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「徒然泣き!人生」
一職業会計人の"軒昂奉仕"vol.29

 

10、財務書類の作成には総務省方式改訂モデルではダメだ

 
 ここからは極めて専門的な話になります。読者には公認会計士・税理士といった職業会計人や政治家、地方公共団体のお役人や学者の方もおりますので、その方々へのメッセージです。本稿の 「素人の方にも会計に興味を持っていただきたい!」 というコンセプトからは外れますが、ご勘弁を・・・。
 
 さて私は、平成21年1月に東京都港区の平成20年度包括外部監査報告書 「清掃事業に関する財務管理及び事務の執行等について」 P186の中の第4 「包括外部監査の結果に関する報告に添えて提出する意見」「4、公有財産・備品等の管理と地方公会計改革への対応」の中でも、今まで述べてきたことを 「意見」 として提出したことがあります。つまり総務省方式改訂モデルはダメで、東京都方式もしくは基準モデルを採用すべきだというのがその要旨でした。
 「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律(平成18年法律第47号)」 や 「地方公共団体における行政改革の更なる推進のための指針(平成18年8月31日総務事務次官通知)」 等を根拠として、地方公共団体においても、発生主義の活用や複式簿記の考え方の導入が少しずつ進み、貸借対照表、行政コスト計算書、資金収支計算書、純資産変動計算書の4表もやっと揃ってきました。
 地方公共団体の財務書類の整備状況を、平成23年3月31日時点で見てみましょう。
 
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 都道府県・市区町村合計1763のうち、作成中及び未作成の団体は合計で640ですから64%は財務4表が出揃ったことになります。しかし複式簿記を前提とする基準方式を採用しているのは都道府県3に市区町村100ですから、全体に占める割合は5.8%にしか過ぎません。
 基準モデルとは何ぞや、総務省方式改訂モデルとは何ぞや、といった説明はリンク先の説明 (PDF) に譲りますが、私が言いたいのは、公会計の財務書類の作成にも複式簿記を前提にした東京都方式、大阪方式、基準モデルでないと、せっかく作成した財務諸表も、うわべだけの自己満足の貸借対照表で、何ら利用価値のないものになってしまいますよということです。なぜ利用価値がないのかについては、いずれ触れてみたいと思います。
 
 さて先月と今月は、話が固くなりました。私自身の長年にわたってアピールしたかった点で、とりあえずの区切りをつけたく、多くの方には関心のなさそうな問題をあえて取り上げさせていただきました。
 
 
 来月は、先日事務所近くのお店のカウンターで飲んでいた時の話をしましょう。95歳の親が大往生したときは涙も出なかったけれど、愛犬が死んだら1週間以上も精神がおかしくなった話から、ペット飼育にかかる莫大なお金と、その課税問題です。
 
 
 

 プロフィール 

渡辺俊之 Toshiyuki Watanabe

公認会計士・税理士

 経 歴 

早稲田大学商学部卒業後、監査法人に勤務。昭和50年に独立開業し、渡辺公認会計士事務所を設立。昭和59年に「優和公認会計士共同事務所」を設立発起し、平成6年、理事長に就任(その後、優和会計人グループとして発展し、現在70人が所属)。平成16年には、優和公認会計士共同事務所の仲間と共に「税理士法人優和」(事業所は全国5ヶ所)を設立し、理事長に就任。会計・税務業界の指導者的存在として知られている。東証1部、2部上場会社の社外監査役や地方公共団体の包括外部監査人なども歴任し、幅広く活躍している。主な編著書に、加除式三分冊『一般・公益 社団・財団法人の実務 ―法務・会計・税務―』(新日本法規出版)がある。

 オフィシャルホームページ 

http://www.watanabe-cpa.com/

 
 
 
 

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