3. 中小企業のコーポレート・ガバナンス
税務業務の私のクライアントの大半は中小企業です。超大手優良企業のコーポレートガバナンスに接すれば接するほど、中小企業との落差を感じざるを得ません。
中小企業には、外形的要素としてのガバナンスは、殆ど、皆無というより機能していませんね。100人・200人の中小企業ですら取締役会など機能していない企業が多いと言えます。監査役も全く名前だけです。意思決定は殆どトップダウン、社長一人の意思決定です。機動性・迅速性・行動性の視点からは、非常に素晴らしいです。しかし一歩間違った方向に走りだすと止める人がいなくなります。
また、兄弟での経営、もしくは共同経営といった中小企業になると、もたれ合いの風土、責任の擦り合いの風土、酷くなると役員同士口も聞かなくなりコミュニケーションゼロといった事もありえます。こうなると役員会を開催しても全く機能しなくなり、会議の体をなさなくなり、事が前に進まなくなります。もう5年以上、ひとつの意思決定さえできていない中小企業も見聞きしています。
私は、こういう企業には社外役員を送り込む事を進めています。会社に全く関係ない人が会議に参画することによって、正常な会話が成立するようになります。身内同士の醜い話も遠慮します。人間の心に潜む邪悪な本音は身をひそめ、その第三者の社外役員の手前、ある意味で 「良い子」 ぶった精神状態になり、まともな議論が成り立ちます。身内でしか通じない対応や解決策は言い出しにくくなります。この辺にコーポレートガバナンスの原点があるような気がします。であるが故に、社外監査役、社外取締役が重要になるんですね。
4. 上場会社のコーポレート・ガバナンス
ガバナンス問題に関心を持ち始めたのも、自分自身がある上場会社の社外監査役をしている為なんです。
毎月2回会社に行き、時として執行役員会や関連会社監査役連絡会に参加し、監査法人と内部監査部門との年4回の定例報告会や、上場企業関連会社役員懇親会、新入社員入社式等々、様々な行事に参加しているうちに 「ガバナンスって何?」 とますます意識し始めている次第なんです。
10数名の役員の内、社外役員が5人いますし、我々の発言も常に記録されていますので、会議の場では、それぞれがガバナンスを意識した発言をしているなと感じています。
そして重要な意思決定に関わる問題について賛成を唱えながらも、他の役員とは全く発想の異なる発言に接したりもします。プロパーの取締役では発言しづらい部分にも斬り込んでいきますので、これがガバナンスなのだなと感じたりもしています。
しかし日本の上場企業のコーポレートガバナンスは欧米に比べると、まだまだ遅れています。社外監査役制度は会社法に導入されたものの、社外取締役については経済界の反対もあり未だ実現していません。私が就任している上場会社ではすでに3年前から社外取締役についても導入されていますが、日本企業に対する世界的な批判に対応するべく今年4月から、東京証券取引所に上場している会社については 「独立役員制度」 が設けられました。「屋上屋を重ねるだけで意味無し」 と言っていた、社外監査役をしている私の仲間の公認会計士がいましたが、私はそうは思いませんね。
独立役員制度については、私ども税理士法人優和の公認会計士が交代でが執筆しているメールマガジン 「コラムの泉」 の 「独立役員制度とコーポレートガバナンス」(筆者執筆担当) をご覧下さい。
さてさて、「仕事を楽しむためのWebマガジン」B-plusでの執筆も3回と回を重ねてきました。「仕事を楽しむ」 がコンセプトのこのマガジン。そろそろ私自身の仕事の楽しみ方を次月号でお伝えしましょう。
「余暇(趣味) でたまったストレスは、仕事で解消しよう!!」 がテーマです。
もう一度、一行上を、よく読んでください。「逆じゃないの?」 なんて言わないでくださいね(笑)。
プロフィール
渡辺俊之 Toshiyuki Watanabe
公認会計士・税理士
経 歴
早稲田大学商学部卒業後、監査法人に勤務。昭和50年に独立開業し、渡辺公認会計士事務所を設立。昭和59年に「優和公認会計士共同事務所」を設立発起し、平成6年、理事長に就任(その後、優和会計人グループとして発展し、現在70人が所属)。平成16年には、優和公認会計士共同事務所の仲間と共に「税理士法人優和」(事業所は全国5ヶ所)を設立し、理事長に就任。会計・税務業界の指導者的存在として知られている。東証1部、2部上場会社の社外監査役や地方公共団体の包括外部監査人なども歴任し、幅広く活躍している。
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