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 前々回9月号で、税務調査が実施される頻度は会社によって温度差があることを説明しました。前回10月号においては、税務調査の対象となりやすい会社について 「決算書で異常値がある」 「決算書の経営分析項目で異常値がある」 といった特徴を解説しました。今回は、「会社及び経営者個人で大きなお金の動きがあった会社」 及び 「急成長した会社(マスコミ等で話題になった会社)」 や 「取引先や従業員とトラブルがあった会社」 のケースを解説します。
 
 
 

■会社及び経営者個人で大きなお金の動きがあった会社

  会社で多額の投資を行なった場合や、経営者個人で自宅や収益不動産の購入などを行なった場合に、税務調査が実施されることがあります。会社の利益や経営者個人の役員報酬がそれほど高くない場合には、お金の出所を疑われます。例えば、その投資資金を売上除外でまかなっているのではないかなどと疑われるのです。
  この場合、資金の源泉として、銀行借入金で○○円、経営者からの借入金で○○円、友人からの出資金で○○円などとメモ書きなどを残しておくと良いでしょう。要は、後日の税務調査時にきちんと説明できるようにしておければいいのです。当たり前ですが、「税務調査されるのが嫌だから投資を行なうのをためらう」 というのでは本末転倒ですから、脱税をされていない限りはあまり神経質に考える必要はありません。
  また、会社で投資を行なった場合には、関連の経理処理の間違いも散見されるものなので、その点を調査されることもよくあります。資産の取得価額に算入しないといけないものを誤って経費処理していたり、事業供用日から計上できる減価償却費の起算日があいまいな場合には要注意です。
  他にも、「会社及び経営者個人で大きなお金の動きがある場合」 とは、経営者から会社へ、又は会社から経営者へ、多額の資金の貸付が行なわれる場合も含みます。これは、上記同様にその資金源泉の確認と、その資金使途、更には貸し借りにおける利息の計上などについて調べられることがあります。
 
 

■急成長した会社(マスコミ等で話題になった会社)

 
  急成長した会社というのは、税務調査の対象となりやすいと言えるでしょう。ヒット商品が出て売上が急増したり、マスコミ等で話題になって一気にブレイクした場合などが該当します。
  急成長した会社というのは、概して営業優先で経理や管理が後回しになりがちです。結果、経理処理やそれにまつわる税務処理がいい加減になっていることがあります。この場合、税務調査官としては、多額の増差税額に発展する可能性があると考えて調査に来ることもあります。
 
  また1つ知っておいてほしいのが、マスコミで話題になると、その出演したテレビや掲載された記事などは、お客さんだけではなくて税務署員も見ていることがあります。そして税務署に届いている決算書と比べて、なぜこんなに売上や利益が少ないのだろうとなれば、税務調査の可能性が高まります。
 
 

■取引先や従業員とトラブルがあった会社

 
 最後に、意外と思われるかもしれませんが、「取引先や従業員とトラブルがあった会社」 も狙われやすいです。というのも、税務調査においても、内部告発や第三者通報という密告制度があるからです。
  税務署は経験則として、トラブルが多い会社は得てして税務申告においても問題がある場合が多いということを知っているのでしょう。また、このような会社では、社長がワンマンで経理はどんぶり勘定というケースも、実際多いです。この場合、税務調査が実施されると、多額の追徴税額が計上されることもあります。
 
  以上、3回にわたって、税務調査の対象となりやすい会社を見てきました。税務署も実調率を上げるために、ある意味必死で仕事をされていますので、税務調査を受ける側の会社も、それなりの事前準備が必要ではないかと思います。
 
 
今日のこの話が経営者の皆様のお役に立つことができれば幸いです。
 
次回は最終回。「経営者にとって、税金とは?」と題し、連載を締めくくる内容でお送りします。 
 
 
 

 執筆者プロフィール 

今村仁 Imamura Hitoshi

マネーコンシェルジュ税理士法人 代表社員

 経 歴 

京都府京都市出身。立命館大学経営学部企業会計コース卒 会計事務所を2社経験後、ソニー株式会社に勤務。その後2003年今村仁税理士事務所開業、2007年マネーコンシェルジュ税理士法人に改組、代表社員に就任。税理士・宅地建物取引主任者・CFP等ベンチャー・起業家・中小企業の参謀役税理士(SZ)として、会社設立から株式公開支援まで幅広くサポート。大阪・京都・神戸・滋賀・奈良・東京・横浜を中心に活動。マネーコンシェルジュ税理士法人(旧今村仁税理士事務所)

 オフィシャルホームページ 

http://www.money-c.com/

 
 
 
 

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