B+ 仕事を楽しむためのWebマガジン

トピックスTOPICS

アプリ婚が職場婚と並んで同率首位に

 
glay-s1top.jpg
KiRi / Pixta
アプリ婚が増えています。明治安田生命が11月22日の「いい夫婦の日」にちなんで毎年行うアンケートによると、マッチングアプリで出会って結婚した既婚者は2009年まで0%だったのが、2015~19年に6.6%出現。2020年には17.9%に急増しました。翌年は微減したものの2022年は再び盛り返し、既婚者の22.6%がアプリ婚に。最新の2023年10月調査では、特に20代はアプリ婚が職場婚と並んで同率首位(25%)になりました*1
 
また、リクルートブライダル総研が定期的に行う「婚活実態調査」の最新版(昨年9月発表)によれば、2022年の婚姻者のうち何らかの婚活サービスで結婚した人は15.4%。これだけなら「まだそんなに・・・」と思いますが、内訳は結婚相談所が2.8%、婚活パーティ・イベントも1.7%にとどまり、残り10.8%――15.4%の七割――はネット系婚活サービス。つまりアプリです*2
 
また、同調査では、2022年に婚活サービスの利用により恋人ができた人の割合は49.5%。利用者の半分が少なくとも恋人を見つけるまでには至っています。この人たちの一定数が翌年か翌々年の婚姻者にカウントされることを思えば、婚活アプリは結婚の前段階としての恋活でも大きな役割を果たしています。
 
 

政府のテコ入れと業界の取組みで市場が拡大

 
背景には業界の取り組みがあるようです。2006年、政府の「新しい少子化対策」で「結婚相談業等に関する認証制度の創設」が提言されました。業界はこれを受け第三者機関として「結婚相手紹介サービス業認証機構(IMS)」を設立。本人確認や料金体系、セキュリティ面、性的目的の利用がない、等の項目を審査し、健全な婚活サービス事業者を認証する制度を2009年から始めています。
 
また、「バチェラーデート」を展開する株式会社バチェラーデートは昨年、日本ハラスメント協会と共同で「マッチングアプリハラスメント」という新たな概念を提唱。「職場環境などにおいて、他者の恋活(婚活)アプリの利用にかかわる情報を周囲に言いふらしたり、プロフィールを許可なく第三者に広めるなど、利用者または利用検討者に対し、苦痛や不快な思いをさせる行為」を当該ハラスメントと定義し、マッチングアプリ事業者22社(25サービス)の賛同を得ています。
 
これらの継続的・企業横断的努力によりマッチングアプリが「当たり前の出会いの手段」として浸透した結果*3、恋活・婚活マッチングサービス市場は2016年の156億円から2022年には5倍の790億円まで急拡大。以降も緩やかに伸長し、2028年に860億円に達すると予測されています*4
 
 

一人平均3~3.5個のアプリを利用

 
今年5月現在、いわゆる出会い系ではないとIMSに認証されている婚活アプリは下記7つです。
 
With(ウィズ・外資)
ゼクシィ縁結び(株式会社リクルート)
Dine(ダイン・株式会社Mrk&Co)
tapple(タップル・株式会社サイバーエージェント)
東カレデート(東京カレンダー株式会社)
Pairs(ペアーズ・外資)
Omiai(オミアイ・外資)
 
東カレデートが認証されるなら同じく入会審査制ハイスぺ婚活のバチェラーデートも認証されそうなものですが、そうなっていません。また、識者が成婚率No.1と評価*5するyoubride(ユーブライド)がないのは、新しい枠組みに入らずとも利用者に信頼されてやっていけるという、母体が結婚相談所の老舗らしい矜持でしょうか(母体は株式会社サンマリエ)。
 
さらに言えば、東京都が始めた「TOKYOふたりSTORY AIマッチングシステム」も、安心・安全面でゴリゴリの最強なはずですが、民業圧迫を避けるためもあってか、IMSとは別に動いています。利用者としては、取組みの真摯さは業界共通と認めつつ、各アプリの特徴や思惑、サービス内容を吟味して利用するのが良さそうです。
 
例えばバチェラーデートの調べでは、バチェラーユーザーは王道系と特化型系(推し活仲間同士など)を併用するなどして平均3~3.5個のアプリを使っています。有料サービスをいくつも同時利用するのは経済的にも負担ですし、界隈でうまいこと回されているみたいでなんだか癪ですが、メインの有料アプリに無料アプリを上手に組み合わせて出会いの幅を広げるぶんには、ユーザー主体の賢い使い方でしょう。
 
 

マッチングアプリ疲れと恋愛体力

 
いっぽうで、さまざまなマッチングアプリが群雄割拠する――立ち上げ投資が比較的少額で済み、撤退もしやすい――中で、利用者にいわゆる「マッチングアプリ疲れ」が生じていると指摘されています。
 
よほどモテる人か、マッチングもデートのセッティングもアプリのAIにお任せするのでない限り、メッセージのやりとりを含め、会うまでの工数と労力はそれなりにかかります(もちろん会ってからもです)。真摯に相手と向き合っていればなおさらです。それを同時に複数となれば、ほとんど「恋愛体力」という古典的(?)な概念が頭をもたげそうになります。
 
いつの時代も、恋愛という営みを成就させられるのは一部の恋愛エリートたちだけで、ほとんどの一般人は効率あるいは的中率という壁の前に恋愛体力を削られ、沈んでいくしかないのでしょうか?
 
 

「自分らしさ」「自分軸」の中味

 
ある面で、それはもう、そうだと思います。ただ、最後にその人に「決める」フェーズでは、「好みの相手」ではなくむしろ「好みの自分」への理解を深めておくことで、随分楽になるのではないか。
 
先とは別の識者はマッチングアプリ疲れの理由について、「出会いの選択肢が多く、自分に会う人を選べない」からだと解説します。「出会う」までのハードルが低くなったぶん、自分にどんなお相手が合っているか「決める」ことが難しくなったのだと*6
 
であれば、論理的に考えて、「決める」を楽にするには、出会いの選択肢を少なくするか、出会うまでのハードルを上げるしかありません。でも、あまりマッチングをしぼり過ぎると「全然出会えない」とユーザーから不興を買うでしょうし、後者は恋愛体力の世界に逆戻りです。そう考えると、アプリ側に解決を期待するのは無理な気がします。
 
もしかしたら、選択肢を少なくすることに関しては、今後はAIアルゴリズムの洗練で、出会いの質(的中率)を保ちつつ実現できるかもしれませんが、それだって最後は交際してみないとわかりません。
 
だから、交際を始めたら、相手との関係を「好みの自分」に照らしてみる。つまり、「この人と一緒にいるとついついこんな自分になってしまう」というその自分が、「こうありたいな・・・となんとなく心の底で常に思っている自分」に沿うかどうか意識してみる。
 
婚活をめぐる言説で「自分らしく」とか「自分軸で」とか言われるのはこのことだと思います。それは「ありのままの自分でいられる」「素の自分を受け入れてくれる」といった独りよがりで静的な基準、もう少し動的な、相手との関係性の揺らぎまで含めた、「自己のホメオスタシス」と呼べるような基準です。
 
願わくば、たくさんの利用者さんが良縁に恵まれますように。
 
 
*1 「令和4年度 商取引・サービス環境の適正化に係る事業(未婚化・晩婚化・晩産化等の少子化対策関連サービス産業基盤調査事業)調査報告書」p41
  明治安田生命「いい夫婦の日」アンケート調査(2023年11月16日)
*2 「婚活実態調査2023(リクルートブライダル総研調べ)」
*3 Z世代のマッチングアプリ意識調査!53%が「当たり前の出会いの手段」と回答
*4 株式会社タップル/株式会社デジタルインファクトの調査より
*5 マッチングアプリおすすめ比較ランキング人気21選!恋活・恋人作り・婚活をプロが解説【2024年4月版】
*6 2024年の恋愛・婚活トレンド予測は「自分軸とAI活用」がカギ!行政のマッチングアプリ利用促進も活発に
 
 
(ライター 横須賀次郎)
(2024.5.8)
 
 

関連記事

最新トピックス記事

カテゴリ

バックナンバー

コラムニスト一覧

最新記事

話題の記事