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5、都心の自然と生物多様性

 
 東京ど真ん中にも、自然が残っていることをお分かりいただけたと思います。
 つい最近の日本各地での大洪水のニュース、そして都心のヒートアイランド現象等々を見るにつけ、異常気象が続いています。そして生物多様性の危機も叫ばれるようになりました。
 私が社外役員をやっているある上場会社では 「環境経営NO.1」 宣言を昨年から行っています。そしてステークホルダーの一つに 「地球」 そのものも選び、毎年 「地球への配当」 も行っています。
 そして、日本経済新聞社が昨年暮れに 「環境経営度調査」 で企業ランキングを行なったところ、業界で第二位となりました。何故トップになれなかったのか?
 環境経営推進体制や温暖化対策では、トップクラスの得点を得たものの、今年より評価対象となった汚染対策・生物多様性対応のうち、生物多様性の対応が不足しているようでした。具体的には、「生物多様性の指針の策定」 や 「事業活動が生物多様性に及ぼす影響の把握」 ができていないとのことでした。今では生物多様性行動指針もできて、そのもとに行動をしていますが、評価されるにはもう少し時間がかかるかも知れません。
 国としては、日本では1995年に 「生物多様性国家戦略」 が決定され、2008年6月には生態系の保全と持続可能な利用についての基本原則を定めた「生物多様性基本法」が施行されているんですね。知らなかった。(*^_^*)
 こうした姿勢を受けて、日本経団連自然保護協議会は2009年に 「生物多様化宣言」 を公布しています。私が社外役員をしている企業も、この趣旨に賛同して、重要な役割を担っているようです。そして今年10月には、注目の 「COP10 (生物多様性条約第10回締約国会議)」 が名古屋で開催されます。
 
 

6、生物多様性と会計との関係

 
 地球環境と生態系を考えるとき、生物多様性の問題は重要ですが、周囲の環境条件に適用し、生き残るために姿や機能を変えていくことを 「進化」 と言っていますね。生命の長い歴史の中で、この進化によって、多様な生物が分化してきています。生物同士の 「食べる‐食べられる」、いわゆる弱肉強食の関係の食物連鎖の構造のピラミッドの頂点に人間がいます。恐竜の時代から哺乳類が生き残り、そして人類へ。

・・・話が飛躍していってますので、話を戻します。
 食物連鎖のあらゆる事象における経済行為の結果として、あらゆる側面で 「会計」 が関わってきています。
自然の “恵み” の多くは、生態系の働きで作り出されるものですが、生物と二酸化炭素の炭素循環の中にも 「会計」 の概念が必要となってしまいました。いわゆる排出量取引の考え方です。
 排出量取引とは、温室効果ガスの削減を大幅に行った汚染主体と、温室効果ガス削減の不十分な汚染主体との間で温室効果ガスの排出の権利を取引する制度です。姿形の見えないものをどうやって認識し、測定するの?という厄介な問題もあります。下記*1*2参照
 会計が複雑化する中で、環境分野における会計情報の複雑さ ―― この会計情報の信頼性の確保の為に、環境会計があります。まだ発展途中の手法ではあるものの、10年ほど前から、日本公認会計士協会では私自身も多少関わりながら様々な意見書*3*4参照を公表しています――が、また輪をかけて会計を複雑にしています。
 排出量取引については、まだまだ私自身、勉強が進んでいませんが、いずれ卑近な事例を捉えて、「排出量取引に伴う収益」について、どんな認識がされているかを考えてみたいと思います。
 
 
 そんな難しいことをいきなり考える前に、次回は 「はい!お会計です。」 の言葉から 「収益の認識」 とは何なの?って考えてみましょう。

 
 
 
*1 「排出量取引の会計処理に関する当面の取扱い」 (平成21年6月23日 企業会計基準委員会・改正実務対応報告第15号)
 
 

 プロフィール 

渡辺俊之 Toshiyuki Watanabe

公認会計士・税理士

 経 歴 

早稲田大学商学部卒業後、監査法人に勤務。昭和50年に独立開業し、渡辺公認会計士事務所を設立。昭和59年に「優和公認会計士共同事務所」を設立発起し、平成6年、理事長に就任(その後、優和会計人グループとして発展し、現在70人が所属)。平成16年には、優和公認会計士共同事務所の仲間と共に「税理士法人優和」(事業所は全国5ヶ所)を設立し、理事長に就任。会計・税務業界の指導者的存在として知られている。東証1部、2部上場会社の社外監査役や地方公共団体の包括外部監査人なども歴任し、幅広く活躍している。

 オフィシャルホームページ 

http://www.watanabe-cpa.com/

 

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