第3回 日常の9割はラテラルシンキングがいらない
こんにちは。木村尚義です。あなたのビジネスをさらに楽しくするために、ロジカルシンキングと対になるラテラルシンキングを紹介するこの連載、前の2回でなんとなくラテラルシンキングの発想がわかってきましたでしょうか。今回は第3回。さっそく、恒例になりつつある謎かけから始めましょう。
問題その3【マカロニの重量はどうやって測る?】
いま、500g入りのマカロニ袋があります。このうち3人前の300gを使います。1kgまで測れるクッキング用ハカリがあるのですが、あいにく容器が小さくて100g以上載せるとこぼれてしまいます。あなたなら、どうやって300gを測りますか?
超簡単なのでヒントはありません。
ええ? ラテラルシンキングのコラムなのにラテラルシンキングはいらないの?
タイトルが間違っているんじゃないかと思ったあなた。ご心配おかけいたしました。でも、間違えていません。今回は「逆」がテーマだからです。
日常の9割いらないとしても、逆に言えばたったの1割こそが重要。現在はいろいろな思考法がありますが、他の思考法に言及すると話がややこしくなります。そのため、ここではシンプルに日常はロジカルシンキング9割、ラテラルシンキング1割としてお話しします。この比率くらいがちょうどよいバランスです。まあ、ラテラルシンキングは自動車のバックギアのようなものだと考えてください。普通に道路を走っている限りバックがなくても困りません。ところが、駐車場に入った途端にバックギアがないと不便なことがわかります。
実を言えば読者の皆さん、ロジカルシンキングは自然と身につけています。意識しているかいないかだけ。極論を言ってしまえば通勤通学はロジカルシンキング実践の場です。
まず、始業に遅れないように家を出る時間を逆算しますよね。そして、電車の何両目ならエスカレータの近くだとか乗り換えが楽だとか、「楽に短時間で安く到着する」工夫をします。電車に限らず自動車でも、この時間ならこの道路が空いているとか、どこを曲がれば信号が少ないといった工夫をしますよね。こうして「楽に・短時間で・安く」という各ファクターについて分析、考慮、検証というPDCAサイクルが回されて、次第に最適化されてゆきます。これってロジカルシンキングそのものだと思いませんか。
ところが、予想もつかない原因で交通網が麻痺してしまったら、今までの最適化がまったく無効になってしまいます。これを解決するには、いかに素早くラテラルシンキングにギアチェンジできるかどうかです。体験談を話しましょう。
私は企業向け研修が主な仕事ですので、全国に出張します。ある冬の日、午前中に東京で仕事を終え、午後一番に翌日の研修に向けて飛行機で札幌へ飛ぶことになっていました。ところが羽田空港に到着したとき、朝からの雪の影響で札幌便が運休になっているのです。しかたなく研修を中止か延期にしてもらうか・・・と担当者に連絡する前に、ふと、電光掲示板を見たら、関西空港便は運行している。
そこで、まだ関西空港便があるのなら逆方向でも飛行機を乗り継ぎしたら? というアイデアを思いつきました。結局のところ、東京-大阪-札幌という乗り継ぎで現地に到着でき、この手を打ったことで研修キャンセルの損害より安く済みました。バックギアではありませんが、いったん逆方向に進むことで道が開けたのです。
・・・この例だけですと、どうも自慢話っぽいので、逆の発想で世の中の常識の9割を変えた話をしましょう。
1920年代、マイケル・J・カレンは、ニューヨークで昔ながらの対面方式で食品や雑貨を売る「クローガー」という店で働いていました。コーナーごとに店員が張り付き注文を受けるとその場で会計をする方式です。しかし、あるときカレンは、逆の方式、つまり客が自由に商品を選んで最後にレジで会計するというセルフサービスのアイデアを思いつきます。コーナーごとの店員をレジと品出しのみに絞り人件費を削減。大量仕入れ、低価格、現金払い、配達なし、お持ち帰りという現在では当たり前のコンセプトです。
ところが経営陣はカレンのアイデアには見向きもしません。なにしろ世の中の常識の9割は対面販売ですから、ムリもありません。自分のアイデアに絶対の自信があったカレンは店を辞めて1930年8月4日、全米初のスーパーマーケット「キング・カレン」を開店します。現在に至っても45店舗を展開するカレンのアイデアがどれくらいの影響力があったかは、現在世界中にスーパーマーケット方式があふれているところを見れば説明は不要でしょう。
【マカロニの重量はどうやって測る?】答え
500gの袋をそのままハカリに乗せて、200gになるまでマカロニを鍋に投入する。
普通なら、100gを3回測って300gですよね。とはいえ、毎回100g測るとなると、ちょっと神経を使います。だったら測る対象を逆にすれば良いのです。
ラテラルシンキングは自動車のバックと同じです。日常では逆にすることは滅多にありません。けれど、“逆にすると上手くいくかも”ということを覚えておけば損はありません。
次回は、ラテラルシンキングの暗黒面です。
問題その3【マカロニの重量はどうやって測る?】
超簡単なのでヒントはありません。
日常の9割はラテラルシンキングがいらない?
ええ? ラテラルシンキングのコラムなのにラテラルシンキングはいらないの?
タイトルが間違っているんじゃないかと思ったあなた。ご心配おかけいたしました。でも、間違えていません。今回は「逆」がテーマだからです。
日常の9割いらないとしても、逆に言えばたったの1割こそが重要。現在はいろいろな思考法がありますが、他の思考法に言及すると話がややこしくなります。そのため、ここではシンプルに日常はロジカルシンキング9割、ラテラルシンキング1割としてお話しします。この比率くらいがちょうどよいバランスです。まあ、ラテラルシンキングは自動車のバックギアのようなものだと考えてください。普通に道路を走っている限りバックがなくても困りません。ところが、駐車場に入った途端にバックギアがないと不便なことがわかります。
東京から札幌へ・・・え? 飛行機が運休? どうする?
実を言えば読者の皆さん、ロジカルシンキングは自然と身につけています。意識しているかいないかだけ。極論を言ってしまえば通勤通学はロジカルシンキング実践の場です。
まず、始業に遅れないように家を出る時間を逆算しますよね。そして、電車の何両目ならエスカレータの近くだとか乗り換えが楽だとか、「楽に短時間で安く到着する」工夫をします。電車に限らず自動車でも、この時間ならこの道路が空いているとか、どこを曲がれば信号が少ないといった工夫をしますよね。こうして「楽に・短時間で・安く」という各ファクターについて分析、考慮、検証というPDCAサイクルが回されて、次第に最適化されてゆきます。これってロジカルシンキングそのものだと思いませんか。
ところが、予想もつかない原因で交通網が麻痺してしまったら、今までの最適化がまったく無効になってしまいます。これを解決するには、いかに素早くラテラルシンキングにギアチェンジできるかどうかです。体験談を話しましょう。
私は企業向け研修が主な仕事ですので、全国に出張します。ある冬の日、午前中に東京で仕事を終え、午後一番に翌日の研修に向けて飛行機で札幌へ飛ぶことになっていました。ところが羽田空港に到着したとき、朝からの雪の影響で札幌便が運休になっているのです。しかたなく研修を中止か延期にしてもらうか・・・と担当者に連絡する前に、ふと、電光掲示板を見たら、関西空港便は運行している。
そこで、まだ関西空港便があるのなら逆方向でも飛行機を乗り継ぎしたら? というアイデアを思いつきました。結局のところ、東京-大阪-札幌という乗り継ぎで現地に到着でき、この手を打ったことで研修キャンセルの損害より安く済みました。バックギアではありませんが、いったん逆方向に進むことで道が開けたのです。
・・・この例だけですと、どうも自慢話っぽいので、逆の発想で世の中の常識の9割を変えた話をしましょう。
常識の9割を変えた小売店
1920年代、マイケル・J・カレンは、ニューヨークで昔ながらの対面方式で食品や雑貨を売る「クローガー」という店で働いていました。コーナーごとに店員が張り付き注文を受けるとその場で会計をする方式です。しかし、あるときカレンは、逆の方式、つまり客が自由に商品を選んで最後にレジで会計するというセルフサービスのアイデアを思いつきます。コーナーごとの店員をレジと品出しのみに絞り人件費を削減。大量仕入れ、低価格、現金払い、配達なし、お持ち帰りという現在では当たり前のコンセプトです。
ところが経営陣はカレンのアイデアには見向きもしません。なにしろ世の中の常識の9割は対面販売ですから、ムリもありません。自分のアイデアに絶対の自信があったカレンは店を辞めて1930年8月4日、全米初のスーパーマーケット「キング・カレン」を開店します。現在に至っても45店舗を展開するカレンのアイデアがどれくらいの影響力があったかは、現在世界中にスーパーマーケット方式があふれているところを見れば説明は不要でしょう。
【マカロニの重量はどうやって測る?】答え
500gの袋をそのままハカリに乗せて、200gになるまでマカロニを鍋に投入する。
普通なら、100gを3回測って300gですよね。とはいえ、毎回100g測るとなると、ちょっと神経を使います。だったら測る対象を逆にすれば良いのです。
ラテラルシンキングは自動車のバックと同じです。日常では逆にすることは滅多にありません。けれど、“逆にすると上手くいくかも”ということを覚えておけば損はありません。
次回は、ラテラルシンキングの暗黒面です。
木村尚義の「実践! ラテラルシンキング塾」
第3回 日常の9割はラテラルシンキングがいらない
第3回 日常の9割はラテラルシンキングがいらない
執筆者プロフィール
木村尚義(Kimura Naoyoshi)
創客営業研究所代表・企業研修コンサルタント
経 歴
日本一ラテラルシンキング(水平思考)関連書を執筆している著者。1962年生まれ。流通経済大学卒業後、ソフトハウスを経てOA機器販社に入社。不採算店舗の再建を任され、逆転の発想を駆使して売り上げを5倍に改善する。その後、IT教育会社に転職、研修講師としてのスキルを磨く。自身が30年以上研究している、既成概念にとらわれずにアイデアを発想する思考法を企業に提供し好評を得ている。また、銀行、商社、通信会社、保険会社、自治体などに「発想法研修」を提供している。遊ぶだけで頭がよくなる強制発想ゲーム「フラッシュ@ブレイン」の考案者。著書に、『ずるい考え方 ゼロから始めるラテラルシンキング入門』(あさ出版)、『ひらめく人の思考術 物語で身につくラテラル・シンキング』(早川書房)など多数。
オフィシャルホームページ
http://www.soeiken.net/(2016.7.27)
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