前回に続いて、「平成22年度税制改正大綱」が発令された場合に納税者のメリットになる項目を、速報で紹介します。今回は「小規模企業共済」を活用する方法です。
ただし、この改正内容は国会を通過するまでは正式な確定事項ではありません。今後の国会審議動向などにより、内容が変更することがありますのでご了承ください。
■小規模企業共済制度のススメ
小規模企業共済制度とは、小規模企業の個人事業主や役員が事業をやめたり役員を退職した場合などに備えて、あらかじめ資金を積み立てておく共済制度のことです。いわば、個人事業主や小規模企業役員のための退職金制度となっていて、税法上いくつかの特典があります。
1つ目の特典は、個人所得の計算上、支払掛金が全額所得控除の対象となる点です。毎月の支払掛金としては、1,000円から70,000円までの500円刻みで選択できることになっています。運営主体である中小企業基盤整備機構が発行する掛金払込証明書を添付することが要件となりますが、1年分を前納することも可能です。この場合、支払った年の掛金として全額所得控除の対象となります。
例えば、月70,000円の掛金を1年支払った場合で実効税率を30%とすると、70,000円×12月×30%=252,000円の節税効果となります。しかも、これが毎年となりますので、資金負担は大変かもしれませんが、後の確定申告や年末調整で税金が戻ってくることも考えると、加入を検討する余地は十分にあるのではないでしょうか。
しかし、将来の廃業や退職、老齢給付などにより共済金を受け取るときに課税されるのでは、実質的な節税とはいえません。この小規模企業共済制度の優れている点は、共済金受取時の課税処理として、一括受取の場合は「退職所得扱い」、分割受取の場合は「公的年金等の雑所得扱い」とされていることです(受け取り方によっては一時所得扱いとなるケースもあります)。これが、2つ目の特典です。退職所得や公的年金等の雑所得は、税務上、多額の控除などがありますので結果的に節税となります。
■誰でも加入できるわけではない
このように小規模企業共済制度は、支払時に掛金が全額所得控除となり、更に共済金受取時にも税の恩典がありオススメなのですが、誰でも加入できるわけではありません。加入条件は以下の通り。
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- 常時使用する従業員の数が20人以下の建設業、製造業、運輸業、不動産業、農業等の個人事業主または会社の役員
- 常時使用する従業員の数が5人以下の商業(卸売業・小売業)、サービス業の個人事業主または会社の役員
- 事業に従事する組合員の数が20人以下の企業組合の役員
- 常時使用する従業員の数が20人以下の協業組合の役員
- 常時使用する従業員の数が20人以下であって、農業の経営を主として行っている農事組合法人の役員
- 常時使用する従業員の数が5人以下の弁護士法人、税理士法人の士業法人の社員
補足・・・ 常時使用する従業員には家族従業員や臨時の従業員は含みません。また、常時使用する従業員の数は、あくまでも加入時における人数要件であって、加入後に従業員の数が増加して要件に該当しなくなっても、引き続き加入できます。
(中小企業整備基盤機構「小規模企業共済」加入資格より抜粋)
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今村仁 マネーコンシェルジュ