B+ 仕事を楽しむためのWebマガジン

トピックスTOPICS

電力小売り自由化による市場の変化

 
glay-s1top.jpg
マイクロ水力発電の例。らせん式水車
2020年4月に発送電が分離することが動かせない事実になり、昨2016年4月には電力小売りが自由化された。また、昨年は高速増殖炉もんじゅの廃炉が決まり、他、各地の原発の現状を見ても、原子力発電は実質的にはもう再浮上することはないだろう。そこで注目されるのが再生可能エネルギーだ。
 
これまで大手電力会社が行ってきた発電と送配電が分離され、送配電部門は中立を保つために分離後も経済産業省の規制下におかれるが、発電は自由化される。電力産業に新規参入したい業者にとっては大きなチャンスだ。
 
再生可能エネルギーとは、「エネルギー源として永続的に利用することができると認められるもの」として、太陽光、風力、水力、地熱、太陽熱、大気中の熱、その他の自然界に存する熱、バイオマスが規定されている。そのうち、固定価格買取制度の対象となっている再生可能エネルギーは太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスの5つ。自然エネルギーが豊富な地方にとって、地産地消が可能な再生可能エネルギーは、地方創生の原動力になるのではないだろうか。
 
 

大きく期待される再生可能エネルギー

 
これまで再生可能エネルギーを活用した発電の主役は太陽光だった。企業、一般家庭問わず設置可能なので現在でもかなりのシェア率だ。だが、お天気任せの発電方法なので安定供給が難しく、蓄電式のものも出てきてはいるが、設置にかかるコストなどが割高でまだまだ改善の余地がある。
 
風力発電については、これまでは陸上設置が中心だったが、今後は洋上風力発電が増えていく動きが見える。洋上は風況が良好で騒音や景観への影響が少ないことから、各地で設置計画が進行中だ。もう一つ、バイオマス発電のバイオマスとは動植物等の生物からつくりだされる有機性のエネルギー資源で、化石燃料を除くものの総称である。それを燃焼、あるいはガス化したものを燃焼させてタービンを回し、発電する仕組みをバイオマス発電という。これは木くずやごみ、家畜の糞尿などが資源なので、生活のある所に資源が生まれ続ける。エネルギーの地産地消に効果が高く、今後の展開に期待がされている。
 
いっぽうで、水力発電についてはどうだろうか。水力発電は設置ができれば24時間発電可能、CO2の発生もなく、再生可能エネルギーの中でもかなりクリーンな発電方法である。これまで水力発電と言えば、ダムのような水がめから落水させて発電する方法が主で、大型の発電所の建設は自然環境に与える影響が大きかった。
 
だがこのところの再生可能エネルギー浮上の動きで注目されているのは、実は1000kw以下の小水力発電だ。小水力発電(ミニ、マイクロ水力発電含む)は小規模なため、設備によっては1mの落差でも発電可能なものもある。発電方式の分類では「流れ込み式」または「水路式」となり、河川の水を貯めることなくそのまま利用して発電するので、既存の大きな発電設備の縮小版などではなく、小水力独自の技術である。まだ市場となってはいないが、今後大きな伸びが期待できる。
 
環境省が2011年に調査した結果、出力3万kw未満の水力発電設備が設置可能な場所は2万カ所以上。全ての設備で発電することができると1400万kwにもなり、これは原子力発電の14基分に値する。これまでは小水力発電を行うにも大規模発電と同じ法的手続きが必要で、あまりに煩雑で面倒だったが、小水力発電推進のため、国土交通省では手続きを簡素化する方法などを紹介した手引書を発行している。設備にかかるコストにしても太陽光などと比べれば低く、小水力発電に取り組む意義は大きいと言えるだろう。日本は水の国である。このポテンシャルを生かさない手はない。
 
 

自然エネルギーが地方創生のカギ

 
2015年10月、徳島県の佐那河内村では、国の補助事業を利用し村営管理を行う「新府能発電所」が運転を開始した。新発電所管理棟は、1973年に四国電力より廃止・譲渡された旧発電所ヘッドタンクと旧発電所跡の中間点に位置し、旧発電所のあった場所までは現在も農業用水路でつながっている。佐那河内村はこの間の水流を使って「新府能下段発電所」の建設を検討中だ。ヘッドタンクや導水管を新設すれば150mの落差の水流で発電でき、新府能発電所と同程度の発電量が見込め、佐那河内村の貴重な自主財源となる。
 
徳島県は自然エネルギーの宝庫であり、LEDやリチウムイオン蓄電池の生産拠点だ。 そこで、「エネルギーの地産地消」や「災害に強いまちづくり」に向け、県民、事業者、行政などが一体となって取り組んでいく「自然エネルギー立県とくしま推進戦略」を2012年3月に策定した。
 
当初より自然エネルギーでの発電力は4.8%と、全国平均に比べても高かったが、発足から3年後の2015年度には、太陽光、風力、水力、バイオマスでの発電を行い、LEDなどを利用した省エネ対策も大きな力となり、県内電気の使用量に照らし合わせた単純な計算ではあるが、自然エネルギーでの電力自給率は26.5%と大きく伸びている。2030年までに37%を目標としているとあって、自然エネルギーに関する地方自治体の取り組みとしてはかなり先進的だろう。
 
自然エネルギー協議会の会長県でもあり、34道府県、約200の事業者を代表して、国への提言も積極的に行っている。なお、これらの発電施設は見学も可能だ。
 
また、近年では全国各地の浄水場で小水力発電を行っているところが増えてきている。考えてみれば、浄水場は24時間安定して取水しているため、小水力発電を行うのに最適な施設であり、今後も増加が見込まれている。
 
これまでエネルギーはほとんどの部分を輸入に頼ってきたが、日本は国土の70%が山林で、周りは海に囲まれている。それに日本は今、「地方創生」という、喫緊かつ注目度の高い社会経済のトピックを抱えている。「エネルギー政策といったマクロな問題は中央が取り組むこと」だなどと受け身にならず、自然エネルギーに対するポテンシャルが高い“地方”から発信や発想を続けていくことで、イノベーションが生まれるのではないか。「発送電分離・電力自由化」をきっかけにその実例が増えていけば痛快だろう。
 
 
(ライター 木村千鶴)
 
  (2017.2.10)

関連記事

最新トピックス記事

カテゴリ

バックナンバー

コラムニスト一覧

最新記事

話題の記事