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 オーストラリアでも、ちゃんとしたビジネスを展開しようと思ったら、何らかの形で会社を立ち上げる必要があります。「オーストラリアで起業するにはどのくらいの費用が掛かるのか?」 問い合わせを受ける内容で一番多いのが資金についてです。答えは 「1ドル」。オーストラリアはスモールビジネスが盛んな国で、会社設立に関する法制上のハードルはかなり低いです。起業そのものは比較的容易にできます。
 
 

オーストラリアでの起業形態

 
 オーストラリアでの起業形態は、大まかに分類しますと、「現地法人」 「支店」 「現地企業との提携」 「事務所」 の4種類です。これらはそれぞれ特徴があります。どの形態を選ぶかは、各企業のオーストラリア進出方法や経営方針によって異なりますし、業種によっても向き不向きがあります。ここでは一般的な考えを紹介しましょう。
 
 まずは支店を設立するケース。これは文字通り、日本本社などの下につく形になります。この形は、以前なら本社⇔支店間の資金面の流れをスムーズにしたり、現地へ日本本社から人員を派遣する際に就労ビザを取得しやすい等のメリットがありましたが、近年は同じ企業内であっても、国をまたぐ資金の移動にはATO(Australian Taxation Office・オーストラリアの税務局) が厳しいチェックの目を光らせています。海外送金が頻繁に行われていると、それが引き金になり監査を呼び込む可能性も高くなります。また外国企業としての登録などの諸手続きも複雑を極め、費用もかなりの割高になってしまいます。苦労するわりには得るところが少ないため、最近では世界的に名が知られた大手日系企業でも支店化を避け、現地法人を設立するのがトレンドとなっています。
 次に事務所を設立するケース。これはオーストラリアで会社の登記などをしないまま、会社のPRや商材のセールス、市場調査などを行えます。ただ、商材の売買や、国内で金銭の授受が発生する行為は一切認められておらず、オーストラリアの個人や企業とビジネスを行い、収益を上げようとする意図からは外れていると言えます。また実際問題として、オーストラリアで会社登録も何もしていない外国人に家主が事務所を貸す可能性は、極めて低いです。
 
 結果、オーストラリアで起業したければ、「現地法人の設立 」または、「現地企業との提携」 のいずれかを選ぶことになります。
 
 

現地法人を設立しよう

 
 このうちの前者、現地法人を設立すると、現地の企業と同等の活動ができるようになります。その形態も日本と同様に、個人事業主または株式会社のいずれかを選べます。個人事業主の場合には、企業納税登録番号(ABN) の登録が必要になり、株式会社の場合には、オーストラリア証券投資委員会(ASIC) に必要書類を提出して会社設立を申請し、オーストラリアン・カンパニー・ナンバー(ACN) を手に入れる必要があります。
 個人事業主のほうを選ぶと、毎年の登録料など諸経費を抑えることができます。ただ株式会社と比較して、経費の有効範囲も狭く、収益次第では税率も跳ね上がる可能性があります。従業員の雇用にも制限があるので、起業の初期段階、一人でビジネスを行う場合に限り最適と言えます。
 
 会社の資本形態で最も一般的なのが株式会社である点は、オーストラリアも日本と同じです。株は公開と非公開を選べる点も、株式公開(いわゆる上場) までの道のりが長く、様々なハードを超える必要がある点も同じです。進出の当初から上場するのは現実的ではありませんから、ここでは株式を非公開で進出するケースを中心に解説します。
 
 冒頭でも述べている通り、オーストラリアでは資本金は1ドルでも会社設立ができます。オーストラリア証券投資委員会(ASIC) のホームページから必要書類をダウンロードし、記入して折り返し送付すれば、それで終了です。起業者ご自身で登録されてもいいですが、当然ながら書類はすべて英文で書かれ、独自の言い回しや専門用語なども含まれているので、語学が堪能な方でも、専門の業者に依頼することを強くお勧めします。
 登録時には取締役等の氏名、住所を提出します。登録者の国籍、居住国は日本で問題ありません。ただし、登録者のメンバーのうち必ず一人は、オーストラリア国籍またはオーストラリアの永住権保持者を含める必要があります。ここが、オーストラリアに進出する企業が一番頭を悩ませるところです。
 また、業種によっては、専門機関からの認可や許可が必要になります。メンバーの一人ないし全員が、機関が指定する学校などに通学し、修了する必要もあります。また、この点はありがたいことに、日本で有している資格の流用が可能もしくは、一部可能な場合もあります。いずれにしろ、その都度専門機関に問い合わせが必要です。オーストラリアは日本と比べて、認可の保持が厳格に義務付けられるケースも多く、認可を怠ればペナルティーを受けます。この点は十分注意が必要です。
 
 
 
 オーストラリアはどの市場も競争相手が少なく、手つかずで、ビジネスには魅力的な土壌です。国策的にスモールビジネスを促進しているので、中小企業でも進出しやすく、また勝算の高い市場です。ただ国が変わればルールも異なりますので、初期費用が掛かったとしても、「餅屋は餅屋に」の言葉があるように、専門家を通して設立をしたほうが、後々トラブルに見舞われる危険が少なくなります。
 また今回述べたケースはあくまでも一例であり、事業者や各企業によって事情は異なります。「この業種だから絶対にこの会社形態でなくてはだめ!」 ということはありません。進出に関しては、私たちコンサルタントのような専門家とよく話し合い、経営方針に沿ったベストな選択をされてください。
 
 
 
 
  南半球でビジネスを考える ~オーストラリア在住・日本人経営コンサルタント奮闘記~
第18回 すわ進出! 必要な準備とは
 

 執筆者プロフィール  

永井政光 Masamitsu Nagai

NM AUSTRALIA PTY TLD代表 / 経営コンサルタント

 経 歴 

高校卒業と同時に渡米、その後オランダに滞在し、現在はオーストラリア在住。永住権を取得し、2002年にNM AUSTRALIA PTY TLDとして独立。海外進出企業への支援、経営及び人材コンサルティングを中心に活動中。定期的に日本にも訪れ、各地で中小企業向けの海外進出セミナーなどを行っている。

 オフィシャルホームページ  

http://www.nmaust.com/

 ブログ  

http://ameblo.jp/nm-australia/

 
 
 
 
 

 

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