B+ 仕事を楽しむためのWebマガジン

トピックスTOPICS

いよいよ到来する“5G”の時代

 
今年1月から徐々に感染が拡大し、猛威を振るっている新型肺炎。3月1日に開催が予定されていた東京マラソンも一般の部が中止になるなど、ウイルスの蔓延が心配される大規模なイベントの中止や予定変更が各地で相次いでいる。その中で、厚生労働省は不要不急の外出を控えるとともに、事業主に対して時間差出勤やテレワークへの取り組みを呼びかけた。
 
近年の働き方改革に伴い、ビジネスパーソンのテレワークへの関心は高まっており、導入する企業も増えてきている。とは言え、まだまだ一般的に普及しているとは言い難い。オフィスではない場所で仕事をすることについて、あまり現実味が湧かないという人も未だ多いのではないだろうか。
 
そもそもテレワークでは行えない仕事は別として、テレワークの普及が進まない理由はいくつかある。労務管理の問題や社内制度の見直しを含めた、導入にかかる手間やコストの大きさなどが挙げられるだろう。中でも大きな理由の一つに、通信環境の問題がある。データや資料のやりとりに時間がかかれば業務効率を著しく下げてしまうし、正確で素早い意思伝達やコミュニケーションをいかに図るかといった課題も、テレワークの悩みの種であろう。
 
そのような問題を解決するための手段として期待されているのが、3月から本格的な商用サービスが開始される第5世代移動通信システム、通称“5G”である。この運用開始に先立って、シャープ株式会社は日本初の5G対応スマートフォン「AQUOS R5G」を今春発売すると発表した。
 
ついに目前にまで迫った5Gの時代。ドローンやロボットのコントロール、AIによるデータ管理や分析といった各種サービスなど、それらを活用するためには決して切り離すことのできないインフラである通信技術の進化が、ビジネスにどのような変化をもたらすのか。これまでに取り上げてきたテクノロジーを振り返りながら考えてみたい。
 
 

優れた通信技術が“距離の壁”をなくす

 
glay-s1top.jpg
ビル警備業務仕様の「ugo」記者発表会の様子
通信システムが5Gとなって、具体的に何が変わるか。簡単に言えば、“大容量の情報を高速かつ低遅延で通信できる”ようになる。総務省によると、通信速度は現在の4Gシステムの100倍としており、具体的には2時間の映画を3秒程度でダウンロードできるという。これらの利点は日常生活やエンターテイメントの分野での活用にスポットが当たりがちだが、テレワークなどビジネスの分野にも大いに役立つ。
 
本連載の第2回で紹介したアメリカの不動産仲介会社eXp Realtyのバーチャルオフィスのような事例は、テレワークの極致と言えよう。社員が一つのオフィスに物理的に通勤する必要がないのであれば、この度の新型コロナウイルスのような感染症の流行など、不測の事態に見舞われた際でもリスクを避けながら仕事ができる。ただ、そこまで極端なテレワーク化は社内体制の見直しから考える必要があり、既存の企業にはハードルが高い。
 
しかし、5Gの環境下であれば、従来よりもタイムラグが大幅に少なくなり、よりリアルタイムに情報をやりとりできる。先述したデータ送受にかかる手間もなくなり、スムーズにコミュニケーションが取れるようになれば、一般的な企業でもテレワークを導入しやすくなるはずだ。
 
また、これまでよりも高精細な映像を遅延なく見られるようになるのも、5Gがもたらす非常に大きな恩恵である。VR技術も応用すれば、実際に目の前で見ているかのように映像を視認できるだろう。さらに、ロボットの遠隔操作も遅延なくスムーズに行えるとすれば、手元での繊細な作業を求められる仕事、例えば外科手術や機械の修理などが遠隔地から行えるようになるし、高所や人が立ち入れない危険な場所での建設作業も可能になる。
 
第3回で紹介したMira Robotics株式会社のアバターロボット「ugo」は、まさしくその先駆けであろう。同社は総合ビルメンテナンスを手がける大成株式会社と業務提携し、アバターロボットを活用した警備ソリューションを開発。実証実験を行い、今秋より本格的な運用開始を予定していると発表した。
 
Mira Robotics社が将来的な形として目指しているように、今後一般家庭にまで普及が進めば、高齢者の介護をロボットを通じて遠方から行うといったことも可能になるに違いない。それをほかの仕事にも応用できれば、東京都心部への人口一極集中の緩和や、地方創生につなげることも期待できる。優れた通信技術によって、もはや仕事をするための障害だった“距離の壁”がなくなる日も、近いのではないか。
 
 

AIとともに進化する新しい時代のビジネス

 
これまで紹介してきたAIやロボットなどの活用も、高度な通信技術がなくては成り立たない。逆にリアルタイムに送受される膨大なデータを迅速に処理するためにも、AIの進化は欠かせない。さまざまなテクノロジーは相互に関連し合い、相互に進化を遂げている。
 
例えば、第1回で紹介したinaho株式会社の野菜収穫ロボットは、AIによる自動制御である。AIと通信技術がさらに進化すれば、上空のドローンなどから得られた高精細な画像データを瞬時に送受、分析し、最も収穫に適した時期の作物を、よりピンポイントに収穫するといったことも可能になるだろう。同じく、株式会社ヘッドウォータースが手がけるクラウドロボティクスサービスも、AIによるデータ分析やIoTを活かした多様な機器との素早い情報共有などにより、一層フレキシブルな運用が行えるようになるはずだ。
 
また、第2回で取り上げた株式会社Books & Companyの音声認識AIによる文字起こしサービスも、AIの進化でますます精度の向上が望めるし、高度な通信環境下におけるテレワークでの活用も期待できる。こうしたサービスや取り組みによって、上記の企業のいずれもが目指しているのが、業務効率を上げ、無駄を削ぎ落し、人間が使える時間や余力を増やすこと。それで得たリソースを、より創造的な取り組みに活かすことである。
 
そして、その取り組みから、また次の新しい技術が生まれ、さらに新しい仕事に活かされていく。ただ、いずれにせよ、それらの技術を操り、仕事にするのはAIではない。紛れもなく人間である。
 
進化したAIが人間の仕事を奪うどころか、まさにAIとともに人間の仕事も進化しているのだ。月並みな言い方ではあるものの、これからの未来も、人間次第で良くも悪くもなるのである。今後も続々と生み出され、絶え間なく進化していくテクノロジーをどのように活かしていくか。それこそが、我々の使命なのではないだろうか。
 
<連載了>
 
■inaho株式会社
https://inaho.co
 
■株式会社ヘッドウォータース
https://www.headwaters.co.jp
 
■株式会社Books & Company
http://www.books-company.com
 
■Mira Robotics株式会社
https://mirarobotics.io
 
良いも悪いも活用次第!? AIで“変える”日本の仕事
vol.4 仕事はAIとともに進化する
(2020.2.26)

関連記事

最新トピックス記事

カテゴリ

バックナンバー

コラムニスト一覧

最新記事

話題の記事