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消費増税の大整理!
~いま、何が起こっているのか~

 
 

◆「輸出戻し税還付金」の不思議

 
 さらに、消費税をめぐっては、輸出関連の大企業には 「輸出戻し税の還付金」 があり、消費増税で儲かってしまうという不思議な制度があるのをご存知だろうか。
 輸出企業は、部品などの仕入れの際に部品メーカーや下請け業者に消費税を支払っている(部品メーカーや下請けが国に納付)。消費税は最終的に組み上がった製品を購入する最終消費者が負うべき税なので、海外で販売されるぶんはその国の消費者に課税すべきだが、それは不可能だ。そこで、海外販売分については、輸出業者が下請けに払った消費税は国から輸出戻し税として還付を受けられるようにしているのだ。つまり、海外販売分については仕入れコストが 「儲け」 になるのである。
 
 こうした戻し税は毎年3兆円にのぼり、消費税の1%にも匹敵する。2014年に8%になればさらに増えるだろう。海外販売分については国庫に入るべき税金が輸出企業の金庫に入るこの制度、仕組み自体には問題がないため、手がつけようがないのが現状だという。
 
 

◆消費税自社負担を打ち出した「英断」?

 
 消費税の表示は、2004年度から 「税込み価格」 が義務づけられてきた(本体価格が100円なら値札の表示は105円)。それが今年10月1日から 「税抜き価格表示」 でもよいことになった。以降、「○○円+税」(税別であることを明記して本体価格のみ表示)、「○○円(税込○○円)」(本体価格と税込み価格を併記)、「○○円(税込)」(税込み価格のみ表示)などの表示パターンとなる。2017年3月末までの時限措置だ。
 
 販売業者が、価格表示をめぐって様々な思惑をめぐらせている中で、家具チェーンのニトリは消費税増税分の3%を自社で負担し、表示価格も 「税込の総額表示」 でいくと発表した。
 消費税が上がっても価格は変えたくない。3%純利益が減るが、そうならない努力をする。当分の間、逆風が続くが、それは社員の教育の場となり、改善や効率化につながる――ということで、今回は26年間続いた増収増益が途切れても仕方がないと考えているようだ。
 
 実は2004年4月、消費税の総額表示が義務づけられた際も、ニトリは消費税5%分の値下げを敢行している。純利益130億円の時に総額65億円もの値下げ。それ以降も、競合店が外税方式を採用する中で、技術力と生産性をさらに向上させて増収増益を実現してきたという。 「消費税増税で消費者の生活が苦しくなるときこそ顧客の利益を優先し、わかりやすい価格表示で」 と似鳥社長は言うのだが、今回も手放しで喜んでいいのだろうか。
 実は、社員や関連会社の方々は戦々恐々としているのではないか。消費税増税だけとっても、家計の可処分所得は3%減るのだ。会社はさらなるコストカットを行い、社員の労働強度を高め、売上目標も高めに設定するかもしれない。普通に考えて、社員の給料が上がる可能性は少ないだろう。ニトリに商品を納入している業者も、増税分の価格転嫁をさせてもらえるだろうか。
 業界大手のニトリがこうした方針を打ち出したからには、競合各社も追随する可能性が高い。他の業種でも検討しないわけにはいかなくなるのではないか。
 
 

◆消費増税の見取り図を俯瞰的に眺めよう

 
 このように消費増税をめぐる目下のトピックを批判的に描きつつ、いっぽうで、社会保障を立て直す趣旨が貫徹されるのであれば、むしろ 「気持ちよく払えるようにしてくれることのほうがよほど重要」 という空気が漂っているのが、今回の消費増税がこれまでと全く異なるところだ。背景には、消費者ないし受益者として、発生する対価に意識的になるべき社会的必然がある。
 
 消費税の他にも進んでいる増税、社会保険料の負担増加、法人減税でも上がりそうもない賃金、大手輸出企業に有利な輸出戻し税、そして 「消費者のため」 をうたう価格表示。ここで述べてきたことを 「単なる消費増税」 と傍観するのでなく、何がどれとどんな相関関係を持ち、企業経済や市民生活のどこにどんな影響を及ぼしてくるのか。政府や財界の “偉い人たち” の言動を鵜呑みにせず、俯瞰的な視野で消費増税の見取り図を見つめる必要があるのではないだろうか。
 
 
 
 
(ライター 古俣慎吾)
 
 
 
 

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