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ノウハウ 株式会社One & Only 代表取締役 森島真弓 Womenomicsの経営論 vol.1 性別による住み分けから性差を尊重する社会へ 株式会社One & Only

ノウハウ
  
 会社を経営するということは利益を追求することだ、という考えの方もいらっしゃるかと思いますが、私は共に生きる人を増やし、その幸せを追求するという意味にとらえています。社員が増える=家族が増える、家族が増えれば関連する人々も増える。会社という一家が幸せな時間を過ごすことができるように運営していくことが、経営者の責任であり、存在意義であると思っています。
 でも、人が増えれば様々な考えの者が混在し、一つの家庭を同じベクトルで動かしていくのが難しくなることもあります。そんな時、大切なことは経営者の心を社員に理解してもらうことです。会社という集合体には 「理念」 があります。社員 (スタッフ) とその理念の共有ができることが、経営者としての大切な要素ではないでしょうか?
 
 

経営者(親)の心、社員(子)知らず

 
 先日、韓国の友人に 「なぜ、奥さんなのに働くのか?なぜ給料をたくさんとらないのか?」 と質問されました。確かに、女性には往々にして専業主婦として生きる選択肢があります。家族の幸せを守るという仕事だけでも大変な労力を要しますが、私がなぜ会社を経営するのかといえば、少しでも自分と人生を共にする人を多く持ち、その方々の幸せを守りたいと願うからに他なりません。
 でも人間には1日24時間が平等に与えられているのですから、全員に対して高い満足度の仕事を提供し、日々を充実していただくことは、とても困難です。関わる人が多くなればなるほど、一人ひとりに対するケアが希薄になってしまう事実も否めません。
 そんな時、自分の気持ちを社員に上手に伝えていくことが、自分勝手な経営にならないための鍵です。たとえば私は給料をいただいておりませんが (今は会社の体力を増やしたい、社員やスタッフに還元したいという意思から)、その理由と意味を伝えることが大切なのです。知らなければ、社員が私の洋服や車などに対しても 「社長は贅沢してるのかしら」 という気持ちを持ってしまってもおかしくないからです。
 事は給料に限りません。どんなに経営者が心を砕き、資金繰りに奔走し、時に感謝し、時に謝罪をしていても、表現しなければ何にもなりません。経営者が思いもよらない不満分子を発見した時、経営者自身も深い傷を負うことがあります。そんな事態は自らで避けなくてはいけません。
 
 

手紙は心のバトン

 
 手紙という従来からある方法は、メールの普及により書く機会が少なくなってしまった方もいらっしゃることでしょう。メールはとても簡単に気持ちを伝えられる便利なツールです。絵文字にいたっては一文字で感情を表現できますから、本当にわかりやすいです。けれども、メールでは伝わらない気持ちが手紙では伝えられます。
 株式会社ワタミの渡邉美樹非常勤取締役最高顧問は手紙を非常に大切に考えられていて、社員やお客様からの手紙にも自ら返信を書かれるとのことでした。社員に対しての理念の共有においては、理念研修会の実施、理念集を作成してプレゼント、直筆メッセージ、ビデオレターを送る、などを実行されているそうです。心を通じ合わせられている社風を感じます。
 また、無添加化粧品で有名なファンケルを上場企業に育てた創業者の池森賢二氏には、11年間、社内報に100回にわたって執筆した 「社長から社員へのメッセージ」 があります。毎回のメッセージが真摯な手紙のように綴られており、社員と顧客に対する創業社長の思いが伝わります。
 個々に向けたメッセージでなくても十分だと思います。弊社でも、派遣スタッフの給料明細に毎月私からの手紙を添えています。1ヶ月で起こった良いことや悪いこと、共に考えてほしいことを書き、時には私の想いや、私にあった出来事から考察されること・・・ 様々です。もちろん読まない方もいるとは思いますが、皆さんがとても楽しみに待っていて下さることが分かります。そしてお返事や電話でご自身の感想を伝えて下さる方もいらっしゃいます。小さな会社ですが、派遣スタッフは特に、直接会う機会が少ないので、私は、会社の考えや、代表である私の考えを知っていただき、安心してお仕事をしてもらいたいという願いを持っています。そしてこの気持ちと、気持ちを伝える工夫は、彼女たちの日々の業務に大きく良い影響をもたらしていることを確信しています。
 
 

黙して語らずでは不十分

 
 日本人の美徳といえば、謙虚で寡黙で勤勉で・・・ という印象があります。「黙して語らず」 の姿勢が成功することも多いでしょうが、社員に対しては、できる限り心を伝承し、情報を開示することがモチベーションを上げる要因になると考えます。経営者の思いを一人一人に届けることが大切であり、心の交流が信頼を生みます。信頼関係こそが組織の基本です。時には厳しいことも伝えなくてはならない場面においても、継続的に意思を伝えていることによる信頼関係の中で、短絡的な結論にならず、理解ある行動で社員が会社を支えてくれることでしょう。
 様々な経営者の方がいらっしゃいますが、自分自身に一番合った 「心を伝える」 方法を見つけて実践されるべきだと思います。そのことが、結びつきの強い、しっかりとした家族のような会社を築いていける近道ではないでしょうか。
 
 
 
 
 
 Womenomics(ウーマノミクス)の経営論 ~子育て事業からの提言~
 第5回 社員(スタッフ)に心を伝える方法

 執筆者プロフィール 

森島真弓 Mayumi Morishima

株式会社One & Only代表取締役

 経 歴 

大学在学中に派遣会社を起業し、順調に推移させた後、大学を卒業して広告代理店に就職。結婚、出産を経て退社し、フリーのコンサルタントとして活動した期間をはさんで渡米。アメリカで見つけた子供服に魅せられ、2003年に子供服輸入販売業として(株)MRK. INTERNTIONAL(現・One & Only)を起業。2008年からはベビーシッターサービスを新たに開始。経営者としての経験の豊富さに2児の子育てを通じて得た視点と発想を加え、ウーマノミクスの時代に即した事業を展開している。

 オフィシャルホームページ 

http://www.little-star.biz/

 
 
 
 

 

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