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ノウハウ ほめる達人、西村貴好の「ほめるは人のためならず」第5回 心の報酬を与えられる人材とは? ほめる達人、西村貴好の「ほめるは人のためならず」 一般社団法人日本ほめる達人協会 理事長 西村貴好

ノウハウ
 
皆さんこんにちは。日本ほめる達人協会理事長の西村貴好です。この連載では皆さんが毎日をイキイキと過ごせるように、私が「ほめる達人」、いわゆる「ほめ達!」への道を指南します。今回は、たくさんの企業研修をしてきた中で、私が感じていることのお話から。
 
 

若者が仕事に求めているものは何か

 
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「ほめちぎる教習」で生徒数を増やした南部自動車学校
当協会は全国に15支部があって、1級~3級までの「ほめ達!」検定や企業研修をするのが主な活動内容です。おかげさまで、どちらも順調に受講者を拡大しております。企業でいうと、昨年末、NTTグループさんに研修を導入していただくことになりました。
 
これまで企業研修をしてきた中で感じるのは、今の若者たちには、お金による報酬だけでなく“心の報酬”を与えてあげることが大事だということです。心の報酬とは、仕事を通じての“成長と貢献の実感”です。「自分は仕事を通じて成長できている。自分は社会に役立っているんだ」という実感ですね。
 
少し昔の人は、ストレスを成長に変える耐性があったと思います。お客様や上司にダメ出しされても、「何くそ!」とそれを乗り越える力を持っていた。また、たとえお客様から直接、「ありがとう」と言ってもらえる仕事でなくても、「プロとしてお金をもらっているのだから、やるべきことをやるのは当たり前」と思えるプライドがあったと感じます。
 
今は、厳しい指導をしたり、「プロとしてプライドを持って仕事をすべき」と説いたりするだけでは、企業に人が定着しない時代になったようです。では、心の報酬はどう与えればいいのか。「ほめ達!」にはそのノウハウがあります。だから、企業研修の引き合いが増えているのでしょうね。
 
 

「ほめ達!」の導入で集客力がアップ!

 
企業研修の例を1つ、紹介しましょう。三重県にある自動車教習所、南部自動車学校さんです。この教習所は「ほめちぎる教習」を取り入れ、減少傾向にあった生徒数をプラスに転じさせました。
 
やることは、「ほめ達!」と一緒です。生徒が運転を失敗したとしても、その行動の中からよかったことを見つけて、ほめる。常にこれを続けると、生徒もモチベーションが上がるし、指導教官との間に信頼関係ができるんですね。だから技術の向上も早くスムーズに教習が進む。
 
私がこちらの教習所の研修を始めるとき最初に言ったのは、「今の若者は成功体験を持つ人が少ない。自動車教習所は、そうした若者に対し、成功・成長を実感させてあげられる場所です」ということでした。成長を実感できる教習を行えば、自己肯定感を持った人を育てることにつながる。ですから、「人を育てられる自動車教習所の運営は、価値のある事業なのです」とお伝えしました。
 
さらに、「人の成長を助けられる人材を増やせば、御社の事業の未来にもつながる」と説明しました。なぜなら、人を育成できる人材は、企業研修においても人材育成の講師としての役割を果たせるからです。教官の仕事だけではなく、企業研修に講師として呼ばれるようになれば、教習所で働く人にとっても業務の幅が広がる。働くうえで将来的な目標や道筋があると、モチベーションが上がりますよね。だから、日々の現場での仕事にも意欲的に取り組める。とても好循環です。
 
研修後、「ほめ達!」のノウハウを実践した南部自動車学校さんは、合宿教習などを通じて全国的に集客力のある教習所として知られるようになりました。現在は、当協会の三重県支部としても活動いただいています。代表者の方は、「ほめ達!」の認定講師としても活躍中です。
 
 

心の報酬とは、承認欲求が満たされること

 
この例で紹介したように、これからのリーダーやマネージャー、教育者たちは向き合う方々に心の報酬を与えられるか否かが大切です。繰り返しになりますが、心の報酬とは成長・貢献の実感を与えてあげること。もっと深堀りして言うと、自分の成長を自分で認められるようになる。そして、何かに貢献して他人からの承認を得る――自己と他人、両方からの承認を得る機会を提供するのが、心の報酬を与えることなのです。
 
ここで、承認を求める気持ち、「承認欲求」について説明します。アメリカの心理学者、アブラハム・マズローが提唱した説に、「マズローの欲求5段階説」というものがあります。「人間の欲求はピラミッド上に5段階で構成され、低階層の欲求が満たされると、より上の欲求を欲する」というものです。
 
階層を下から見ると、最初は「生理的欲求」で、食欲や睡眠欲のこと。これが満たされると次に、「安全欲求」つまり「暖かくて安全な家で健康に暮らしたい」などと安全・安心を求めます。その次が、「社会的欲求」です。集団の中に所属することを望む気持ちですね。その上位にあるのが「承認欲求」です。これが「認められたい」という欲で、心の報酬につながる欲ですね。最終段階は「自己実現欲求」で、自分の力で何かを生み出す、実現することを望む欲求を言います。
 
 

真の承認欲求には自己承認が欠かせない

 
心の報酬を与えるためには、4番目の「承認欲求」を満足させてあげる必要があります。この欲求の満足には、他人からの承認だけではなく自己承認も欠かせません。なぜなら、真の承認欲求とは、他者からの承認だけでは満たせないから。自己承認もできて初めて、人間の承認欲求は満たされるのです。そして、自分を認められるようになったことで得た自信が、先に触れた5段階の最後、「自己実現欲求」へとつながっていく。これが理想的な形なんですね。
 
では、どうすれば自己承認ができるのか。自分の短所やネガティブな考え方も含めて、全部を認める。これがコツです。完璧な人間なんてどこにもいない。自分の駄目なところも全てを含めて、それでも自分は頑張っている。成長している――。それを自覚することが大事です。
 
でも、それって簡単なことではありませんよね。いったい、自分を認めるにはどうすればいいのか。それは、「ほめ達!」が実践しているように、他人をほめること、他人の価値を認める行為の中にヒントがある。つまり、他人の承認欲求を満たすことが、自己の承認欲求を満たすことにつながるのです。次回、そのお話をさせていただきます!
 
西村貴好の「ほめるは人のためならず」
第5回 心の報酬を与えられる人材とは?

 著者プロフィール  

西村 貴好 Nishimura Takayoshi

一般社団法人日本ほめる達人協会 理事長

 経 歴  

1968年生まれ。大阪府出身の「泣く子もほめる!」ほめる達人。ホテルを経営する家の3代目として生まれ、経営術を学びつつ育つ。関西大学法学部卒業後、大手不動産に入社して最年少トップセールスを樹立。その後、家業のホテルを継いで経験を積み、2005年に覆面調査会社「C’s」を創業する。短所ではなく長所を指摘することが調査対象の企業成長に効果があると発見し、「ほめる」ことの重要性に気付く。数々の実績を上げる中で、2010年2月に「ほめ達!」検定を実施する、一般社団法人日本ほめる達人協会を設立し、理事長に就任。以降、検定を通じて「ほめ達!」の伝播に尽力している。著書に『繁盛店の「ほめる」仕組み』(同文舘出版)、『ほめる生き方』(マガジンハウス)、『心をひらく「ほめグセ」の魔法』(経済界)、『泣く子もほめる!「ほめ達」の魔法』(経済界)、『人に好かれる話し方41』(三笠書房)などがある。

 日本ほめる達人協会オフィシャルサイト 

http://www.hometatsu.jp

 西村貴好オフィシャルブログ 

http://ameblo.jp/nishitaka217/

 フェイスブック 

https://www.facebook.com/hometatsu

 
 
(2017.2.17)
 
 

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