入社してわかった実力不足
募集側の期待は裏切られた
このことを痛感する出来事が、最近支援先であった。そこは飲食店で、日常的に小麦粉を使う。パートさんを入れても10人かそこらの中小の飲食店だ。職人さんは毎朝小麦粉を軽量して、練って、打って、寝かせて・・・というところから作業をしている。
その店が正社員を募集したところ、東京にある同業の大手チェーン店で働いていたという30代の若者が応募してきた。家の事情で奥さんと子どもと一緒に引っ越してきたばかりで、ちょうど仕事を探していたのだという。
大手にいた頃の経歴を聞くと、職人として十分なキャリアがあり、在職中の後半は店長も務めて、部下を60人から管理していたという。店のほうはびっくりした。あの超有名な大手で、職人をやりながら店長の経験もある。うちにはもったいないくらいの人材が来てくれた、そう思って採用した。
――ところがだ。詳細は省くが、まったく使えないことがわかった。「使えなかった」と過去完了形にしないのは、彼がまだその店で頑張っているからだ。それも現状で使えない原因というのが、本人よりも彼がいた環境のせいだと思うからだ。
彼の職人としての腕は機械で自動化した作業工程の上に成り立つもので、イチからつくらないといけない中小店では中途半端すぎた。また、人の管理についても、60人引き連れていたといってもせいぜいExcelに勤怠を入力するだけで、問題が起きた箇所にヘルプで入って八面六臂の活躍をするという類の能力は皆無だった。原材料の仕入れに関しても、カレンダーを見て「ここに連休があるからお客さんが増えるだろうから、今日時点で小麦粉はこれくらい減っているから何日に何キロ発注すればいい」と判断する力はなかった。大手での店長時代は入力すれば全部システムが判断してくれていたからだ。
職業人生の前半は中小で働くのがお勧め
80歳定年時代に備えよう
“人生百年時代”に入り、国は今、働く人たちの定年年齢を80歳に延ばそうとしている。今はまだ65歳とか70歳だが、これから社会に出る若い世代がその年代に差しかかる頃には、75歳とか80歳まで働くのがデフォルトの世の中になっているだろう。
そうすると、大手に入ってシステム任せで仕事が回る環境で楽して収入を得ることを覚えるよりも、体力も吸収力もある20代~30代のうちは中小企業で働いて、自分の頭で考えて手を動かして、他人の困りごとにもめんどくさいと思いながら共感して、働く人としての総合力を鍛えたほうが職業人生の後半に有利だ。稼ぐ力、新しいことに挑戦する意欲、自分で勉強して学ぶ習慣、etc.・・・。こういったものの基礎が身に付くからだ。
大手企業で「その他大勢」に入れられると
職業人生の後半が不利になる
でも、その人たちは5年経っても10年経っても、最初うちに来始めた頃のまま、レベルが変わらないんだよ。その間にこっちは、予想もつかないトラブルが起きるわ、必要に迫られて新しい仕事を覚えるわで、どんどんレベルが上がっていった。人を育てることも使うことも覚えた。けど、彼らは、いつまで経っても平社員で、相変わらずルートセールスに毛が生えた仕事しかさせてもらえていなかった。
もちろん、全員がそうだとは言わない。飛び抜けて優秀な人は早々に役職を付けられ、いろんな業務を経験させられて社運を担う人材に育っていく。そういう人は中小で鍛えられた人と遜色ない実力を身に付けるだろう。
でも大半は、「その他大勢」のまま年齢だけがかさむ。しかも大手社員のプライドは捨てられないから、社会的評価と周囲の人たちの実際の評価との差が広がり、職業人生の後半で新しい会社に移っても他人に教えを乞えないわ、自分で勉強もできないわで、じり貧に陥っていく。
どっちがいいか考えたら――いいというのは戦略的に有利という意味も含めてだけど――、答えは決まっていると思うんだよね。
中小企業がシステム化を進めるなら
成長を早めるために使うべし
具体的には、例えば店長がパートさんに助けを求められてヘルプに入ったとする。その時に、パートさんと一緒に手を動かしながら、「あ、ここか。ここがこうなっているから今呼ばれたこの問題が起きやすいんだな」と原因を見つけやすくするためのシステム化であり、自分の机に戻ってから解決策を考える余裕を担保するための仕組み化だ。
そういうシステム化・仕組み化を進めていけば、今は中小より大手上場企業が若者の就職先として人気だけど、いずれ逆転現象が起きるんじゃないだろうか。令和世代はある面で昔の世代より賢いから、長期的に見てそのほうが有利だということになれば、自然にその選択をする人が増えてくると思う。
そうなってくれば私たち中小企業勢は心強いし、そうなる未来を楽しみに、頑張っていきたいよね。
事務局 メイクオーヴァ
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働く人としての基礎を身に付けるうえで有利なのは
著者プロフィール
佐藤 勝人 Katsuhito Sato
サトーカメラ代表取締役副社長/日本販売促進研究所.商業経営コンサルタント/想道美留(上海)有限公司チーフコンサルタント/作新学院大学客員教授/宇都宮メディア.アーツ専門学校特別講師/商業経営者育成「勝人塾」塾長
経 歴
栃木県宇都宮市生まれ。1988年、23歳で家業のカメラ店を地域密着型のカメラ写真専門店に業態転換し社員ゼロから兄弟でスタート。「想い出をキレイに一生残すために」という企業理念のもと、栃木県エリアに絞り込み専門分野に集中特化することで独自の経営スタイルを確立しながら自身4度目となるビジネスモデルの変革に挑戦中。栃木県民のカメラ・レンズ年間消費量を全国平均の3倍以上に押し上げ圧倒的1位を獲得(総務省調べ)。2015年キヤノン中国と業務提携しサトーカメラ宇都宮本店をモデルにしたアジア№1の上海ショールームを開設。中国のカメラ業界のコンサルティングにも携わっている。また商業経営コンサルタントとしても全国15ヶ所で経営者育成塾「勝人塾」を主宰。実務家歴39年目にして商業経営コンサルタント歴22年目と二足の草鞋を履き続ける実践的育成法で唯一無二の指導者となる。年商1000万〜1兆円企業と支援先は広がり、規模・業態・業種・業界を問わず、あらゆる企業から評価を得ている。最新刊に「地域密着店がリアル×ネットで全国繁盛店になる方法」(同文館出版)がある。Youtube公式チャンネル「サトーカメラch」「佐藤勝人」でも情報発信中。
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