第6回 ラテラルシンキング3つのコツ
こんにちは。木村尚義です。ロジカルシンキングと対になるラテラルシンキング。今回は、ラテラルシンキングを使えるようになるために3つのコツを紹介します。
1.前提を疑う
2.抽象化
3.セレンディピティ
それぞれは切り離せるわけではなくて、時には3つとも重なり合うこともあります。技術をマスターするというより、なんとなく、そんな心得だと思ってください。
と、その前に、まずは恒例の謎かけから。
暦(こよみ)さん一家の4人姉弟のあきらくん。一番上はお姉さんで「つきこ」です。次女は「かれん」、三男は「みずと」です。さて、あきらくんの家では一番下の末っ子は、いったいなんという名前でしょう。あなたの推理力を駆使して答えてください。
ということで、3つのコツです。
1.前提を疑う
そのやり方は正しいのか? 今はそうだとしても将来もそうなのか。
よく、新しいことを提案する人は「わか者」「ばか者」「よそ者」といわれます。これらの人の共通点は、そもそも社会常識を知らない、もしくは、わからないから、前提に囚われずに自由な発想ができるという点です。自由な発想は最初に常識や前提を素直に疑います。そういうものだとして片付けてしまわず、幼児が見るもの聞くものになぜなぜと質問する素直さで挑みます。
2.抽象化
それは、何をするものなのか。そもそもどうなっていればいいのか。
抽象化ができるようになれば、ものの本質というか骨格を見抜けるようになります。骨格さえわかれば、外にかぶせるものを変えていくつものバリエーションを生み出すことができます。昔から日本人はこの抽象化が得意です。抽象化を別の言葉で言い換えれば見立てです。落語の扇子を箸に見立て架空のうどんを食べる仕草や庭の砂を川に見立てる枯山水も抽象化の一例です。
3.セレンディピティ
偶然を偶然として無視せずに、何かに使えるはずと自分自身の仕事に当てはめる。
澤泉重一さんは著書『偶然からモノを見つけ出す能力――セレンディピティの活かし方』でセレンディピティを「偶察力」と訳しています。見事な造語だと思います。偶然に何かを見つけ出す幸運を指すのではなく、偶然をきっかけに注意深く観察し、何かの閃きを得て、新たなアイデアや問題解決の糸口を見つけられるというのです。
3つのコツを活かすには
前提や常識を疑いたくとも、日常は、見慣れていますから改めて気付くことはなかなかありません。それに、いちいち疑っていたら神経が持ちません。いっぽうで旅行先では、いろいろな発見があります。東京の人が大阪に来れば、エスカレーターの乗り方が違うことに気付くでしょう。東京の常識は急ぎの人が歩けるように右側を空けるのですけれど、大阪では左になります。ちなみに本来のマナーは「事故防止のため歩かずに止まって乗る」です。
日頃忙しいから旅行に行けない? あなたの職場は出張がないからムリ? いえいえ、逆に考えましょう。自分が旅行に行けないのなら、旅行者を観察すればいいのです。とりわけ外国人観光客を観察していると意外なことを発見できます。
日本の絶景ポイントはそこに住んでいる日本人がよく知っているハズ。これが「常識」です。でも、日本人よりも外国客が詳しかった例もあります。
外国客から人気のスポットと言えば、京都を連想しますが、さらに京都にならぶ人気スポットがあります。それが、山梨県の富士吉田市にある新倉山浅間公園。京都からは富士山は見えません。でも、ここからなら富士山が見えます。しかも、写真を撮ると、五重塔に富士山が一度にフレームに収まります。季節によって、秋の紅葉や冬の雪景色に春の桜と、四季を問わずに楽しめるのです。海外の日本旅行者向けミシュランガイドの表紙を飾ったことで大人気になってようやく日本人が気付いたほど、日本人はここを知りませんでした。
他にも、見慣れた渋谷のスクランブル交差点では、あれだけの人が四方からぶつからずに渡れる不思議な風景をスマホに収める外国客をよく見かけます。
外国人旅行客の意外な宿泊先としてカプセルホテルも人気です。終電がなくなった時に使うはずのカプセルホテルは、外国人旅行者にとっては遺体安置所に見えるそうで、テーマパークと同じように感じるそうです。そこに目先の利くカプセルホテルの経営者は、多国語に対応して外国人を積極的に受け入れはじめました。中にはニンジャをテーマにしてしまったカプセルホテルもあります。外国人に人気だという偶然の見聞を無視せず、自分もカプセルホテルをテーマパークと見立てたわけです。
そうはいっても、いつもと違う体験は難しい? 解決は簡単です。いつも通う道を変えるだけでも違う発見があるはずです。他にも、誘われたら一度は断らずに行ってみる。違う世代や違う生活環境で育った人の話を聞くといろいろな発見があるものですよ。
【注意深く名前を推理する問題】答え
もちろん「あきら」です。
暦家ですし、月火水ときているから、木に関連する名前だと思いました? それ、ひねりすぎです。質問中に2回も答えを出してましたよね? 「質問中に答えが出るはずがない」という前提を、素直に疑ってください。
次回は、抽象化を掘り下げます。「AKB48と笑点は同じなの?」です。
木村尚義の「実践! ラテラルシンキング塾」
第6回 ラテラルシンキング3つのコツ
第6回 ラテラルシンキング3つのコツ
執筆者プロフィール
木村尚義(Kimura Naoyoshi)
創客営業研究所代表・企業研修コンサルタント
経 歴
日本一ラテラルシンキング(水平思考)関連書を執筆している著者。1962年生まれ。流通経済大学卒業後、ソフトハウスを経てOA機器販社に入社。不採算店舗の再建を任され、逆転の発想を駆使して売り上げを5倍に改善する。その後、IT教育会社に転職、研修講師としてのスキルを磨く。自身が30年以上研究している、既成概念にとらわれずにアイデアを発想する思考法を企業に提供し好評を得ている。また、銀行、商社、通信会社、保険会社、自治体などに「発想法研修」を提供している。遊ぶだけで頭がよくなる強制発想ゲーム「フラッシュ@ブレイン」の考案者。著書に、『ずるい考え方 ゼロから始めるラテラルシンキング入門』(あさ出版)、『ひらめく人の思考術 物語で身につくラテラル・シンキング』(早川書房)など多数。
オフィシャルホームページ
http://www.soeiken.net/(2016.10.26)
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