◆希少な国産線香花火を
新発想で次世代に繋ぐ
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| 昔の姿を保つ西の線香花火「スボ手牡丹」 | | 全国で見られる東の線香花火「長手牡丹」 |
花火が伝わって約400年、日本では独自の花火文化が発展し、“日本の夏”を語るうえで欠かせない風物詩に。夏の夜空を光と音で華やかに彩る打ち上げ花火も魅力ですが、いっぽうで、素朴で味わい深い線香花火の人気も衰えることがありません。
もともと、300年ほど前にワラスボを香炉に立てて火を灯して楽しんでいたものが始まりとされる線香花火。この原型を活かした「スボ手牡丹」と呼ばれるタイプは、今なお関西を中心に親しまれています。その後、紙漉きが盛んだった関東に伝わる際に、火薬を紙で包んだタイプの「長手牡丹」と呼ばれるタイプの線香花火が生まれ、全国に広がりました。
このように歴史ある線香花火ですが、現在、市場に出回っているもののほとんどが安価な中国産で、日本の製造業者は三社にまで激減してしまったのだとか。しかし、職人が火薬の量や縒り方にこだわり丹精込めてつくる国産線香花火は、外国産に比べて火玉も大きく、時間と共に変化する火花の美しさは歴然。この希少な国産線香花火、そしてその製造技術を守り、新たな形で次世代へつなごうと立ち上がったのが、福岡県みやま市「筒井時正玩具花火製造所」です。
◆素材にとことんこだわり
職人の手で縒り上げる
一つひとつ手づくりする「線香花火筒井時正」
筒井時正玩具花火製造所は、日本で唯一「スボ手牡丹」と「長手牡丹」、2種類の線香花火を製造している他、素材にこだわった新感覚の線香花火「線香花火筒井時正」を手がけています。
火花の要である火薬には、切って30年以上寝かせ、油分を豊富に含んだ宮崎産の松の根からつくる松煙を使用。火薬を包むのは、福岡県・八女産の手漉き和紙。紙の厚さや目の細かさは燃え方を大きく左右しますが、八女の手漉き和紙は火のまわりがスムーズなのだとか。
製造工程も、一つひとつの作業がデリケートで、まさに熟練の職人技と言えるでしょう。えんじゅやくちなしといった天然の染料で染めた優しい風合いの手漉き和紙に、専用の道具で一つずつ手作業で盛る火薬の重さは、0.08g。わずか100分の1gの差でも燃え方が全く変わってしまうため、作業中は一瞬たりとも気が抜けません。さらに、途中で火の玉が落ちることなく最後まで美しい火花を咲かせるために、重要なのが火の玉を受ける“首”と呼ばれる部分。1本ずつ、人差し指と親指に神経を集中させ、強弱をつけながら火薬を包んだ和紙を縒ってつくりあげます。
線香花火はわずかな火薬の量の誤差でも燃え方が変わるほど繊細
最後まで美しい火花を保つには、首が要。技術力が問われる作業だ
完成した線香花火は、火を点けるのがもったいないような優美さ。商品の中には持ち手部分を花弁のように広げて束ね「花」を表現したものもあり、見る人の心を惹きつけています。「花」と和蝋燭、九州の山桜でできた蝋燭立てを保存用の桐箱に収めた「花々」は、贈り物にもおすすめです。
線香花火と和蝋燭をセットにした「花々」
”蕾”と”花”をひと箱に収めた「花」
四季の彩は一年を通して楽しみたい「蕾々」
◆儚くも情緒ある火花に
夏の思い出を重ねて
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| 点火とともに膨らんでいく火の玉、「蕾」 | | パチッ、パチッと火花の散り始め「牡丹」 |
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| 次々と火のアーチを繰り出していく「松葉」 | | 火花が落ち、消えゆく光が儚い「散り菊」 |
線香花火の燃え方には、段階ごとに風情豊かな名前があることをご存じでしょうか。
火を灯した瞬間に命を吹き込まれ、火の玉が酸素を吸いこみながら膨らんでいく様子は、今咲かんとする「蕾」さながら。そうして蕾が弾け、ゆっくりと、しかし力強く火花を散らし始める姿は大輪の「牡丹」を思わせます。やがて「松葉」のような火花が勢いよく飛び出した後、線香花火は一本ずつ美しく花弁を静かに落とす「散り菊」へ。こうして、赤々と燃える火の玉から光が消えると共に終焉を迎えるのです。
人が線香花火を「儚いけれど美しい」と感じるのは、蕾から散り菊への数十秒に、人生が重なるからかもしれません。
夏の終わりの儚さにもよく似た線香花火。国産の線香花火は、ワインのように熟成することで火花は柔らかく、味わい深くなると言います。大切に保管し、来夏に向けて寝かせておくのもいいかもしれません。四季をイメージした色で染めた線香花火のセット「蕾」もあるので、一年を通して楽しむのも一興。「線香花火筒井時正」を通じ、国産線香花火の魅力にぜひ触れてみてください。
| 筒井時正玩具花火製造所株式会社 〒835-0135 福岡県みやま市高田町竹飯1950-1 TEL 0944-67-0764 | |
(この情報は2014年8月20日現在のものです)