B+ 仕事を楽しむためのWebマガジン

トピックスTOPICS

 

◆4Kテレビ、リニアはスタートから行き詰まる?

 
20140701cl_29ex01.jpg
山梨実験線を試験走行するリニアモーターカー
 日本の1次リーグ敗退は残念だったが、4年に一度のお祭り、サッカーワールド杯に世界中が湧いている。このワールドカップ、4Kテレビによる放送が一部で実施されたが、ご覧になった方はいるだろうか? 4Kテレビは国が成長戦略の一環として普及を進める次世代のテレビジョンだ。画素数はフルハイビジョンの4倍あり、高画質が特長とされる。今回のワールドカップでは試験放送の他、パブリックビューイングによる視聴が可能となっている。
 
 同じく、国が推進するハイテクノロジーの一つに、リニアモーターカーがある。こちらは「リニア中央新幹線」として2027年に東京-名古屋、2045年には東京-大阪の開通を予定している。これによりそれぞれの所要時間は、現行の1時間40分程度が40分に、2時間30分程度が1時間7分に短縮される。
 
 4Kテレビ、リニアとも、“技術大国日本”が誇るテクノロジーの結晶だが、いずれも前評判は芳しくない。普及・実現される前から、「不要」「行き詰まる」といったネガティブな声が巷間で高いのだ。その理由と、両者の違いを見てみよう。
 
 

◆4Kは誰が何を見るためのものか

 
 事情を調べてみると、4Kテレビにおける作り手と消費者の乖離が浮き彫りになってくる。テレビは10年に1度買い換えるものとされているが、2011年に地デジ移行による買い替えが一段落したばかりの昨今、基本的な買い替え圧力がそもそも弱い。さらに、4Kテレビは現下すでに販売されているが、対応する画質でつくられた番組は、NHKでようやく試験放送が始まったばかりだ。頼みの民放各局は、地デジ移行時に総額1兆円にのぼる設備投資をしたばかり。4K画質の番組は制作費も従前の1.5~2倍かかると言われており、よほどの需要が見込めない限り、対応する設備の導入などについて慎重姿勢を崩さない。
 
 番組=コンテンツ自体の需要も怪しい。昨今では録画視聴が増えているが、録画に際し、ハードディスクの容量を節約するため、わざと画質を落とす視聴者が少なくない。さらに、視聴者の高齢化という絶対的な事情もある。視力の低下した高齢者には、ある水準以上の画質の高精細化は無意味だろう。
 
 4Kテレビは確かに最先端技術だ。だが、誰に何を見せるためのものなのか、肝心の存在意義が置き去りにされている。
 
 

◆国策4Kは涸れ井戸・・・?

 
 そもそも「新技術を盛り込んだテレビを開発すれば儲かる」というビジネスモデル自体に、疑義がある。かつてテレビジョンは米国のRCAという企業によって開発された、当時としては画期的な技術だった。だが時代を経るにつれ、安価で技術力の高い海外企業に押され、ついには1987年、同社を保有していたGE(ゼネラルエレクトロニクス)からフランスの電機メーカー、トムソンに売却され、米国におけるテレビ製造の時代は終わりを告げた。この時に米国メーカーからテレビ市場を奪った海外企業こそ、日本のソニーや松下電器産業だった。
 
 同じことが今、日本と韓国・中国との間で起きている。4Kテレビを市場に初めて投入したのはソニーである。各社の製品ラインナップが充実し、「4K元年」と言われた2013年、アメリカの調査会社ディスプレイサーチ社の調べによると、ソニー製4Kテレビは金額ベースで23%弱と最多のシェアを誇った。ただ、同年後半には早くも北米市場でサムスンに逆転を許し、欧州市場でも敗色が濃いと伝えられる。
 
 
 

次ページ 〉〉 4Kとリニアで明暗が別れる・・・

 
 
 
 

関連記事

最新トピックス記事

カテゴリ

バックナンバー

コラムニスト一覧

最新記事

話題の記事