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スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW

 
 
誰もが無理なく踊ることのできるダンスを考案し、「ダレデモダンス」として各地でワークショップを開催したり、プログラムDVDを販売したりしているSAMさん。その活動についても詳しくお聞きした。
 

誰もが踊れるダンスを提供

 
TRFが20周年を迎えた際に、ファンの方々に向けてTRFの代表的な楽曲である「EZ DO DANCE」でエクササイズができる、「イージー・ドゥ・ダンササイズ」をつくりました。それが予想以上に好評でして。その当時、すでに日本は超高齢社会に入っていたので、高齢者の方に向けて健康寿命を延ばす活動ができればと考えたんです。そうしてダレデモダンスの活動を始めました。
 
ダレデモダンスをつくるうえで一番大事なのは、無理せずできるものにすることです。みなさんダンスと聞くと、ステップを覚えるなど難しいイメージがあるかと思います。でも、ダレデモダンスは無理なく楽しめることを一番に考えているんですよ。そのうえで、安全かつ健康な体づくりに役立つものになっています。
 
例えば、健康な体づくりに役立つ動きとして、転倒防止のために太ももをしっかりと上げる動作を取り入れています。そのため、ももを上げるときには膝から上げるのではなく、足の付け根、股関節の筋肉を使うことを意識してもらっています。ほかに、肩から上に腕を上げる動作もあって、これは肩こりの解消につながるだけでなく、認知症の予防にも良いと聞きました。ダレデモダンスは、医者である従兄弟に監修してもらってつくり上げたんです。
 
運動レベルは、ラジオ体操や部屋の掃除、近所の散歩などと同程度になります。METs(メッツ)という運動強度を表す度合いがあり、4 METsをキープしてつくるようにしていますね。楽曲は基本的にTRFのものを使用しています。ただ、そのままの楽曲のテンポで踊ると高齢者の方には早すぎるので、テンポを下げて安全に踊ってもらっているんです。
 
ワークショップに来られるご高齢の方は、最初は不安そうにしていることも多いですね。70代になって初めてダンスを踊るという方も少なくありません。でも、みなさん踊り終わったあとは笑顔になってくれますよ。「こんなに楽しいとは思わなかった」というお言葉をよくいただきます。それが一番嬉しいですね。
 
 
インタビューの中で、「能とストリートダンスの新たなるコラボを構想している」と話してくれたSAMさん。宝生流に弟子入りし、すでに舞台も踏んでいるという。
 

ダンスの可能性を模索する

 
能は、世界最古の芸能とも言われているほど歴史のあるものです。日本には能や歌舞伎、狂言などの伝統芸能がありますよね。50歳を過ぎた頃に、そういった伝統芸能をしっかりと知っておいたほうが良いんじゃないかと考え、能の勉強を始めたんですよ。ちょうどその時期に、雑誌の対談企画で能の流派の一つである宝生流で、シテ方と呼ばれる主役を務める方と対談する機会がありました。
 
その方に、「いつか能とストリートダンスをコラボさせた新しい試みがしたい」という思いをぶつけたんです。そうすると、「ぜひ一緒にやりましょう」と言ってくださいまして。であれば、僕自身がもっと能について理解を深めなければなりません。その方に弟子入りさせていただき、能の修行に励みました。昨年には『猩々』という演目で能面をつけて舞台も踏んだんですよ。
 
能を学ぶことで、ストリートダンスの良さにあらためて気付くこともあり、良い経験となっています。今後もさらに能に対する理解を深め、ストリートダンスとコラボさせることでどんな新しいものをつくれるのか模索していきたいですね。早く形にできればと思っています。
 
僕は常々、ダンスの新しい可能性について考えています。ダレデモダンスも、健康に携わる分野において、ダンスを通じて何か貢献ができるのではないかという可能性を感じて取り組んだものです。能とのコラボも、自分の好きなストリートダンスと、興味を持ち始めた能で何か新しい可能性がないかと考え始めたのがきっかけなんですよ。
 
僕はダンスに関して、仕事という意識はあまりありません。若い頃は、ダンスが今ほど一般的なものではなく、ストリートダンスについても詳しい人は少なかった。そんなストリートダンスのかっこ良さをより多くの人に知ってもらいたい、自分たちがストリートダンスの良さを広めなきゃいけないという思いを持って活動してきました。そうして、ストリートダンスが高い認知度を持つようになった今、ほかにどんな可能性があるのか考えるのかがとても楽しいんですよ。