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民主党政権が消費増税を目論んでいた2011年頃、政府は 「消費税が10%に引き上げられる2016年になると、増税や社会保険料の負担増、子供手当の廃止などで、現在より年収300万円の4人家族で年間27万3000円、年収500万円なら33万8000円の負担増となる」 と試算していた。そして、2014年4月からの消費税増税が決定して1ヶ月。様々な制度がじわじわと変わりつつある。
たとえば、社会保障面での給付減や負担増。国民年金、厚生年金は10月から給付金が1%引き下げられている。2014年4月にはもう1%、さらに2015年4月からはさらに0.5%少なくなって、合わせて2.5%減額されることになっている。
健康保険料(厚生年金)は10月の納付分から0.354ポイント引き上げられている。企業と折半なので、保険料率が8%ならば4%。年収400万円なら16万円が、毎月多く引かれる。これから保険料率が毎年0.5%ずつ上がってゆくと、手取金額が0.25%下がっていくことになる計算だ。
消費増税は2014年4月施行だから、まだ半年も先だと思い込んでいないだろうか。気が付きにくいが、すでに増税は進んでいる。東日本大震災復興関連の増税として、この1月から所得税率に2.1%が上乗せされている(25年間)。2014年6月からは住民税も1000円増税されることになっている(10年間)。給与が上がらなければ手取り収入は減少していく一方なのである。
政府は、家計への支援策として低所得者への1万円の現金支給や、住宅取得時の給付金などを用意している。しかし、いずれも3千億円規模で、家計の負担を給付金でまかなうことは不可能といわれており、恒常的収入としての賃金が上がることが期待される。
果たして賃金は上昇するのだろうか。連合の古賀伸明会長は、傘下の労組に来年の春闘ではベースアップ引き上げを要求するよう呼びかけた。12月に開催する中央委員会では5年ぶりの 「統一ベア要求」 も検討される見込みだ。ただし、対応は企業まかせ。いまは好業績の企業から賃上げが始まっているだけで、業績が回復に向かったとしても、一般企業で賃金に反映されるには3年ほどかかるといわれている。
消費税率が8%に上がると、家計は約6兆円の負担増になる(経済財政諮問会議の試算)。それを和らげるべくいま政府が描いているシナリオは、企業減税を賃上げにつなげようとするものだ。企業が持つ280兆円もの内部留保を従業員の賃上げや設備投資に向かわせたいと、いろいろな仕掛けをしている。たとえば、
○投資減税・・・ 生産性を年平均1%以上高める設備を入れた企業は、投資額の5%を法人税から差し引く。
○賃上げ減税・・・ 給与を2012年度に2~5%増やした企業は、増加分の1割を税金から割り引く。
○法人税・・・ 復興特別法人税は増税分を1年前倒しにして2014年から廃止(個人の復興関連の所得税、住民税は増税される)。
政府は、企業減税を賃上げに結びつかせるためというのだが、これは直接的には 「企業優遇・個人にしわ寄せ」 以外の何物でもないことは見抜いておくべきだろう。
安倍首相の 「法人税減税で給与アップ」 という言葉も疑わしい。日本の全法人約260万社のうち、75%に当たる195万社は法人税を払っていないのだから。
業績の悪い企業は過去の損失を何年も持ち越せる制度がある。1990年代の金融危機で巨額の損失を出した銀行も、最近まで20年間も納税していなかった。あのトヨタも今年5年ぶりに納税したばかりだ。日本を代表する大企業やメガバンクが1円も納入しないとは、法人税の仕組みそのものが異常と言わざるを得ない。法人税を払わない企業が75%もあるのだから、減税が実施されても社員の給料を上げることなどできないのではないか。