ショートタイムショッピングの過ち
11月11日に栃木で「勝人塾」をやった時に、スーパーマーケット関係者から「スーパーは今のままでいいのか」という話が出ました。それで思い出したのが、昔スーパーマーケット業界にあったショートタイムショッピングという考え方。お客である主婦の負担を減らすために、買い物の所要時間をとにかく短くするというもので、当時は「お客さんの入店から退店まで3分以内」みたいな目標を立てて取り組んでいました。レジなんか、パートさんの横で男の社員がストップウォッチでタイムを測って「31秒、失格! 1秒短縮せよ」なんてやってたんだから。手打ちのレジでだよ!? 今聞くと笑っちゃうでしょう(笑)。
なぜそういうことになったのかというと、昔はどのビジネスも男の世界だったからです。で、男の社員が店舗運営を改善するために主婦にアンケートをとるんだが、「日々の買い物のどんな点が苦労ですか」とか、「どんな点が不満ですか」みたいな項目しか設けないわけよ。男は根本的には買い物が面倒くさい生き物だから、実は主婦が買い物を楽しんでいることがわかっていない。想定外なんだ。その結果、ここがイヤ、あそこが不満という声を聞いて快不快の“不快”をつぶすのが正しいマーケティングだと考えるようになってしまった。その傾向は今も形を変えて残っています。でも、それは発想として違うんだよね。
日米格差に通じる国内の地域間格差
この遅れ、言い換えれば地域間格差は、日本国内でも見られます。地方はやっぱり、どうしても、環境や考え方が古くなりがちです。経営者は二世社長が多く、親の代から地元の商工会議所や青年会議所に所属しているから尖ったことがやりにくくなる。勉強する内容も「倫理」とか「ありがとうの心」とか、要は松下や稲盛の世界だ。
しかし、悪いけど、愚直にコツコツ頑張るだけじゃ、この21世紀の資本主義社会で、日の目なんか、浴びないからね。「一隅を照らす」の精神は何万分の1でたまに報われるからドラマになるのであって、ほとんどはそのままだからね。社長が駅前の掃除とか会社の便所掃除をする暇があったら今よりいい戦略を考えないと! 本気でそう思います。
労働集約型ビジネスに活路がある
とは言え、地方にも元気な経営者はたくさんいます。そういう経営者は創業社長に多いです。これは日本中どの地域も共通。自力でイチから伸ばしていくしかない人はやっぱり頑張ってるよね。
その皆さんに私がよく言うのは、我々の活路は労働集約型ビジネスにある、ということです。そりゃそうだよ。だって、我々はジョブズやビル・ゲイツにはなれないんだから。彼らは頭の良さが桁違いなんだから。フェイスブックとか配車サービスのUber(ウーバー)みたいに世の中を変えるサービスはハーバード大学卒とか東大首席卒とかのエリートたちが生み出すもので、我々のような非エリートはそれを使ってどう稼ぐかが勝負ですよ。実際に、全国を回っていると、新規創業して残っているのは大半が労働集約型。人を集めて動いてもらうビジネスです。人を動かすのが上手な経営者が稼いでいます。
ちなみにここで「人」というのは、従業員のことであると同時に、お客さんのことでもあります。いい経営者は従業員を動かすのも、マーケットを動かすのも上手い。サービスや仕組みを生み出すのは確かにエリートだけど、彼らには市場の圧倒的マスを占める非エリート大衆の気持ちはわかりません。むしろ、彼らの気持ちや生活感覚を理解して実際にマーケットを動かせるのは、彼らと同じ非エリートである我々のような経営者。そして同じく非エリートである一般の従業員たちです。そこは自信を持つべきです。
最悪の勘違いに注意!
でも、だからこそ彼らには、「分をわきまえろよ」とよく話します。勝人塾の塾生にも二世社長がいるわけよ。お父さんが不動産会社とか土木会社、産廃業とかで、そうすると自分はもうちょっと何か、変な言い方だけど、キレイなビジネスをしたくなるんだね。よくあるのが、「オシャレな居酒屋を立ち上げて外食で社会を変える! ワタミみたいに上場する!」とかね。私言うの。「やめとけ」って(笑)。上場というのは誰でも経営参画できるようにすることだから、上場なんかしたらお前ぐらいのレベルの経営者はすぐクビだ。外から来たエリート社長にすぐすげかえられるぞ、と。
要は勘違いなんだけど、そういう時はその裏にあるもっと悪い勘違いのほうを、本気で反省しなきゃいけない。私たちが非エリートでもやっていけるのは、大衆の感覚がわかるからだ。自分もそこから出てきたから彼らを従業員で上手く使える。マス・マーケットの心をつかむビジネスもできる。なのに心のどこかで彼らと自分の間に線を引いてしまったら、従業員のこともお客のことも見下すようになってしまったら、どうするの? それこそ最悪の勘違いですよ。
最後に、人手不足で悩んでる企業が多いだろうから一言。地方の中小企業は福利厚生などの待遇面で人を呼ぼうとしないほうがいいと思いますよ。もちろんできるだけのことはするけど、地域に貢献できる大義を持つことのほうが重要です。それもお飾りじゃなく、実際に従業員が日々関わる業務でその大義を追求できるようにしてあげること。そして定時で帰してあげて、副業ならぬ“複業”を認めてあげること。これから全国的に時短の動きが進むし、個人も複数の仕事を持つ時代が来ます。先に話したように、アメリカの姿は日本の近未来の姿です。先週帰国する時にサンフランシスコ空港までUberを使ったら、愛車を走らせてくれたアダムスは、他の仕事をしながらUberで月7万円くらい稼いでいるそうです。これ、地味にすごい時代が来てると思うんだけど、皆さんはどう感じます?
vol.1 地方で伸びるビジネスは何か
著者プロフィール
佐藤 勝人 Katsuhito Sato
サトーカメラ代表取締役副社長/日本販売促進研究所.商業経営コンサルタント/想道美留(上海)有限公司チーフコンサルタント/作新学院大学客員教授/宇都宮メディア.アーツ専門学校特別講師/商業経営者育成「勝人塾」塾長
経 歴
栃木県宇都宮市生まれ。1988年、23歳で家業のカメラ店を地域密着型のカメラ写真専門店に業態転換し社員ゼロから兄弟でスタート。「想い出をキレイに一生残すために」という企業理念のもと、栃木県エリアに絞り込み専門分野に集中特化することで独自の経営スタイルを確立しながら自身4度目となるビジネスモデルの変革に挑戦中。栃木県民のカメラ・レンズ年間消費量を全国平均の3倍以上に押し上げ圧倒的1位を獲得(総務省調べ)。2015年キヤノン中国と業務提携しサトーカメラ宇都宮本店をモデルにしたアジア№1の上海ショールームを開設。中国のカメラ業界のコンサルティングにも携わっている。また商業経営コンサルタントとしても全国15ヶ所で経営者育成塾「勝人塾」を主宰。実務家歴39年目にして商業経営コンサルタント歴22年目と二足の草鞋を履き続ける実践的育成法で唯一無二の指導者となる。年商1000万〜1兆円企業と支援先は広がり、規模・業態・業種・業界を問わず、あらゆる企業から評価を得ている。最新刊に「地域密着店がリアル×ネットで全国繁盛店になる方法」(同文館出版)がある。Youtube公式チャンネル「サトーカメラch」「佐藤勝人」でも情報発信中。
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