2020年今井健太郎氏の設計でリニューアルオープン
ありがとうございます。設計を依頼した今井健太郎さんは、木材を活かした施工をされることが多く、吉野湯の雰囲気にぴったりだと思ってお願いしたんです。古き良き下町銭湯の良さを残しつつ、モダンで“レトロポップ”なデザインをコンセプトに、お客様にゆったりくつろいでいただける空間づくりを大切にした設計にしていただきました。リニューアルに際し、新たに高濃度炭酸泉、電気風呂、天然に色づいた地下水を楽しめる水風呂も導入したんですよ。
実は、浴槽ごとに葉っぱ柄や三角形が組み合わさったものなどデザインが異なり、お湯の温度が熱くなるごとに青色が濃くグラデーションになるような工夫も施されていまして。こちらはリニューアル前からお世話になっているタイル職人さんに手がけていただきました。浴場の壁は、あえて凹凸にして光の反射でキラキラ光るように施工されています。雄大なペンキ絵の富士は、銭湯絵師の中島盛夫さんが描いたものです。
――細部までデザインのこだわりを感じますね。
四季のうつろいが感じられる吉野湯の坪庭
――かわいい! 坪庭を眺めているだけで四季のうつろいを感じられて、一年中訪れたくなりそうです。
夏は提灯を取り付けたり、クリスマスにはツリーを飾ったり、ハロウィンに合わせて飾り付けするなど、季節ごとの装飾にも力を入れています。池では地下水を利用して、金魚も飼育していますよ。
吉野湯は大正12年、初代の吉次郎が創業しました。私はもともとほかでアルバイトに励んでいて、継ぐつもりはなかったんです。ただ、長男ということもあって、最初はお風呂掃除などを手伝いながら、気付いたら後継ぎになっていました(笑)。運営に携わるようになってからは、かれこれ4、5年になります。3代目の父が早くに他界してから、吉野湯は母をはじめ、父の兄弟や親戚、祖母が助け合って運営してきました。それで20年、30年先を見据えて自分も経営に参画することにしたんです。現在は、主に私と母で経営しています。
高齢者の安全に配慮した設備も充実
はい。あまり手を広げすぎず、家族だけで運営できるような規模で営んできました。ただ、現在は自分一人で浴場の掃除なども担っているので、ゆくゆくはアルバイトさんも雇えたらと考えています。
――お一人でとなると、かなりハードワークですよね。
――そこまで徹底して掃除されているとなると、お客さんも気持ちがいいですよ。実際の客層はいかがでしょう。
最近は若い方が増えて、中には江東区や墨田区などから車でお越しくださる方もいます。子連れのファミリー層のお客様も多いですね。改装前からの常連さんもいらっしゃるので、お年寄りのことを考えて休憩できる椅子を多く設置したり、浴場では手すりを備え付けたり、風呂椅子は座面がカーブになっている前滑りしにくい安定感のある座り心地のものを置いています。
――行き届いた配慮があるからこそ、皆さんが安心して訪れることができるのですね。
下町ならではの親しみやすさ、笑顔を大事に
――最後に、今後の展望も教えてください。
コロナが落ち着いたら、より多くの方にお越しいただき、銭湯業界全体がさらに盛り上がっていったら嬉しいです。単にブームで終わるのではなく、今来てくれている若い方も飽きずに来てくれて、世代を超えて末長く愛される銭湯になっていきたいですね。
――吉野湯さんは雰囲気が明るくて癒されますし、ある意味パワースポットのように、人を元気にしてくれるような場所だと思いました。これからも優しさ溢れる岡部さんの爽やかな接客で、お客さんから愛される存在でいてください。心から応援しています!
■住所
〒132-0035 江戸川区平井4-23-2
■アクセス
総武線平井駅下車、徒歩6分
■営業時間
15:00~24:00
定休日:月曜日
vol.4下町風情漂うレトロポップな銭湯・吉野湯
(2022.2.25)