子育て事業の女性経営者であり、夫を持つ妻であり、子を持つ母である者としての視点で様々な事柄についてコラムを書かせていただきましたが、今回で最終回となりました。
少子化の中で、企業や行政はたくさんのサービスを用意して、子どもを持つ母親や出産後も働きたい女性に対する環境の整備を進めている最中ではありましたが、震災の影響は大きく、事業所内託児所の設置延期をされる企業や、福利厚生面で見直しをされる企業もありました。大変残念なことではありますが、この苦境を乗り越え、充実した子育て環境を引き続き整えていくためには、まずは会社が基盤を固めることが先決です。震災を含む天災やその他、あらゆる事由でも揺るがない事業づくりをするという難問ですが、真剣に経営者として取り組む必要があると感じています。
経営に対する男女のモチベーション
あくまで私見ですが、女性経営者は男性経営者よりも利益追求への意識が少ないように感じます。いいかえると、女性経営者のモチベーションは 「やりがい」 だけでも維持できるのかもしれません。それに比べると、男性経営者は社員や家族に対して 「利益」 を出さなければならない責任を負っている可能性が高いです。「やりがい」 と 「利益」 のどちらをモチベーションにするか。そこに性差があるのであれば、どちらが良い悪いということではなく、考えてみるべきだと思います。
以前、私が講師をしていた起業家講座の生徒の方にアンケートをとりましたところ、女性で起業家を目指す方は 「好きなことで起業する」 という意見が多く、男性は 「儲かることで起業する」 という意見が多い傾向がありました。いくら男女が平等であるという法律が施行されようとも、環境、体力等において男女は同じわけがなく、伴う責任や社会的な評価も同じではありません。ですから、男女の違いを認めて共存していくことこそがビジネス成功の秘訣ではないかと思います。
経営者の方々と名刺交換をさせていただくと、裏に関連会社を数社並べていらっしゃる方にお会いしますが、実態が伴われているとは言えない場合があります。かたや、女性で自分が手がけていない事業を名刺に記載されている方は少ないです。つまり、男性には社会的なしがらみも多くのしかかっていることから、興味のないことに投資をすることになったり、実業が伴わないことに関与しなくてはいけない義理も多くあると思われます。
でも、私見として言わせていただくなら、そのような事業は必ずといっていいほど成功しません。なぜならば気持ちがないからです。仕事に対してのモチベーションアップに繋がるキーワードは、実は男女共通で 「好きなことを仕事にする」 なのです。これは 「やりがいか、利益か」 ということに優先します。自分自身が得意として、何時間でも仕事をしていて苦にならない職業に出会えたならば、震災やトラブルに巻き込まれても影響を最小限に抑えるために必死で対策を構えますし、結果として強い会社づくりをすることができるはずです。
自分のコピーを作る
中小企業の経営において一番難しい点は人事です。人を雇用すること、ときにはリストラすること、本当に難しい時代です。
でも、どんな時も大切なことは 「信頼」 です。信頼できる会社、信頼してもらえる自分自身があって初めて経営者としてのスタートラインに立てると考えています。これも男女に違いはありません。ただ、女性経営者が男性に、男性経営者が女性に信頼されることは非常に難しい壁があります。そんな時、私は年齢・性別を感じさせない自分づくりを心がけています。性別からくる甘えや驕りをなくし、年齢に対する既成概念を取り払います。つまり年上・年下に関わらず、敬意を持って相手に接するのです。そうすることにより、信頼関係が生まれ、自分も相手から同じように接してもらえるようになります。
社長自身が 「自分さえいればビジネスはうまくいく」 という考えでいるならば、その会社の成長は頭打ちです。自分の存在意義とビジネスの運営を切り離すことができて初めて基盤の固い会社になると思われます。人を信頼することは難しいですが、お互いを信頼関係におき、自分の考えを共有してもらうことにより、ビジネスを委ねても安心なシステムを構築するべきです。つまり自分のコピーを作ることが一番です。もちろん、そっくりコピーはできるはずもありませんし、全くのコピーでは成長できません。ですから、男性・女性・年齢・環境に違いがあれども、仕事に対する感覚や情熱をうつして、いわば 「精神のコピー」 に呼応してもらえる社員を大切にし、成長を心から応援するべきです。
それにより、真に信頼できる社内環境ができあがります。呼応する要素には 「社長も/社員も大好きな仕事をしている」 という共通項がとても重要です。そして、信頼だけは泥棒にも、詐欺士にも盗まれません。
子育て支援に取り組む経営を
そうして会社の基盤ができあがったら、ぜひ子育て支援にも会社で取り組んでいただけますよう、経営者の皆様に心からお願いいたします。どんなに経済が発展しても子どもの少子化が進んでしまっては国の将来が先細りです。地域や行政が取り組みを続けることはもちろんですが、中小企業か大企業かを問わず、すべての会社が子育てを応援する体制を持つならば、多くの命が誕生し、それこそ基盤の強い国になると信じています。設備投資も経費節減も大切ですが、一番建設的であり、かつ難しい生命の誕生にも、企業人として力を注ぐ経営者となっていただけますよう、お願いいたします。私も子育て事業に誠心誠意、尽力し、大切な子どもたちの将来を見守り、応援できる経営者になれるよう、成長してまいります。
経営者として未熟者でありながら、意見や考えを書かせていただき、そしてお読みいただき、誠にありがとうございました。このコラムを通して、少しでも皆様が女性経営者や子育て事業にご理解を深めていただけたならば幸いです。
Womenomics(ウーマノミクス)の経営論 ~子育て事業からの提言~
第7回 経営者として・・・揺るがない経営
執筆者プロフィール
森島真弓 Mayumi Morishima
株式会社One & Only代表取締役
経 歴
大学在学中に派遣会社を起業し、順調に推移させた後、大学を卒業して広告代理店に就職。結婚、出産を経て退社し、フリーのコンサルタントとして活動した期間をはさんで渡米。アメリカで見つけた子供服に魅せられ、2003年に子供服輸入販売業として(株)MRK. INTERNTIONAL(現・One & Only)を起業。2008年からはベビーシッターサービスを新たに開始。経営者としての経験の豊富さに2児の子育てを通じて得た視点と発想を加え、ウーマノミクスの時代に即した事業を展開している。
オフィシャルホームページ
http://www.little-star.biz/