値上げをめぐり試される経営センス
ポイントは「値ごろ感」
この状況で私が今、支援先で主に教えているのは、もちろん事業規模によるけれども、やっぱり「値上げ」だ。それも「上手な値上げ」。一例が価格表示の方式を変えるタイミングで値上げするやり方だ。
具体的に説明しよう。消費税関連の法的な動きとして、商品の価格表示に関し税込み価格を表記することが昨年の春から義務付けられた。それまでは【本体価格+消費税】というような書き方でOKだったのが、【消費税込価格(消費税含む)】とか、【消費税込価格(内消費税〇〇円)】とか書かないといけなくなった。要は、結局いくら払うことになるかを値札に書かないといけないということだ。
そのときに、頭を使わない経営者はどうするかというと、例えば580円で売っていたアイテムを【638円(税込)】と表示して並べる。いっぽう、日頃から経営の勉強をしていて利益への意識が高い経営者がどうするかというと、【680円税込】とか【680円税込(618円税別)】とか表示している。
両者はどこが違うか。ポイントは「総額表記時の値ごろ感」だ。昔はあれほど「値ごろ感で売れる・売れない」とお客さんの動きを察知していた経営者が、税込表記になってからは、前者のように、その感覚を忘れているんじゃないだろうか。
お客さんは絶対的な安さではなく相対的なお得感を求めているのに、例えば【15800円+税】ではなく【17380円税込】と表記していたりする。「ショッピングは楽しい!」とお客さんに感じていただけるよう値ごろ感を演出するのも小売業の役目なのに、17380円? 私に言わせれば「何それ?」だよ。
例えば【9800円+税】だった価格表記は総額表示だと【10780円税込】で桁からして変わる。この観点から言うと、10780円と価格表記されてもお客さんの感情には響かない。でも、10800円なら、お客さんは「これでイチパーか〜。へぇ~」と思いながら商品を見る。これが「価格表記から感情に訴える」ということ、つまり値ごろ感の演出なんだ。
私がこう教えると、「これは便乗値上げではないか? 社会に奉仕するという小売業の使命に反する!」とか頓珍漢なことを言って反論してくる人がいる。
いやいやいや、お客さん側の気持ちに立ったときにどっちが買い物が楽しいか考えなさいって(笑)。第一、使命を全うするのであれば、値ごろ感で攻めたほうが消費税を多く国に渡せるじゃないか。こっちのほうがよっぽど社会貢献だよ。
ちなみに、税抜き価格に関しては、国は「総額表示方式」といって、必ずしも表示義務はないとしている。【10800円(税込)】でいいということだ。でも私は、【10800円税込・9818円税別】と書くようお勧めする。字は小さくていいから両方出したほうがいい。お客さんが知りたい情報はきちんと出すことも、お店が信頼されるために大切なことだからね。
ほとんどの企業は「残業禁止」。そこで!
これから副業をどう扱うか
副業歴22年の私からアドバイスするとしたら、本業が肉体労働の人は知識労働の副業を、本業が知識労働の人は肉体労働の副業をやるといいと思う。ガラッと気分を変えられて新鮮だからだ。私の場合も、普段は知識労働だから、肉体労働的な業務をやるときは体を鍛えるつもりで楽しんでやっている。
もう一つの考え方としては、できれば本業の知識やスキルを活かせる副業がいいと思う。例えばだけど、主にテレアポで営業をかけている会社の営業部隊なら、口コミでしか新規顧客をとったことがない企業に向けて「最強の営業部隊が教えるテレアポ営業術」みたいなタイトルでセミナー講師の副業をすれば、結構いい線を行けるんじゃないか。同業他社に呼ばれてセミナー講師で行くのはノウハウの流出につながるからよくないけど、異業種で登壇するぶんには問題ないと思うよ。
顧問契約ならぬ部分雇用としての
週末コンサルタント
思うんだけど、これから日本はコンサルタントの副業のニーズが増えるんじゃないかな。その道のプロを正社員で雇おうとしたら年収ベースで1000万円〜、社会保険も含めれば会社が用意するお金は2000万円レベルになるが、例えば月一回10万〜20万円で毎月来てもらえば、年間でたった120万〜240万円というパート社員の給料レベルで、プロを雇うことができる。厳密には雇用ではなく一種の顧問契約だが、プロの能力を自社の事業活動に組み込める点では、部分的に雇用しているのと同じだ。
また、副業で来る側も、いろいろな業界に出入りすることで刺激になるし、月の第何週に行くかを変えながら4社と契約すれば年240万円×4社で960万円。仮に一回10万円でも年間480万円になる。本業の収入があるうえにプラス480万円から上積みできたら、最高じゃないか。
人間は動物じゃないから、ハツカネズミみたいに同じ檻で同じ車輪を回し続けているだけだとどうしても思考の範囲が狭くなる。私だって、ずっとカメラ店だけをやっていたら今頃頭がおかしくなるか、遊びに走って身を持ち崩していたと思う。副業はうまくやれば本人にも本業の会社にもメリットが多いものだ。この認識がもっと一般的になるといいね。
事務局 日本販売促進研究所
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vol.66 値上げの方法と副業の扱い。どちらも時代の変化の波に乗れ!
著者プロフィール
佐藤 勝人 Katsuhito Sato
サトーカメラ代表取締役副社長/日本販売促進研究所.商業経営コンサルタント/想道美留(上海)有限公司チーフコンサルタント/作新学院大学客員教授/宇都宮メディア.アーツ専門学校特別講師/商業経営者育成「勝人塾」塾長
経 歴
栃木県宇都宮市生まれ。1988年、23歳で家業のカメラ店を地域密着型のカメラ写真専門店に業態転換し社員ゼロから兄弟でスタート。「想い出をキレイに一生残すために」という企業理念のもと、栃木県エリアに絞り込み専門分野に集中特化することで独自の経営スタイルを確立しながら自身4度目となるビジネスモデルの変革に挑戦中。栃木県民のカメラ・レンズ年間消費量を全国平均の3倍以上に押し上げ圧倒的1位を獲得(総務省調べ)。2015年キヤノン中国と業務提携しサトーカメラ宇都宮本店をモデルにしたアジア№1の上海ショールームを開設。中国のカメラ業界のコンサルティングにも携わっている。また商業経営コンサルタントとしても全国15ヶ所で経営者育成塾「勝人塾」を主宰。実務家歴39年目にして商業経営コンサルタント歴22年目と二足の草鞋を履き続ける実践的育成法で唯一無二の指導者となる。年商1000万〜1兆円企業と支援先は広がり、規模・業態・業種・業界を問わず、あらゆる企業から評価を得ている。最新刊に「地域密着店がリアル×ネットで全国繁盛店になる方法」(同文館出版)がある。Youtube公式チャンネル「サトーカメラch」「佐藤勝人」でも情報発信中。
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