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カメラやテレビ、ミュージックプレイヤーなど、さまざまなものがデジタル化されていく現代社会。次々と便利なものが開発され、日々の暮らしはより快適になる一方で、大切な何かが失われているように感じるものです。印刷の世界も同様で、作業のコンピュータ化・効率化がすっかり浸透しています。そんな時代の流れとは反対に、あくまでアナログな技術を追求し、アナログにしかない魅力を発信し続けているのが京版画の老舗「竹笹堂(たけざさどう)」。
店頭に並ぶブックカバーやペンケース、絵はがきなどは、明るくモダンなデザインが印象的。眺めているうちに引きこまれ、ついついあれこれ買いたくなってしまうかもしれません。さらに指先で触れた時の心地よさも特別。通常の印刷物とはまるで異なる独特の風合いが今、さまざまな形で現代のライフスタイルに取り込まれています。
多色刷りの京版画は、総合美術ともよばれています。しっかり摺り込む江戸の浮世絵と異なり、ふわりと刷毛ではいたような摺り方をしていて、表面にやわらかさを持たせているのが特徴です。その違いが生まれた背景には、宮中などに見られる上品で優雅な京文化との関わりがうかがえます。
ではなぜ、伝統的な京版画がモダンに映るのか…。それは「竹笹堂」が商品開発のコンセプトに掲げている“伝統の進行形”にあるようです。摺り師の家系に生まれ5代目となった現店主の竹中健司氏は「本来、伝統はひとりでに新しくなっていくもの」と語ります。100年以上もかけて培われてきた技術を保全、継承、発展させるのに必要なのは、時代を見据えたものづくり。伝統の技や感性を土台に、より新しくより身近に感じてもらえる木版画制作を心構えとしているのです。その考えは、すでに6代目にも受け継がれています。
商品開発だけでなく、さらなる進化を求めた取り組みも積極的。普及の一環で開催している版画教室では日本国内はもちろん、ボストン大学、エディンボロ大学、ホノルル美術館など海外での実績も。世代や人種を問わず、高度な技術への関心は高く、その作品の美しさ、完成したときの達成感を同じように感じ取ってくれるといいます。教えることで教わることも多いとか。認知度を上げるだけでなく、大きな収穫があるようです。ほかにも京版画をもっとかっこよく魅力あるものにするため、イベントなどでのパフォーマンス展開も視野に入れています。つまりは京版画そのものを、いかに楽しいアートとして成長させるか。伝統の進行形は、とどまることがありません。「竹笹堂」の京版画が浮世を美しく変えていく、そんな未来がひとつ描けそうです。
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