女優たちがつくり上げた女たちの映画
映画プロデューサー 奥山和由が語る、『女たち』
6月1日から公開されている映画、『女たち』。篠原ゆき子氏が演じる主人公の美咲は、40代を目前にした独身。就職氷河期世代で希望する仕事に就くことができず、母の介護をしながら学童保育所で働いている。恋愛も仕事もうまくいっていない彼女は、親友の香織が命を絶ってしまったことをきっかけに、崩壊へと向かっていく――。製作を手がけたのは日本を代表する映画プロデューサー、奥山和由氏。コロナ禍の影響もあり、「世の中には漠然とした不幸感が漂っている」と語る奥山氏に、『女たち』の製作に至った経緯や、作品に込めた思いをうかがった。
女性への恩返し
あと、僕は松竹での会社員時代から、男性がメインの映画をつくり続けていて、チームオクヤマを立ち上げてから25周年の今、公私ともにお世話になってきた女性に対する恩返しをしたいという思いもありました。
そうした中で、篠原と仕事をしたことがある内田伸輝監督が、「篠原でやってもらいたい映画の企画がいくつかある」と言うので聞いてみたら、あまりおもしろい内容がない(笑)。ただその中に、養蜂場を舞台にした話があったんです。養蜂場という舞台はすごくいいなと思って、イメージがすぐに湧いてきたので、まず『女たち』という題名を決めました。それで篠原と内田監督と3人で話をつくり始めたんです。
美咲の親友役を誰にしようかと考えていた頃、『お勢、断行』っていう倉科カナの舞台がコロナ禍で中止になったと聞きました。それで、スケジュールも空くだろうから、親友役をやってくれないかなと思ったんです。ただ、その段階での脚本では彼女の役である香織はすぐに亡くなってしまうことになっていて、出番がかなり少ないから断られるかなと思った。ところが、「ぜひやりたい」と返事が来たんですね。
しかも彼女は、「髪切っていいですか?」と聞いてきた。40cm以上ですよ。理由を聞いたら、「香織は、自分が女であることすら疎ましいと思っている女性のように見えるから」と言うんです。「脚本には書いていないけれど、そういう子じゃないかと思う」と。でも彼女はそのとき、連続ドラマにも出ていたから、切れるわけないと思っていた。ところが、本当に切ってきたんですよね。そういう意気込みを見せてくれた。
美咲の母・美津子役となる高畑淳子さんにも会っていました。その高畑さんが、「どうせ半身不随の役なら言語障害も加えて!」って言ってくるくらい、妙にノリがいい。そうやって、企画中止が危惧される中で高畑、倉科というプロフェッショナルが参加してくれて、『女たち』と題した企画の、具体的な内容がちゃんと自分の中で見えてきた。
しかも彼女は、「髪切っていいですか?」と聞いてきた。40cm以上ですよ。理由を聞いたら、「香織は、自分が女であることすら疎ましいと思っている女性のように見えるから」と言うんです。「脚本には書いていないけれど、そういう子じゃないかと思う」と。でも彼女はそのとき、連続ドラマにも出ていたから、切れるわけないと思っていた。ところが、本当に切ってきたんですよね。そういう意気込みを見せてくれた。
美咲の母・美津子役となる高畑淳子さんにも会っていました。その高畑さんが、「どうせ半身不随の役なら言語障害も加えて!」って言ってくるくらい、妙にノリがいい。そうやって、企画中止が危惧される中で高畑、倉科というプロフェッショナルが参加してくれて、『女たち』と題した企画の、具体的な内容がちゃんと自分の中で見えてきた。