1、おわりのはじめに
「仕事を楽しむ」 がコンセプトのこのWebマガジン。私が取材を受けたのがキッカケで、このビジネスコラムを担当し始めてからそろそろ3年近くにもなる。仕事は相変わらず楽しいし、遊びも事欠かないくらい目白押しで、スケジュール調整が大変。「仕事さえしなければ、ゆっくり遊べるのに!」 ―― いや逆です。「遊びさえしなければ、じっくり仕事ができるのに!」 と嘆いています。とにかく相かわらず超忙しい。特にこの夏は、原稿と講演でクタクタ。そこで下記のコラムを思い出しました (下記テーマのURLをクリックしてご覧ください)。
この時はこんなことを書きました。
「今、仕事が面白い。と同時に余暇も充実している。というより面白い仕事を遮るように、趣味が私の仕事を邪魔する。つまり起きている間中、楽しいのである。こういう時は寝てから見る夢もまた面白い。つまり24時間が楽しいということになる」 ―― そこで皆さんに問いかけたい。「眠りについてから見る夢は、楽しいですか?」 と。
まあ私の場合、いまだにこんな状況が続いていて、当時考えていた、「遊びながら仕事をする」、あるいは「仕事しながら遊ぶ」 という課題は、あれから進歩していませんが、遊びも目一杯、仕事も目一杯と、なると、ストレスを解消する途がないことに気付きました。というよりストレスを感じている時間さえないのです。
いや、答えは簡単。とっくに普通なら定年を過ぎてるので、仕事も、遊びもしなければいいんです。
でも、「お役にたっている」 「頼りにされている」 ということが実感されてしまうと、仕事も断れないのです。そして定年のない職業を選んでしまったから仕方がないのです。そこで、最終回に当たり、本Webマガジンのコンセプトである、「仕事を楽しむためにはどうしたらいいのか」 の問いかけに答える形で、「眠りについてから見る夢を楽しく」 する方法と、「生きる喜びって何だろう」 ということについて、考えてみます。
2、生きがい、やりがいとは
(1) フランクルの 『夜と霧』
人間の生きがいとは何かを追求した 『夜と霧』 という名著があります。著者は、ナチスの強制収容所から奇跡的な生還を果たしたユダヤ人の精神科医ヴィクトール・フランクルで、冷静な視点で収容所での出来事を記録するとともに、過酷な環境の中、囚人たちが何に絶望したか、何に希望を見い出したかを克明に記しています。
人間には 「創造する喜び」 と 「美や真理、愛などを体験する喜び」 があるとフランクルは考えます。そして自由で自己実現が約束されている環境こそが幸せだと・・・。
しかし災害や病気などに見舞われた時、その希望は潰える。収容所はその最悪のケースとはいえ、幸せはまだ近くにあるのではないかとフランクルは考えます。
人間は欲望だけではなく、家族愛や仕事への献身など、様々な使命感を持って生きている。どんな状況でも、今を大事にして自分の本分を尽くし、人の役にたつこと。そこに生きがいを見いだすことが大事なのではないかとも言っています。
「人生はどんな状況でも意味がある」 と彼は説き、生きがいを見つけられずに悩む人たちにメッセージを発し続けました。
どんなに精神的に過酷な状況でも、逆にどんなに忙しくても、そこに生きがいとやりがいや頼られがい、そして創造する喜びを味わう状況を見出すことができるのなら、眠りについてから見る夢もきっと、楽しいはずです。
先に紹介した2010年5月号3ページ目で勝海舟の話もしました。オランダの兵書が欲しくて、海舟は6キロの道を毎晩歩いてその本の持ち主を訪れては朝帰りを続け、彼が寝ている時間帯を利用して半年でその兵書を書き写したという話です。やりがいのある仕事に出会ったときの海舟の気持ちが伝わってくる逸話です。
(2) 少女パレアナ - 陽転発想 -
私の旧友である公認会計士の天野隆氏から10年以上に前に贈呈された 『少女パレアナ』 という本があります。その時 「涙が出てきましたよ・・・。」の一言があったので、気の進まない題名ではありましたが読み始めました。
最初は大したことはないと思いながらも、ぐいぐいと引き込まれ、紙面に落ちた涙のシミを人に見られたらどうしよう、などと考えながら一気に読み終えました。
少女パレアナのやっていた 「何でも喜ぶゲーム」。これさえ実行すれば、「眠りについてから見る夢」 は楽しくなること請け合いです。この本では 「陽転発想」 が大事ということを言っているのですが、そこで私なりの 「苦難を乗り超えるコツ」。
よ 世の中にこれ以上苦しいことがあるのだろうかと思うとき →そんな時 「何でも喜ぶゲーム」
ろ 路頭にさ迷っているときの解決策は何?と思うとき →そんな時 「何でも喜ぶゲーム」
こ 転んでも、ただでは起きたくない!と思うとき →そんな時 「何でも喜ぶゲーム」
ぶ 無難で、平凡すぎる人生って何?と思うとき →そんな時 「何でも喜ぶゲーム」
「何でも喜ぶゲーム」 とは 「喜ぶことを、何の中からでも探して喜ぶ」 というもので、「喜ぶことのほうを考えると、いやなほうは忘れてしまう」 「喜ぶことを探しだすのがむずかしければむずかしいほどおもしろい」 というものです。天野隆氏から贈呈されたこの本の裏表紙には 「ツキを高めるコツ」 も書かれていましたので紹介しましょう。
ツ ついている人とつきあおう。 ついている人の特徴は以下の4つ。
キ 聞き上手は 「うなづき」 「あいづち」 を多く使う。
カ 感謝上手は 「ありがとう」 を多く使う。
エ 笑顔上手は 「よい笑い話」 を多く使う。
タ 他人に親切上手は 「長所紹介」 を多く使う。
いずれにせよ、難なくと苦難を乗り超え、ツキが高まれば、寝床に入って眠った途端に、ウッハウハの楽しい楽しい世界が皆さんを待っているはずです。