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「生活者が商品やサービスを選択する"生活者主導の時代”がますます加速する。企業はそれに沿ったマーケティング手法を改革しなければならず、日本でも欧米のようにCMO的な役割が注目されるようになるのではないか。顧客情報を入手・分析して次のマーケティング活動に役立てるCRM(Customer Relationship Management)の手法ももっと重要になるので、CMO、CRMの領域に一元的にサービスを提供していくことが、広告会社の重要な役割になる」――某大手広告代理店の執行役員が昨年暮れに語った、2015年の広告を取り巻く環境変化の分析である。
企業において、商材を計画し、作り、流通させ、販売して分析する一連のマーケティング活動のリーダーがCMO(Chief Marketing Officer)である。アメリカのフォーチュン500社のうち62%にCMOがいるが、経産省の調査では、日本は時価総額上位300社の0.3%しかCMOを置いていない。役員氏が言うように、2015年は消費者とその行動を理解し、拡大・拡散する顧客との接点を統合して全社的にマーケティングを最適化するCMOの役割が高まり、そうした領域に取り組む企業も増えるだろう。
従来の4大マスメディアにインターネットが加わってメディア・コンバージェンス(メディア統合)が進む中、企業はどんな手法を駆使して消費者を知り、メディアを通してつながり、継続して付き合っていけるのか。企業と消費者とのコミュニケーションのあり方を考えるうえで材料になるのが、食品への異物混入などの“炎上事件”だ。
ツイッターやフェイスブック、YouTube、LINE、2チャンネルなどで個人が手軽に情報発信できるSNSの時代になって久しい。しかし、個人も企業も、未だに有効な使い方を見いだせず、良好な関係を築けないでいる。
昨年12月のインスタント焼きそば「ペヤング」の事件では、消費者がツイッターで商品にゴキブリが入っていたことを告発。メーカーが全工場で生産を自粛し、事件が事実なのかどうか確信が持たれないまま、「安全管理を怠っている」というイメージが作られた。個人レベルで済んだかもしれない事件がマスメディアにも取り上げられて情報が拡散し、「社会の大事件=お祭り」に仕立て上げられた。メーカー側の担当者が謝罪に訪れた際のやりとりもツイッターで発信され、企業は謝罪風景などもネット上で発信されることを前提で対応する必要があると思い知らされた。昨年から連日のように新たな異物混入が指摘されたマクドナルドの事例でも、会社側の経過説明や謝罪のあり方が取沙汰されている。
1月には、東京都内のスーパーで菓子に爪楊枝を刺し込んだり、菓子を盗む様子を動画サイトに投稿する事件も起きた。異様だったのは、犯人の逃走劇をマスメディアも一緒になって報道し、逃走中に投稿される新たな動画もサイトで消されることなく見られたことだ。
ソーシャルメディアから端を発し、マスメディアが報道して大きな事件に発展する“炎上”。なぜそうなってしまうのか。風評リスク対策のコンサルティングを手がける株式会社ソフィアライトの石川裕氏は、そのメカニズムを次のように説明する(職種は一例)。
「あの有名人が泊まりました」といったホテル従業員の投稿や、「こんなことしちゃった」といったコンビニのバイト従業員の動画がツイッターやYouTubeなどにアップされる。
→ 2ちゃんねるでスレッドが複数立ち上がり、個人のブログに引用されるなどして小規模な火の手が上がる。
→ 店や会社に問い合わせや揶揄のメール(メル突)、電話が入り始める。
→ いわゆる「ミドルメディア」や「まとめサイト」が、「ここで炎上しているから見に行こうぜ」とネットユーザーを案内する。