令和の米騒動と転売ヤーが
私たちに問いかけているものとは

私からしたら、「値段は需要と供給のバランスで決まる」という当たり前のこととしか思わないんだけど、世間一般では彼らはものすごい悪者にされて、けちょんけちょんに言われている。その状況も、いくつか報道に目を通してみて初めて知った。
だけどさ、彼らはそんなに悪いことをしているんだろうか。
そりゃ、「主食でそういうことするな!」と怒る気持ちはわかるけど。これだけの飽食時代なのだから、パンとか麺類を食べればいいじゃないか。ちょっと前まで日本人の米の消費量が減った減ったって騒いでいたのに、なんで今さらお米なの? 供給側で意図的に量を絞って値段を釣り上げて儲けようとするのは、常識の範囲内というか、当たり前じゃないのかい? それで売れ残れば、それをした人は大損するし値段は下がるし、という結果になるだけであってね。
そういう人たちがいるのが世の中であり、社会ってもんじゃないかい? 物の値段は変わるのが当たり前なのであってね。こんなに何十年も物価が変わらずで、給料も変わらずで、そんな世の中が永遠に続くと思うほうがおかしいのであって。そう捉えれば、今回の米騒動は“頭お花畑”状態の日本人に喝を入れる、いいきっかけになったと思うよ。
サトーカメラにも転売ヤーは来る
そのことをどう捉えるか
それに対し現場は、「買い占めをされると地域のお客さんにご迷惑がかかるから」という理由で、「一家族につきお買い上げは2個まで」という制限を設けることで対応している。
私は「それは違う」と思ってね。商品が減って地域のお客さんに迷惑がかかるのは供給側である店側の問題であって、欲しい人に商品を充分に行き渡らせることが商業者の使命だ。“欲しい人”が地域の人なのか転売ヤーなのかは関係ない。納得し、欲しいと思っているならば、みんな大事な「お客さん」だ。
第一、地元のお客さんが転売ヤーじゃないと決めつけてるのもおかしい。「これってネットだとこんな値段で売られてるんだな。この前サトーカメラで見たけどもっと安かったぞ」と思って地元の人がまとめ買いをしに来たら、断るのか? また、ネットでの相場が高いうちにメルカリでちょっとお小遣い稼ぎをしたいっていうそのお客さんの気持ちは、そんなに邪なのか?
私には、そうは思えないんだよなぁ。
日本三大金運神社「金劍宮」で
家族のお守りを買えなかった私
北陸の支援先のところに行った帰り、支援先の社長と一緒に金劍宮に参拝した。お守りが古くなっていたから新しいお守りを買って、せっかくだから家族のぶんも・・・と思ったら、神社の人から「お一人様一体までとさせていただいております」と言われちゃったんだよね。
そう言われれば、コロナが始まってからだったかな、そういう制限がかかっていたのを思い出した。その時は確か、お守りの製造元が材料不足か何かで、充分に用意できないから、というのが理由だった。だから私も、まだその問題が解決してないのかな、と思って聞いたら、今回は違った。「転売ヤーが買い占めに来るから」という理由だった。
金劍宮に参詣に行けば、お守りは500円で買える(お守りは売り買いするものじゃないそうだから、本当はこの言い方は良くないけど、話をわかりやすくするために便宜上こう表現させてください)。そうすると、一人で10体とか買いに来て、ネットの個人売買で一体1万円とかで売る人が出てきたんだって。神社側としては、それは止めてくださいということで、販売制限ならぬ“授け制限”をかけた。それに私がひっかかってしまったわけだよ。
「駄目ですか? 転売ヤーじゃない、家族のぶんなんですけど」
「申し訳ありません。一体までにさせていただいてます」
「たくさんじゃないですよ。嫁と息子と娘のぶん。全部で5体。栃木から来たんです。駄目ですか?」
「はい。申し訳ありません」
「ということは、私だけが御利益を得ちゃうんですね! あとは黙ってろと(笑)。何だか家族に悪いなぁ~。でも、しょうがないよね。それでも欲しければ私が5回来るか、家族を連れてくるかですよね。そうか、それが本当の御利益か!」
私も大人だ。困っている神社の職員さんを見て、そんなふうに返して場を和ませて帰ってきた。
値段は動くもの。動いていいもの。
その変化に上手に乗っていこう
ネットに出ている金劍宮のお守りを買う人は、なぜ高くても買うのか。現地で参詣すれば500円なのは知ってるはずなんだよ。知っていて、その十倍以上とかの値段で買ってるんだ。それはつまり、実際参詣しに行くには旅費も時間もかかるし、忙しくて行けない。だから、手間をお金で買う発想で購入しているんだよね。
「まさにそういうことを、お守りに対してするもんじゃないんだよ」と仰るのはその通りだと思う。正しい。けど、俗世の人間のすることだもの。正論で責めても仕方ない。そういうことをする人はするし、しない人はしない。そう考えるしかないと思うよ。
――とは言え。とは言えだよ。もし、先日私が家族のぶんをいただいて帰れなかったのが転売ヤーの皆さんのせいだとしたら、個人的には怨みたい(笑)。だって、家族の一人が代表して参詣に来ているんだもの。ネットでそんなふうに売られていなければ、あと一体、せめて奥さんのぶんぐらいは、いただけていたかもしれないじゃないか。
それにまた、もしこれが「日本最強の金運がアップする神社」として名高い金劍宮のお守りじゃなかったら、こういう現象も起きないわけでね。
昔は「一物一価の法則」に対し商業者として真剣に立ち向かってきたけど、近年はむしろ「一物多価の法則」が主流になっているという日経新聞の分析もある。最初に話した米の値段だって、同じ銘柄の同じ5㎏入りが、昔は安売りすると問題にされたのが、今は高売りで問題になるのだから、逆に正常な動きだと思うよ。
そうやって考えると、転売ヤーとか米の値段高騰とかは、「値段は動くものだ。動いていいものなんだ」という感覚を日本の社会が思い出す前兆かもしれない。だとしたら、一方的に否定するより、うまくその波に乗っていこう。
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vol.101 金劍宮のお守りと米の値段の高騰から、「転売ヤーってそんなに悪者なの?」と考えてみた
(2025.3.19)
著者プロフィール
佐藤 勝人 Katsuhito Sato
サトーカメラ代表取締役副社長/日本販売促進研究所.商業経営コンサルタント/想道美留(上海)有限公司チーフコンサルタント/作新学院大学客員教授/宇都宮メディア.アーツ専門学校特別講師/商業経営者育成「勝人塾」塾長
経 歴
栃木県宇都宮市生まれ。1988年、23歳で家業のカメラ店を地域密着型のカメラ写真専門店に業態転換し社員ゼロから兄弟でスタート。「想い出をキレイに一生残すために」という企業理念のもと、栃木県エリアに絞り込み専門分野に集中特化することで独自の経営スタイルを確立しながら自身4度目となるビジネスモデルの変革に挑戦中。栃木県民のカメラ・レンズ年間消費量を全国平均の3倍以上に押し上げ圧倒的1位を獲得(総務省調べ)。2015年キヤノン中国と業務提携しサトーカメラ宇都宮本店をモデルにしたアジア№1の上海ショールームを開設。中国のカメラ業界のコンサルティングにも携わっている。また商業経営コンサルタントとしても全国15ヶ所で経営者育成塾「勝人塾」を主宰。実務家歴39年目にして商業経営コンサルタント歴22年目と二足の草鞋を履き続ける実践的育成法で唯一無二の指導者となる。年商1000万〜1兆円企業と支援先は広がり、規模・業態・業種・業界を問わず、あらゆる企業から評価を得ている。最新刊に「地域密着店がリアル×ネットで全国繁盛店になる方法」(同文館出版)がある。Youtube公式チャンネル「サトーカメラch」「佐藤勝人」でも情報発信中。
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