「3R」というキーワードをご存じでしょうか。廃棄物の再資源化を意味する「Recycle（リサイクル）」、廃棄物そのものを減らす「Reduce（リデュース）」、再使用の「Reuse（リユース）」それぞれの頭文字をとった、循環型社会をつくるための行動指針です。地球規模での環境問題が深刻化し、90年代以降、徐々に生活者のエコに対する意識も高まってきました。しかし、完全に暮らしに根付いたとはまだまだ言い難いのが現状です。
 
自然豊かな徳島県上勝町――四国の中でもひときわ小さい町であり、過疎高齢化の地域。この小さな町は、あることで世界からも注目を集めています。2003年に日本で初めて「ごみゼロ（ゼロ・ウェイスト）宣言」を発表し、以来、10年以上にわたり真剣に3Rに取り組んできました。
 
上勝町の3R推進への情熱に突き動かされた、各界のクリエイティブたち。その思想をカタチにしたのが、これからの環境教育を楽しく理解できる施設「RISE & WIN Brewing Co. BBQ & General Store（ライズアンドウィン ブルーイングカンパニー バーベキューアンドジェネラルストア）」です。
 
 

生産から流通、販売の過程でなされる過剰な梱包や包装から解放されなければゴミは減らないという意識のもとつくられた「RISE & WIN Brewing Co. BBQ & General Store」。施設内は、ゼロ・ウェイストを楽しみながら理解できる、充実の内容となっています。
 
その1つは、上勝特産の柚香（ゆこう）が香るフルーティーな「ルーヴェンホワイト」をはじめ、個性豊かなビールを製造するブルワリー。本場アメリカ仕込みの本格派ビールでありながら、従来は破棄されていた果汁を絞った後の柚香のピールを香りづけに使っていたり、ビールをつくる過程でできる麦芽粕をお菓子やグラノーラに再利用していたりと、ゼロ・ウェイストの理念にもとづいています。テイスティングスタンドでも、「ゴミを出さない」という視点から、リターナブルボトルを採用。お気に入りのビールを瓶詰するのも、また一興です。上勝町の大自然の中では本格BBQを楽しむこともでき、ビールもよりおいしく感じられることでしょう。

また、上勝産の商品を中心に、量り売りを実施していたストア「上勝百貨店」も、施設内にジェネラルストアとしてリニューアルしました。店内には、雑貨の他、瓶に詰まったナッツやドライフルーツ、調味料やお米などがズラリ。好きなものを、持参した容器に必要なだけ詰めて購入するスタイルなら、過剰な包装や不適切な量から来るゴミが出ません。
 
エンターテイメント性も抜群な「RISE & WIN Brewing Co. BBQ & General Store」。ここでビールやショッピングを楽しむこと自体が、上勝町の文化に親しむことであり、ゼロ・ウェイストにつながるのです。

ブルワリーの外壁には上勝産の木材の端材を使用していたり、通路には古いビルを取り壊した際に出たという廃材のレンガが敷き詰められていたりと、味わい深い「RISE & WIN Brewing Co. BBQ & General Store」の空間。
 
施設の中にある独創的なデザインの棚や机も、材料は廃材であり、アーティスティックなシャンデリアも、よく見ると空ビンや欠けたコップでできているとわかります。スタイリッシュなブルワリーのユニフォームも、実は害獣として駆逐された鹿や猪の皮や古着のリメイクです。「RISE & WIN Brewing Co. BBQ & General Store」で過ごしていると、「リサイクルやリユースは、クリエイティブでカッコイイ」――そんな価値観が芽生えるはず。今後も「持続可能な社会と我々の行動責任」というテーマに、町の文化やゼロ・ウェイストの理念を結びつける場として、理想的な3Rを示してくれるでしょう。