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電動キックボード? う~ん・・・

 
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’90 Bantam / PIXTA
電動キックボードが増えています。7月から「道路交通法の一部を改正する法律(令和4年法律第32号)」が施行され、特定小型原動機付自転車(特定原付)という新しい車両区分が運用され始めたことが背景にあります。
 
この電動キックボード、賛否両論がありますが、否のほうは反対する根拠が実際的で説得力もあるのに比べ、賛のほうは否の声にまともに向き合っていないように見えます。
 
これ、たぶん、反対派の言う根拠が図星だから、向き合うわけにいかないからです。まともに向き合うとキックボードの形態は否定されるべきだと認めざるを得なくなる。でももうこの形態を先に進めてきて電動キックボードがこの車両区分のデファクトスタンダードみたいになっちゃった。だから、引くに引けないんでしょう。
 
特定原付は本来、地域人口の減少と高齢化で公共交通が維持困難になる地方部で交通弱者を生まないようにするために国交省と経産省が進めている、「移動サービスの持続可能性確保」の範疇のものです。ここには特定原付の他、シェア自転車も超小型モビリティ(パーソナルモビリティ)もUberのようなライドシェアも、貨客混載も自動運転もコネクテッド・カーも、全部入っています。
 
都市部では移動サービスの多様化による付加価値創出の文脈で先に普及してしまい、だからこそ“遊び”の要素が濃いキックボードの形態が支持されるわけですが、これもキックボードなんて言い換えずにあっさりキックスケーターと言えば、「2000年代に流行ったあのはた迷惑なあれか!」という感じで、位置づけも評価もスッキリすると思うんですがいかがでしょうか。
 
 

何も補助金で進めなくても

 
電動キックボード否定派が反対する理由は「危険すぎる」の一言に尽きます。本人だけでなく他の交通主体にとってもです。
 
一人で乗って一人でコケて一人で怪我するぶんには勝手にやってもらったらいいですが、道路にはクルマも歩行者もバイクも自転車もいろいろいます。そんな天下の公道で、車輪径が小さすぎる&重心が高いせいでどうやっても操縦安定性に欠ける電動キックスケーターにウェイウェイ走り回られて、目の前でコケられて避けられなくて轢いてしまった(轢かされた)ダンプカーのドライバーは、道交法上の責任は問われなくても、生涯どんな夢見になるか。
 
自転車に比べ設置スペースが小さく済むからとか、1台あたりの調達運用コストが安いからとかの営利上の理由を展開側が黙っているうちに、利用者は利用者で、お上が先に「回遊性向上」みたいな官製の理由を示してくれちゃったせいで、操安性が低い乗り物を乗りこなすおもしろさとそれを公道でやるスリル――暴走族(死語)の皆さんが嗜むあれ――の楽しさがボケてしまっています。
 
“お上が先に示す”とは具体的には「ユーザーへのリーチに補助金で下駄を履かせる」ということです。本来なら、利用者が先述のおもしろさと楽しさを危険意識との天秤にかけて、またそれを他の交通主体が受け入れたり受け入れなかったりしながら、一般化するかどうかが自然なペースで決まっていくものなのに、いやはやなんとも。
 
 

他の形態が続々

 
そんなわけで、車輪が小径で・前後二輪で・立ち乗りで・左右の重心配分が極めて制御しにくい(足は前後に並べて乗る)な形態の特定原付は不安要素いっぱいですが、特定原付は電動キックスケーターだけではありません。法定車両条件を整理すると、
 
[大きさ]
長さ:190cm以下
幅:60cm以下
[構造]
・原動機として、定格出力0.60kW以下の電動機を用いる
・時速20kmを超える速度を出せないこと
・走行中に最高速度の設定を変更できないこと
・AT(オートマ)であること
・道路運送車両の保安基準第66条の17に規定する最高速度表示灯を備えていること
 
であり、結構自由度が高いです。そのことを受けて、あるいは、先行した電動キックスケーター形態の問題点を見越していたか、7月の法令施行の前後に登場した新しい特定原付の車両は三輪もしくは四輪、あるいは座り乗りの物が多いように思います。
 
車輪が増えると転がり抵抗が増して軽快さが消えますが、安全性に鑑みれば三輪ないし四輪が妥当です。その点、ホンダ発ベンチャーのストリーモ社が発売する「ストリーモ」は前1後2の三輪車でありながら、ハンドルピラーを含むフロント周りがシャーシー軸上で回転できるようにすることで運動性能と操安性を両立。左右に足を並べて乗れるのでリーンコントロールも容易です。立ち乗りで重心が高くなる問題に対しても、乗車位置が後方で自然に後方重心になるので、つんのめりリスクが低減します。シェアビジネスからスタートした他社とは一味違う、モビリティ専業企業らしい設計時からの作り込みが感じられます。
 
また、重心を下げ、動力性能を損なわないよう車輪は2個にとどめ、かつ一定以上の車輪径の大きさを確保する方向性のほうは、結局は自転車に回帰します。電動アシスト自転車と特定原付に区分される電動自転車との違いは、漕がない想定なのでチェーンがないことと、ペダルが据え置きのステップになっていることと、スピードを時速20km以上出せないことです。電動モビリティシェアサービスのOpenStreet社にペダルレス電動自転車を供給するglafit社は、来年を目途に同車両の一般販売も始めるそう。
 
また、目下のところ日本では発売予定がないようですが、本家ホンダは来月、ファースト/ラストワンマイルに使う想定の新型電動モビリティ「Motocompacto(モトコンパクト)」を北米市場に投下します。ホンダファンなら、往年の名車「シティ」とセットで開発された原付バイクのモトコンポを思い出すでしょう。あれの現代版電動版リメイクです。
 
公式サイト(Motocompacto | Honda)を見ると、まぁ斬新なこと。しかも安い(995ドル!)。もし、ちょっといじって特定原付の仕様にして日本に投入したら、かなりイイ線を行くのではないでしょうか。
 
せっかくの新しい車両区分です。筋の悪い介入と誤ったフラッグシップ(電動キックボード/キックスケーター)で芽をつぶさず、見直すべきとわかったなら今からでも見直して、より良い姿で普及してほしいものです。
 
(ライター 横須賀次郎)
(2023.10.4)
 
 

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