吹き抜けのオープンスペースで
新しい“勝人節”を掴んだ
会場は「ゆめぷらっと小城」。市民センターっていうのかな、ホームページでは市民交流プラザとなっているけど、市民が申込制で借りられる会議室やホールがたくさんあって、多目的に使える施設。そこの1階フロア、吹き抜けになっているオープンスペースの特設ステージだった。「マジ? ここでやるの?」と思ったけど、大会実行委員いわく、実験の意味もあるから、とのことだった。公共施設内の公共空間だから特定の団体が使うのは今まで許可がおりなかったけど、今後は開かれたフロアにしていきたいから大会の講演会場に選んだんだ、ということだった。
真っ先に思ったのは、「ここは公共の場、いつものスタイルは使えないなぁ! どうする俺!」だった。というのも、これまでの私のセミナーや講演は、任意の参加者が集まるクローズドの会場だった。だから「某大手の〇〇チェーンは現場がわかってない!」とか「資本家になり下がった経営者の話なんか聞いてどうする!」と、多少毒を吐いても迷惑をかけないレベルの大手を仮想敵にして、それへの反抗姿勢や独自視点の一刀両断がウケていることを知っている。またそれが私の色でありキャラだと思っていたので、今まで意識的にそうしてきた――そのスタイルが今回の公共の場ではNGだと思ったわけだ。
だって、子どもをあやしているママさんとか参考書を読んでいる学生とかも普通にいるんだよ!? そこで「マッ○のハンバーガーなんか食えるか!」なんて言ったらビックリさせてしまうよ(笑)。だからそういう毒は抜いた講演をしたんだが、そうすると私の話はおもしろいのかどうか、わからなかったんだよね。
でも、後で大会実行委員会の人から「過去最高におもしろかった、大成功です」と太鼓判を押されてホッとした。「会の参加者だけでなく、その場にいる主婦や学生までも耳をそば立てて聞いていました」って。
それを聞いて、「あ、そうか」と思った。今までずっと、大手のやり方を皮肉ったり逆手にとったりしながら「本来はこうあるべきじゃないか。だろ?」というふうに話を持っていっていたけど、もっと普通に、素直に、大手を悪者にせず話してもちゃんと聞いてもらえるんだな、って。むしろそのほうが万人受けするというか、スーッと耳に入りやすいのかな、って。
私の場合はそうせざるを得ない状況に見舞われて気付いたわけだけど、同様の気付きは他の人にも経験があると思う。いわば「仲間うちでウケていたやり方以外のやり方に目覚める瞬間」だ。特に今回は11日後に「第87回 商業界ゼミナール」の基調講演を控えていて、そこでも私のことを知らないその他大勢の人たちに向けて話す予定だったから、なおさらこの気付きは意味があった。
実際にゼミナールでは“普通に・素直に”を心がけた話し方を意識的にやってみた。そして満場の拍手をいただけた。講師の登壇時のテーマ音楽にQueenの曲を流したのは長い歴史を誇る商業界ゼミナールで初の試みだったそうだが、私自身にとってもあの日の講演は、意識的に新しいスタイルで話してみて成功したという意味で記念になるものだった。その前に佐賀県商工会議所小城大会できっかけをくれた大会実行委員長の音成信介氏にも、この場を借りてお礼を言っておきたいと思う。
成長を続けるために
世代的な役割も問い直す
私は今 54歳だ。私の世代にとって大物創業社長といえば、亡くなられた方ではダイエーの中内功さんとかマクドナルドの藤田田さんが思い浮かぶし、存命中の方ではセブン‐イレブンの鈴木敏文氏やファーストリテイリングの柳井正氏が筆頭に上がる。お二人とも70歳以上の世代だ。その次の60歳代は、高度成長の恩恵でバブルの雰囲気もあるけど仕事となれば徹夜も当たり前のハードワーク世代。それから私のような男女雇用均等法導入世代の50歳代を挟んで、次は一気に時代がくだって団塊ジュニアとか“ゆとり・さとり”とか言われるスローな世代の経営者になる。
そう整理すると、自分の世代の役割に関しても変わってきた気がするんだよね。もっと若かった頃は確かに、先行世代のやり方を批判したり、わざとケチをつけたり、要は諸先輩方の存在を否定的に乗り越えるところに経営者としての成長もあった。でもこの先は、それだけでは前に進めない。諸先輩方のやったことを当時の社会背景も含めて理解して、「ここは良くないけどここは良い」とか、「最後は失敗したけど当時これを決断したのはすごい」とか、「これを今の感覚でアレンジしたら何ができる?」というような生産的な見方で解釈して、それを次の世代につなぐ“間(あいだ)”の役割が自分たちに求められているんじゃないか――そう感じるようになってきた。
これは他の世代に向けてだけじゃなく、やっぱり経営者はどこまでいっても「世のため、人のため」がテーマなんだよ。商業界ゼミナールでも「テクノロジーを生かしての働き方改革はもちろん推進していくが、世のため人のため、お客さんのために、ハードワークするよ! 俺たちは!」という話をした。今の世の中でそう言い切る経営者はいないから刺激的だったようで、会場からは「そうだった! 自分たちの使命を忘れていた」という反響をたくさんいただいて嬉しかった。若い世代の経営者からも「目を覚まされました」という声が返ってきた。
自己肯定の「いいね!」ばかりの世の中だからこそ、時にはそれまでのスタイルを自己否定することも必要だ。そうやって新しいスタイルに出合って、常に成長していきたいと思います。
■4月16日第71回とちぎ勝人塾IN宇都宮
会場/サトーカメラ宇都宮本店2階ホール
事務局/日本販売促進研究所 後援/栃木県商業界同友会
https://www.facebook.com/events/2140576362923234/
■4月24日第16回とやま勝人塾IN黒部
会場/黒部市民会館
事務局/フォトサロンドン
https://www.facebook.com/events/403735587053772/
■最終受付4月18日まで
第14回佐藤勝人と行くアメリカ商業視察セミナー
「ITと商業の融合先進国に学ぶ」ニューヨーク&ワシントンDC
開催/6月18日〜6月24日 5泊7日研修
主催/日本販売促進研究所 旅行手配/JSPLトラベル
https://www.facebook.com/events/815935338756822/
第9回「ニコニコチャンネル ニッポン勝人塾」(4/15 15:00 – 16:00)の告知
vol.29 「仮想敵への反抗」からの脱却
著者プロフィール
佐藤 勝人 Katsuhito Sato
サトーカメラ代表取締役副社長/日本販売促進研究所.商業経営コンサルタント/想道美留(上海)有限公司チーフコンサルタント/作新学院大学客員教授/宇都宮メディア.アーツ専門学校特別講師/商業経営者育成「勝人塾」塾長
経 歴
栃木県宇都宮市生まれ。1988年、23歳で家業のカメラ店を地域密着型のカメラ写真専門店に業態転換し社員ゼロから兄弟でスタート。「想い出をキレイに一生残すために」という企業理念のもと、栃木県エリアに絞り込み専門分野に集中特化することで独自の経営スタイルを確立しながら自身4度目となるビジネスモデルの変革に挑戦中。栃木県民のカメラ・レンズ年間消費量を全国平均の3倍以上に押し上げ圧倒的1位を獲得(総務省調べ)。2015年キヤノン中国と業務提携しサトーカメラ宇都宮本店をモデルにしたアジア№1の上海ショールームを開設。中国のカメラ業界のコンサルティングにも携わっている。また商業経営コンサルタントとしても全国15ヶ所で経営者育成塾「勝人塾」を主宰。実務家歴39年目にして商業経営コンサルタント歴22年目と二足の草鞋を履き続ける実践的育成法で唯一無二の指導者となる。年商1000万〜1兆円企業と支援先は広がり、規模・業態・業種・業界を問わず、あらゆる企業から評価を得ている。最新刊に「地域密着店がリアル×ネットで全国繁盛店になる方法」(同文館出版)がある。Youtube公式チャンネル「サトーカメラch」「佐藤勝人」でも情報発信中。
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