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◆北大路魯山人が愛した
前田利家の入城により、“加賀百万石” として栄えた、絢爛たる名都・加賀。領内の保養地であった山代温泉は、北陸随一の古湯であり、歴代の藩主にも愛されてきました。古くは明智光秀が傷を癒すために訪れ、近代においては、与謝野鉄幹や泉鏡花といった文人墨客も好んで足を運んだとか。とりわけ、昭和の文化人として知られる北大路魯山人は、九谷焼や加賀料理に魅せられ、山代温泉での寓居が独自の料理哲学や才能開花の一端を担ったといいます。
そんな魯山人の定宿として知られる 「白銀屋」 が、2012年10月、「星野リゾート 界 加賀」 として生まれ変わりました。随所に創業1624年という確かな歴史を感じる空間と、疲れた心身を優しく癒す美肌の湯。そして、細やかなもてなしの精神と、魯山人の思想を大切にした旬の味・・・。この冬、北陸・加賀の魅力を余すことなく堪能する、とっておきの旅に出かけませんか。
◆伝統を現代に伝える
山代温泉には、宿や商店が軒を連ねる日本の温泉の原風景 「湯の曲輪(ゆのがわ)」 が今なお残されています。「界 加賀」 も、その街並みを形成する一つ。本館は国の有形文化財にも指定されており、紅殻格子が特徴的な風情ある佇まいが魅力です。広々とした入口は、その昔、藩主が馬や馬車を利用していた時代の名残であり、格調の高さがうかがえます。
いっぽう館内は、「伝統とモダンの融合」 がコンセプト。古きを守りながらも、現代の感性にフィットする意匠が凝らしてあり、見どころが満載です。たとえば、ロビーを華やかに演出するモビールは、加賀の伝統工芸 「加賀水引」 によるもの。この 「加賀水引」 は、ロビー以外でも小物やインテリアとして館内のあちこちで見ることができ、加賀文化の新しい在り方を印象づけてくれます。
宿に到着後は、苔むす日本庭園を望みながら、パブリックスペースでまずはひと息。庭園の先には有形文化財となっている茶室があり、15時から18時まではウェルカムサービスとして、抹茶と和菓子をいただくことができます。静かな環境で過ごすひと時は心を穏やかにし、旅の疲れを忘れさせてくれるはず。パブリックスペースにはカフェバーを併設しているので、こちらでゆったりとコーヒーをいただくのも良いでしょう。
気になる客室は純和風やデザイナーズモダンなど、個性豊かな展開に。昔ながらの趣を活かした純和風の客室の中でも、「福の間」 は魯山人が好んで逗留した特別室。魯山人は、この部屋の縁側に座り、石灯篭や庭を眺めるのが好きだったと言います。この他、加賀藩前田家のみに許された群青色を壁に配した 「群青の間」は、加賀水引のコンセプトルーム 「水引の間」 としても親しまれています。どのタイプの客室も和の心を感じられ、旅の情緒をしっかりと味わえること必至です。