最終回 経営者にとって、税金とは?
■慰安旅行を実施したA社の話
従業員思いの社長は、この忙しい中がんばってくれた従業員に報いたいと、従業員の家族も交えた 「慰安旅行」 を計画しました。
■計画では…
また、妻であれ親であれ家族を連れてくる人は、本人以外にもう1人分は会社負担にしてあげることとし、それ以上は個人負担を計画していました。総額200万円ほどになりましたが、今後の社内の結束を固めるうえでも必要経費であると、社長は考えていました。
■表向きの税金の話
ちなみに、税務署の公式文書では、
「その旅行の企画立案、主催者、旅行の目的・規模・行程、従業員の参加割合、使用者及び参加従業員の負担額及び負担割合などを総合勘案して実態に即した処理をすること」としながらも、次のいずれの要件も満たしている場合には、原則として課税しなくて差し支えないとしています。
■経営者にとって、税金とは?
一番良いのは、税務上OKであって、なおかつ皆で楽しく慰安旅行に行けることでしょう。
しかし、税務上の話をすると、慰安旅行については、「4泊5日以内であり」、「従業員の50%以上が参加し、」「会社負担金額については、おおむね1人10万円程度」 が無難ということになってしまいます。
でも、本当に大事なのは、その200万円という大金にかけた社長の思いが実現することではないでしょうか。たとえ 「給与課税」 されようが、一部が役員賞与として損金不算入と言われようが、そういったことを理解したうえで、経営者としては、「税金に振り回されない判断」 が求められるのではないでしょうか。というのも、税制は毎年変わりますし、そもそも今の税法が、経営においても 「正しい」 という保証はないのですから。
もちろん、かといって 「脱税すべし」 ということではありません。私がこの連載の最後にお伝えしたいのは、経営者にとっての税金を考えると、まずは真面目に向き合うことが重要だが、それだけではなく、時には 「税金に振り回されない経営判断」 が大切であると知っておいてほしいということです。
執筆者プロフィール
今村仁 Imamura Hitoshi
マネーコンシェルジュ税理士法人 代表社員
経 歴
京都府京都市出身。立命館大学経営学部企業会計コース卒 会計事務所を2社経験後、ソニー株式会社に勤務。その後2003年今村仁税理士事務所開業、2007年マネーコンシェルジュ税理士法人に改組、代表社員に就任。税理士・宅地建物取引主任者・CFP等ベンチャー・起業家・中小企業の参謀役税理士(SZ)として、会社設立から株式公開支援まで幅広くサポート。大阪・京都・神戸・滋賀・奈良・東京・横浜を中心に活動。マネーコンシェルジュ税理士法人(旧今村仁税理士事務所)
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