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スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW

 
 
2004年、NPBドラフト会議において東北楽天ゴールデンイーグルスから指名を受けてプロ野球選手となった平石さん。プロとなって感じた大変さをお聞きすると、「毎日試合があること」だと話してくれた。体力的にはもちろん、精神的にも苦労することが多いのだという。
 

気持ちを切り替えることの大切さ

 
僕がそれまで在籍していた社会人野球では、リーグ戦もあるものの、ほとんどが負けたら終わりのトーナメント戦でした。だから、大会に向けての意気込みもすごいんですよ。気持ちが大きい分、負けたら当然落ち込みますし、数日は気持ちが切り替えられませんでした。でも、プロ野球はシーズン中、毎日試合があるんです。だから試合に負けてしまっても、引きずっている場合ではないんですよ。翌日の試合に向けて、気持ちを切り替えなければいけません。
 
最初の頃は、それがなかなか難しかったですね。ミスをしたり、結果を出せなかったりするとすっかり落ち込んでしまいました。周囲の先輩方を見るとケロっとしていて、なんでこんなに簡単に切り替えられるんだと不思議でしたね。みなさん、反省や検証はしても、落ち込んだ気持ちは引きずらないよう徹底していました。
 
プロ野球は移動も多いので、体力的にも大変です。毎日、移動して練習して試合して・・・の繰り返しなので、体がきつい中でメンタルまで落ち込んでいると、とてもじゃないけど続けていられません。だから、みんな無理矢理にでも気持ちを切り替えるようにしているんです。
 
そうしてプロ野球に馴染んでいったものの、今ふり返ると後悔のほうが多いですよ。「もっとこうすれば良かった」と思うことばかりです。取り組み方や考え方など、今ならもっと良い方法が思い浮かぶんですよ。だから、指導者としては現役の選手に同じ思いをしてほしくないと思って接していました。
 
 
31歳のときに現役を引退し、コーチに転身した平石さん。もとからコーチになることをイメージしていたわけではないという。「現役を続けたいと思っていた」と話す平石さんが、コーチにチャレンジしたきっかけをお聞きした。
 

恩師の言葉で指導者になることを決意

 
現役時代、引退した諸先輩方によく言われていたのが「やめる直前に、バッティングのことが理解できるよ」ということ。僕の場合も、まさにその通りだったんですよ。それまでさまざまな方法を試してもなかなか結果が出なかった中で、ようやく「これだ!」という理解があったんです。でも、そのときにはすでに戦力外通告を受け、コーチの打診をいただいていました。
 
僕は現役を続けるつもりだったんです。トライアウトを受けて、入団できるチームを探そうと思っていました。今まで選手として挑戦を続けてきた人生だったので、ここで守りに入るのは違うと考えていたんです。現役を続けたいという気持ちを押し殺したら、後悔してしまうと思っていました。その考えが変わったのは、高校時代の恩師に相談したことがきっかけです。
 
その先生は、僕の性格もよく理解してくれていて「縁の下の力持ちとして、選手を支えるのが合っているのではないか」と言ってくれました。さらに、「お前の年齢で、ほかに指導者はいるのか?」と聞かれまして。当時の僕は31歳。選手としては全盛期とも言われる年代ですから、同年代の指導者はいませんでした。そう答えると、「何事も、最初というのはええで」「その若さで先陣を切って、やってみたらどうや」と言われたんです。
 
その言葉を聞いて、指導者として挑戦してみたいと思えたんです。僕は現役時代からチームメイトのちょっとした変化にもよく気付くタイプでしたし、自分が怪我をした経験から体の使い方などを考えるのも好きだったので、今思うと自分でプレーするよりも指導者のほうが向いていたのかもしれませんね(笑)。