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スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW

俳優・監督・アーティスト
異才の履歴から学ぶ可能性の泉

 
 
俳優として登場した数々の作品の中でも、特に印象に残っているのが 『Shall we ダンス?』 (周防正行監督 / 1996年) と 『のだめカンタービレ 最終楽章』 (武内英樹監督 / 前編2009年、後編2010年) だという。どんな理由で印象に残っているのだろうか?
 
 

「でも、やるしかねえもんな」

 
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 単純な理由でね、「すごく大変だった」 (笑)。 『Shall we ダンス?』 は社交ダンス教室が舞台ですから、踊りを覚えなきゃいけない。他の共演者はクランクインの2ヶ月前からダンスの稽古に入るんですが、ぼくはその時期に 『EAST MEETS WEST』 (岡本喜八監督 / 1995年)という映画の撮影で、ニューメキシコに2ヶ月行かなくてはいけませんでした。その撮影の合間に、周防監督から踊りの教材ビデオが届くんですが、戻って来たらもう全員踊りが上手くなってるんですよ。「これからついていくのきついなァ、無理だよ」 とかボヤきながら、なんとか必死に1週間で全部踊りを覚えて(笑)。 だけど監督から 「OK」 が出ると、その大変さは吹き飛んじゃうんです。
 『のだめカンタービレ 最終楽章』 のときも似たようなことがありました。世界的に有名なオーケストラ指揮者の役をやったんです。指揮ってただタクトを振っているだけだと思っていたので、それが決してそんなんじゃないことを知って、 「うわー!」 ってなりました。常に指揮は前拍、全ての楽器の音を知っていなければならないんです。しかも、巨匠の役ですからね(笑)。 映画では、最終的に本場・プラハのスメタナホールという世界的なホールで撮影することになったんですが、目の前にいるのは本物のオーケストラの皆さんですよ! その人たちを相手に、ショパンの協奏曲を第一楽章から第五楽章まで、抜粋ではありましたが14分間指揮しなきゃいけない。「できるわけないだろ!」 って、ほんと思っていました(笑)。 
 「どうすんだよ、まいったな。でもやるしかねえもんな」 という結論にしかならないんですけど、ふと思いかえすと、そういう大変なことって、気が付くと愛せるものに変わっているんですよね。どんなに愛せないものであっても、終わってしまうと愛せるものになっている。だから、何の問題もないんですけどね。
 
 
 
 人との出会い、そして経験。今まで培ってきたものを、“愛せる宝物” として心の中にしまっておくことができるからこそ、「竹中直人」 はまっすぐに歩んでこられたのかもしれない。「もし、芸能をやっていなかったら、何の仕事をしていると思う?」 と尋ねると、竹中氏は 「想像できない」 と照れながら答えた。それだけ、好きなことをやり続けてきた人生に誇りを持っているのではないだろうか。そんな竹中氏に、また一つ新しい宝物が加わるという。
 
 

オレンジ気分は続いていく

 
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 『竹中直人のオレンジ気分』 というタイトルの新しいアルバムを出すんです。いろんなアーティストの楽曲をカバーさせてもらってるんですが、(忌野) 清志郎さんの曲だけは絶対にやりたかった。だからRCサクセションの曲は3曲入っています。このアルバムは、スタジオでは録りたくなくて、逗子のカフェで録音したんですよ。5月に企画して、9月に録音。しかも全て一発本番で、録り直しもなければ、聴き直しもしていない。潔いでしょう(笑)。
 このアルバムもそうですが、こうやっていろんなものを作っていけたら幸せですね。それでも、きっとぼく自身は変わらないまま歩いていくんだろうと思います。いろんな意味で大変な時代になってしまったので、映画やドラマにしても、音楽にしても、作り続けるのは大変です。でも、再び新たな人と出会って、その出会いの中から再び何かを生み出していくのは今後も変わらないと思います。
 ぼくの中では、面白いものに対する渇望というか、欲求というか、それが今も昔も変わらずあります。自分が心の底から面白いと感じ続けたい気持ちが。だから、いつまでたっても満腹にはならないんだろうなァ・・・・・・ きっとそうだな。

 

(インタビュー・文 新田哲嗣 / 写真 Nori)

 
 

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