真のコミュニケーションの答えを
暗闇に探れ
◆ 情報の交信が成否を左右
1回のワークショップはメニューにより約4時間。8名で一つのグループを組みます。グループ間でコミュニケーションをとる際には何より声を大事にすることになります。
「私は〇〇です。ここにいます。あなたは誰で、どこにいますか?」 「私は〇〇です。今、きっとあなたの左側にいると思います」・・・・・・ 視覚が確保されている状態であれば、声も何も発さなくても一目瞭然で相手の視覚認識に任せられる自分の所在が、暗闇では、自分から声や音を出さない限り、自分の存在は 「無」 です。しかし、だからこそ、互いに位置を伝えあい、呼びあい、手で探りあってたどり着いた相手の存在感は強まります。そこに聞こえてくる「ではミッションです」のアナウンス・・・・・・。初めて会う人どうしなのに、「ここにいる人たちと問題解決を共有するのだ」 と自然に仲間意識が生まれ、エクササイズを重ねるごとに、それは期待感に変化していきます。
まずは輪になってのキャッチボール。使うのは、転がすと音が出る小さなクッションボールです。それを、輪 (になっているつもり) の中で転がしあい、全員にキャッチ&リリースが行き渡るようにするエクササイズです。しかし、誰がどこにいるのか見えませんから、「誰がボールを投げ、誰がボールを受け取る」 という事前の意思伝達が必須です。
たとえばA氏がボールを持って、B氏に投げるとしましょう。「私がボールを持っています。誰が受け取りますか?」 「私ことBが受け取ります。声を聞いていると、私はAさんの前方、少し右よりの方向にいると思います」 「では、投げます」 「はい、来ました。受け取りました。次はどなたが受けてくれますか」 という情報の交信が自然に生まれます。
このミッションで 「ボール」 は何の喩えでしょうか。答えは 「何でも」。私たちが普段行なう物や情報のやり取り、ビジネスであれば書類の受け渡し、指示や報告は、圧倒的に〈すでに準備された環境〉のもとで行なわれています。しかし、私たちはそれに甘えていないでしょうか? Dialog in the Dark が企業研修などで極めて良い効果をもたらすのは、このあたりに秘密がありそうです。
◆ 自分だけの基準は役に立たない
次は、積木を使っての共同ワーク。参加者には木のピースがいくつか配られます (積み木という具体的な名前は示されません)。全員のピースを組み合わせ、指定された形の完成品を作るというエクササイズです。他の人のピースを触るのはNG。各自がどんな形・大きさのピースを持っているか、それは他のメンバーのそれとどう組み合うか、誰の・どのピースを・どの順序で組み合わせれば最も効率よく指定された完成品が作れるか。すべて言葉だけでディスカッションします。
ゴールとなる完成形のイメージをどのように全員で構築し、その正確性はどのように担保するか。それぞれが、自分の持つピースのサイズや形を的確に伝えようとして模索します。具体的な建築物に形をたとえたり、「握りこぶし三個ぶん」 というように体のパーツを尺度に持ち出したり。各自の表現の仕方によって、グループの共通イメージが揺らいだり、固まったりします。 「あと5分です」――差し迫るタイムリミット。最後は、とにかく全員で合意した手順に沿い、代表者一人がピースを受け取って机の上に組み上げていきます。組み上がった形を皆で確認できるのは、全エクササイズを終えて部屋に戻ってからです。
ビジョンを間違いなく共有し、全員で素早くそれにたどり着く。どうでしょう。私たちは実にいろいろな場面で、これと同類のミッションを繰り返していませんか。