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スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW

 

天才セッターが指導者として語る
最強チームをセットする極意

 
 
現役時代に様々な経験をかさね、今は自らも指導者としてのキャリアを歩んでいる中田氏。全日本女子ユースチームのコーチに就任する前は、イタリアのプロリーグ、セリエA・ヴィチェンツァやノヴァーラのアシスタントコーチとして海外での見識を広めた。イタリア・セリエAは女子バレーの世界では世界最高峰のレベルで知られるリーグ。そこで中田氏は何を感じ取ったのだろうか。
 
 

「プロである」とはどういうことか?
イタリアと日本の違い

 
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日本人女子として初めて海外のプロ・チームの
コーチも務めた。(写真は2009年、セリエA・
アシステル・ノヴァーラにて)
 正直思うのは、イタリアのチームは確かに強いのですが、イタリアのバレーがすべていいとは思わないし、それが日本にあてはまるとも思わないんです。日本には日本のオリジナルがあるべきですからね。ただ、日本が何で勝負するべきなのかはつかめたつもりです。
 現役の時もそうだったんですが、私は必ず練習をビデオで見て、プレーしている自分を客観視してきたんです。プレーしているときに思っていることと、プレーを外から見ているときに、自分の意図やイメージと若干の誤差があるんですよ。それと同じように、日本というチームに必要な要素が、海外を経験して見えてきたのは事実ですね。
 特に、私が今関わっているユース世代については、日本とイタリアの環境の違いも実感しました。
 クラブチームスポーツと学校体育スポーツには環境面で大きな違いがあります。その違いは、選手のモチベーションの形成方法に影響してきます。先ほども「怒られるから練習する」という選手の例に触れましたが、「活躍したらご褒美をあげましょう」 というモチベーションの高め方と、「とにかくバレーが好きでバレーをとことん極めたいから」 というモチベーションの高め方は、まるで異なるものなんですね。前者は外発的動機、後者は内発的動機です。
 イタリアのプロ選手は、プロスポーツに対する考え方が、学校体育や企業スポーツを背景にした日本人選手の考え方とはまるで違いました。プロであれば、チームに貢献できるプレーができるかどうかだけが判断基準で、できなければクビになるだけ。だから、どんなときでも最高のパフォーマンスをしようとするわけです。とにかく個人の価値を高めることに懸命になる。価値が高まらなければバレーボールを続けられなくなるプロスポーツの環境と、活躍してもしなくても一定の給料がもらえる企業スポーツの環境とは根本的に違います。セリエAでは、ジュニアチームの世代もトップチームの選手のプレーを見て 「いつか自分もこういう舞台でプレーするんだ」 と考えて自分を磨き続けますから、たくましいですよね。
 
 
個人の価値を高めていくこと――。チームも個人の集合体と考えれば、チームを強化する土台となるのはやはり個人だ。中田氏は「本当に強いチームにするうえで最終的に欠かせない要素が二つある」と言う。「核になる選手がいる」 ことと 「監督の軸がブレない」 ことだ。
 
 

土壇場で挑める選手

 
 イタリアのナショナルチームを見ていて思うんですが、あの勝負強さは 「すごい」 の一言です。イタリアも日本と同じくデータバレーなんです。同じデータソフトを使って、細かくデータを分析して計算づくで攻めていく。でも、そこまで徹底したデータバレーをするイタリアが、24対24のセットカウントになったとき、データどおりに動いているかと言えば、答えはNO。もう選手個々が自分の勘だけで勝負しているんですね。自分が決める、自分が止める、自分が拾う・・・・・・チームというより選手個々が 「自分がやる!」 という意識で動いているからこそ、土壇場で強いんです。ですから最終的には、一対一で戦える選手が何人コートに立っているかが勝敗の分かれ目になる。そういう選手が核にいるチームは強いですよ、間違いなく。
 核になる選手には条件があります。性格からいうと 「挑む選手」 ですね。どんどんチャレンジしていく選手と言ってもいいでしょう。加えて、核になる選手は監督と選手との中間管理職みたいな立場で、監督が描いているイメージをコート上で体現しなくてはいけません。ですので、プレーにおいても、人間的にも、他の選手に対する説得力がなくては務まりません。こういう選手がチームを引っ張っていくんです。たとえばオリンピックのすごく大事な局面で、最後まであきらめずに勝負をかけられるかどうか。他の選手はその挑み方によって奮い立ちもしますし、仮に劣勢でも、軸がぶれずに挑み続ければ、試合をひっくり返す要因になることだってありますから。
 
 

軸がブレない指導

 
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今後は全日本ユースのコーチとしての活躍が期待される中田氏。その
眼差しが未来にとらえるのは、世界最強の全日本女子チームだ。
 監督の軸がブレないことは非常に大事なことです。思い描く目標やチームの絵がはっきり見えている監督が日々の指導をしていければ、選手もついていきやすい。チームや選手が戦うための環境を整えることが監督の役割ですから、人間的な説得力がなければ、チームをまとめることは難しいでしょう。
 スポーツでも何でも、チームを引っ張っていく立場の人に求められる要素は人間力だと思います。周囲のことをよく理解して、常に周囲を活かそうとする気持ちを持っていることでしょうね。バレーボールは、めまぐるしく動くゲーム展開の中でいろんな情報をキャッチし、チームメイトの動きを予測し、どういう場面で使ったらいいかを瞬時に判断し、ゲームを組み立て、点数をとっていくスポーツです。常に頭をフル回転させて人を観察しつづけないと勝利へは導けない。鈍感では務まりませんよね(笑)。
 それは会社などでも同じことかもしれません。自分の部下を見て、ライバル会社の動向を見て、顧客のことを見て。それでいて軸をブレさせず、明確な全体目標を提示し、一対一の局面でも強いメンバーの集まりに鍛えていく。私もまだ指導者のキャリアを始めて間がないので、現時点で思うことしか言えません。ただ、チームを強くするということは、このような結果の積み重ねだと、今は考えています。
 
 
 
 

(インタビュー・文 新田哲嗣 / 写真 スズキ シンノスケ)
 

 
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