意思ある者はチャンスをつかめ!
飲食業界の若獅子が吠えた
破竹の勢いを持つ経営者として、ドキュメンタリー番組などから多くの出演オファーがかかる井戸氏。しかし、いきなり成功を収めることができたわけではない。人に騙され、資本の金利返済にも苦しんだ。だが、自分のやり方に確信を持ち、チャンスの到来を虎視眈々と狙っていた。
不況の時代に宝の山を見つけた瞬間
確かに、騙されたこともありましたね(笑)。エムグラントを立ち上げる前にやっていた会社があって、そこで6~7店舗経営していたんです。そこからエムグラントを立ち上げて、買収という形で事業を移したのですが、2~3期目が非常に大変でした。その頃ですね、店の内装を任せていた業者に工事代金を持ち逃げされたのは。
私にも油断があったのでしょう、2期目の売上は飲食業界ではそこそこだったし、出店数が伸び始めた頃で脇が甘くなった部分もありました。とにかくそれで大きな資金損失を出してしまい、やむなく追加借り入れをしなくてはいけなくなったんです。しかし、まだ2期目だから銀行も簡単には貸してくれないし、金利が高いところに借りざるをえなかった。しばらくは金利のために働くような状態にハマってしまいました。
悪循環から抜け出せたのは3期目です。わずか1期で抜けられたのはラッキーと言えばラッキーですが、ここにチャンスの神様がいたわけです。3期目に、松戸のデニーズが撤退するのを受けて 「けん」 の松戸店を立ち上げました。私たちの商売は 「居ぬき」 と言いまして、別の飲食店が撤退した場所に出店するやり方です。それ以外は基本的に店を出しません。もともと設備や機能が備わった場所を譲り受けて、必要な改装などを施して出店を続けてきたところに、不況のあおりで大手が続々と撤退を始めた。目の前に空店舗――つまり宝の山がわんさと積まれた。時代環境と自分たちのやり方がうまくかみ合ったわけですね。
それまでは、40~50坪くらいの広さに席数が70~80程度の、比較的小さな規模の店構えをスタンダードにしていました。でも、考え方を変えました。70席の店を造るのも100席強の店を造るのも根本的には変わらないので、600~800万円の売上を当たり前と思わず、1000万円とか、それ以上の売上をスタンダードにしたんです。効率から言ってもそのほうがいい。ちょうどその考えを実践しはじめた頃、『夕刊フジ』 さんに取材をしていただいて、テレビなどのメディアも注目してくれるようになりました。
おもしろいものですよね、30件目あたりまでは、預金残高が10万円を切ることだってあったのに(笑)。 でも、自分の中では自信があったんですよ。うちは徹底的なコストパフォーマンスをウリにしているので、「これだけやれば必ず当たる」 という確信めいたものがありました。客単価は1300円くらいだから、決して安売りではないんです。ただし、お客さんを呼ぶための発想として 「価格破壊」 ではなく 「価値破壊」 にウエイトを置いた。値段を落とすのではなく、「今までこの価格でこんなものは食べられなかった」 という未知の体験に力を入れたんです。売上があがってきたら、お客さんの反応から銀行の対応まで、一気にいい流れがやってきました。当然、フランチャイズ店舗も加速度的に増えました。
私にも油断があったのでしょう、2期目の売上は飲食業界ではそこそこだったし、出店数が伸び始めた頃で脇が甘くなった部分もありました。とにかくそれで大きな資金損失を出してしまい、やむなく追加借り入れをしなくてはいけなくなったんです。しかし、まだ2期目だから銀行も簡単には貸してくれないし、金利が高いところに借りざるをえなかった。しばらくは金利のために働くような状態にハマってしまいました。
悪循環から抜け出せたのは3期目です。わずか1期で抜けられたのはラッキーと言えばラッキーですが、ここにチャンスの神様がいたわけです。3期目に、松戸のデニーズが撤退するのを受けて 「けん」 の松戸店を立ち上げました。私たちの商売は 「居ぬき」 と言いまして、別の飲食店が撤退した場所に出店するやり方です。それ以外は基本的に店を出しません。もともと設備や機能が備わった場所を譲り受けて、必要な改装などを施して出店を続けてきたところに、不況のあおりで大手が続々と撤退を始めた。目の前に空店舗――つまり宝の山がわんさと積まれた。時代環境と自分たちのやり方がうまくかみ合ったわけですね。
それまでは、40~50坪くらいの広さに席数が70~80程度の、比較的小さな規模の店構えをスタンダードにしていました。でも、考え方を変えました。70席の店を造るのも100席強の店を造るのも根本的には変わらないので、600~800万円の売上を当たり前と思わず、1000万円とか、それ以上の売上をスタンダードにしたんです。効率から言ってもそのほうがいい。ちょうどその考えを実践しはじめた頃、『夕刊フジ』 さんに取材をしていただいて、テレビなどのメディアも注目してくれるようになりました。
おもしろいものですよね、30件目あたりまでは、預金残高が10万円を切ることだってあったのに(笑)。 でも、自分の中では自信があったんですよ。うちは徹底的なコストパフォーマンスをウリにしているので、「これだけやれば必ず当たる」 という確信めいたものがありました。客単価は1300円くらいだから、決して安売りではないんです。ただし、お客さんを呼ぶための発想として 「価格破壊」 ではなく 「価値破壊」 にウエイトを置いた。値段を落とすのではなく、「今までこの価格でこんなものは食べられなかった」 という未知の体験に力を入れたんです。売上があがってきたら、お客さんの反応から銀行の対応まで、一気にいい流れがやってきました。当然、フランチャイズ店舗も加速度的に増えました。
井戸氏は現在32歳。バブルを経験したことのない世代だ。景気後退の寒風ふきすさぶ中で経営者になった井戸氏には、ビジネスをシビアに見る視点と、「売上をあげるために何をすべきか」をシンプルに考えて実行する姿勢が備わっていた。今年2010年4月からステーキ&カレーの「ふらんす亭」の経営権を取得し、約60名の社員と管理本部ごと吸収したエムグラントは、買収前は月次3000万円近い赤字を出していた「ふらんす亭」を、わずか3ヶ月で黒字に転換させた。看板も内装も、人材も入れ換えないままで、短期間のうちに黒字転換を可能にさせたものは何だったのか?
負け犬根性にさせない企業風土
それは、ズバリ言うと 「負け犬根性にさせなかった」 ということです。やはり当時の 「ふらんす亭」 には、具体的な対応策云々よりも、「何をやってもダメだ」 という悪い空気が漂っていました。赤字状態が2年も3年も続けばそんな心理状態に陥るのもわかりますが、私たちはまずその空気を払拭しなくてはいけないと考えたんです。買収側の我々には勢いがあったから、そのまま 「それ行けー!」 と、突撃モードの雰囲気に混ぜてしまおうと。
すると、おもしろいもので、どんどん彼らの思考が変わってきたんです。「あれ、なんか言うとおりにやればできてるかも?」 というのが初月。2ヶ月目は 「なんか明らかに変わってきてるよね?」 となり、3ヶ月目には 「うわっ、利益出ちゃったよ!」 となっていく。もちろん具体的な対処をしたわけですが、それもざっくり言うとコスト管理を徹底させただけです。「今日の売上に対して今日の経費はいくら」 という実績を3ヶ月間、毎日追いかけていっただけ。
すると、おもしろいもので、どんどん彼らの思考が変わってきたんです。「あれ、なんか言うとおりにやればできてるかも?」 というのが初月。2ヶ月目は 「なんか明らかに変わってきてるよね?」 となり、3ヶ月目には 「うわっ、利益出ちゃったよ!」 となっていく。もちろん具体的な対処をしたわけですが、それもざっくり言うとコスト管理を徹底させただけです。「今日の売上に対して今日の経費はいくら」 という実績を3ヶ月間、毎日追いかけていっただけ。