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◆保存食の域を越える
近年、アウトドア料理として人気を集めている燻製。手軽な家庭用スモーカーも多く市販され、煙で燻すことで食材の風味を豊かにするとあって、自宅で燻製づくりを楽しむ人も増えていると言います。もともと、燻製は保存食。多くの製法があり、短時間で燻香をつけるだけでも十分美味しい燻製はできますが、本来はしっかりと燻煙して乾燥させる手間暇のかかるものであり、実は様々な素材に応用できる保存方法でもあります。
現在、市場に流通はしていないものの、クチコミで人気を集めている燻製があります。その名も 「妙乃燻上」。“マダムせい子” こと津川清子氏が独自に研究を重ね、時間と手間をかけて丁寧に作り上げた滋味豊かな “燻上” は、驚きと感動に満ちています。津川氏が情熱を傾ける、奥深い燻製づくりの世界をお見せしましょう。
◆熟成を重ね旨みが増した
津川氏が燻製づくりの魅力に目覚めたのは、2005年頃のこと。知人が趣味で作っていたという魚の燻製を味わい感動し、燻製の歴史や製法に触れたことがきっかけでした。そこから、家庭用のスモーカーを揃え、趣味として自宅で燻製づくりをスタート。食べ歩きによる研究をはじめ、人に教わったり、本を読んだりと、試行錯誤を重ねていったのです。
「食べ歩きをしてみると、お店で作っている燻製というのは、ほとんどが軽いスモークで、香りを楽しむためのもの。美味しいですが、その場合は日持ちがしないんです」 という津川氏の手がける燻製は、時間をかけてスモークし、長期保存も可能なもの。行程には、膨大な時間と労力を要します。素材の乾燥ひとつとっても、湿度、気温に合わせて製法や時間は様々。調味液でもあるハーブ液 “ソミュール液” も、素材に合わせて配合を変えて作る他、漬け込み時間も細かく変えています。そして、一度スモークを始めたら、スモーカーに付きっきり。肉や魚に燻香を何層もかける為にこまめにチップを替えなくてはいけません。時には、キッチンに寝袋を持ち込んで寝ずの番なんていうことも・・・。
それでも、時間と手間を惜しまないのは「私の作る燻製は、長期の保存ができます。ある時、燻製を一ヶ月ほど置くことで熟成が進み、旨みが増すことに気づいたんです」という理由から。この熟成こそ、「妙乃燻上」 最大の特長なのです。時間の経過と共に、ハーブやスパイスとスモーキーなフレーバーと素材本来の風味が見事に調和。素材の水分がしっかり抜けているので、持ち味や旨みがギュッと凝縮し、噛めば噛むほど、複雑な味わいが口の中に広がっていきます。素材の美味しさを引き出し、最良の状態へと引き上げる――。一度味わえば、燻製ではなく、“燻上” と呼ぶ理由がすぐにわかるでしょう。現在、注文から手元に届くまで約2ヶ月。それでも、多くの人がリピーターとなっています。