったけど、ここをもう少しこうやってたら成功してたな」とか、今ならわかることがたくさんあるんだよ。
なぜ今ならわかるかというと、客観視できるからだ。距離があって客観的に見れるから整理ができる。事態が論理的に理解できる。何が足らなかったかがわかる。――そうすると、どういう状況になれば次また同じようなことが起きるのか、前もって予測できるようになるんだ。そうやって自分がやるべき未来予測の精度を上げていくんだ。
世界がどうなるかが気になるなら世界の歴史を遡って本で調べればいいけど、自分とか自社の過去のことは本にないから、自ら遡行するしかないの。私は「自分」「家族」「コンサルタント業」「サトカメ事業」等々のそれぞれで、折に触れて過去を細分化して遡行する習慣が昔から身に付いていた。だから人から「よく昔のことを覚えているね」「よくそんなに先のことが見えるね」と、過去と未来両方のことを褒められる。でもそれって、別に頭がいいとか特別な才能があるからとかじゃないんだ。
私のコンサルティングには決まった教科書はない
相手の過去“その人にとっての”教科書をつくり上げることだ
そして「コンサルタント業」に関しても、私には決まった教科書のようなものはない。支援先の過去の経験を遡行して、“支援先にとっての”教科書をキチンとつくり上げるからだ。――だって、支援先がこれから取り組むことなのだから、支援先がやってきたこと、やれること、やれそうなことの中にしか、実践できる策はないんだ。
逆に言えば、過去にその人がやったことや、結局やらなかったけどやれそうだったことの中から探すぶんには、無謀な策というのは出てこない。その人ができそうなことをちゃんとやれば必ず結果が出る。そのほうが血や肉となり確かな骨格となる、それが育成の基本なわけでね。
さらに言うと、過去にやって失敗したことがまた宝の山だ。なぜって、今なら失敗の原因がわかるから。当時は渦中にいて見えなかったことも今なら俯瞰で分析できる。ツール類も何年か経って出そろっているかもしれない。要は改善点が明確なわけで、過去に失敗した施策こそ一番成果を出しやすいとも言える。
実際の遡行は〈点〉でもいい
きちんとできれば能力差は埋まる
それはたぶん、遡行できていないんだと思う。できているつもりでできていないんだ。そういう場合は一つのやり方として、3月なら3月で縛って、「去年の3月、さらに一昨年の3月、一昨々年の3月」というように、〈点〉で遡行させるといい。私も現実の支援先では大半がそのケースだ。
「どうしよう。今月の売り上げ見込みが立たない」と言う社長に、「去年の3月は何に活路を見出してました? 何を試しました? 試さなかったことは?」と聞く。本来ならば3月、4月、5月、、、と一年を〈線〉で辿って遡行できれば理想だが、それだと負担だろうから点で構わない。去年の3月、そして一昨年の3月と、3月縛りでどこまでも遡ればいい。
多少の個人差はある。けど、それこそ一流企業は別だとしても、私たちのような中小企業に来る人で能力の差って、そんなにないから。せいぜい1.5倍以内だから。それくらいは遡行で埋められるよ。
私が我ながらこの考え方はいいなと思うのは、絶望ベースの発想じゃない、希望ベースの発想だからだ。能力に関係なく、その人の中で遡行がうまくなりさえすれば、少なくとも自分と自分の周りのことについては、先を見越して備えることができるようになる。そうすれば自ずと成果も上向いてくるのだ。
最後に補足だけど、視点が高くて先まで見通せる人にも弱点はあって、逆に足元は見えなくなるという。だって、足元までの距離が遠いからね。だから現場の皆さんは、経営層が打ち出した施策を現場がわかっていないと嘆くのではなく、足元に近い皆さんが足元を埋めていくのが仕事であり、お互いにフォローして行けばいいんだよ。
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vol.88 長年自然にやってきたことが精神科医療の手法と同じだったことについて
(2024.2.28)
著者プロフィール
佐藤 勝人 Katsuhito Sato
サトーカメラ代表取締役副社長/日本販売促進研究所.商業経営コンサルタント/想道美留(上海)有限公司チーフコンサルタント/作新学院大学客員教授/宇都宮メディア.アーツ専門学校特別講師/商業経営者育成「勝人塾」塾長
経 歴
栃木県宇都宮市生まれ。1988年、23歳で家業のカメラ店を地域密着型のカメラ写真専門店に業態転換し社員ゼロから兄弟でスタート。「想い出をキレイに一生残すために」という企業理念のもと、栃木県エリアに絞り込み専門分野に集中特化することで独自の経営スタイルを確立しながら自身4度目となるビジネスモデルの変革に挑戦中。栃木県民のカメラ・レンズ年間消費量を全国平均の3倍以上に押し上げ圧倒的1位を獲得(総務省調べ)。2015年キヤノン中国と業務提携しサトーカメラ宇都宮本店をモデルにしたアジア№1の上海ショールームを開設。中国のカメラ業界のコンサルティングにも携わっている。また商業経営コンサルタントとしても全国15ヶ所で経営者育成塾「勝人塾」を主宰。実務家歴39年目にして商業経営コンサルタント歴22年目と二足の草鞋を履き続ける実践的育成法で唯一無二の指導者となる。年商1000万〜1兆円企業と支援先は広がり、規模・業態・業種・業界を問わず、あらゆる企業から評価を得ている。最新刊に「地域密着店がリアル×ネットで全国繁盛店になる方法」(同文館出版)がある。Youtube公式チャンネル「サトーカメラch」「佐藤勝人」でも情報発信中。
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