人材から人財に人を磨き上げる 〈後編〉
私は、日本のモノづくりの方法が世界に通用しなくなっていくのではないかと危惧する。社会全体が細分化されてしまって、全体を構想して俯瞰する人間がいなくなっている。
つまり、日本の未来のグランドデザインを描く人間がいなくなっている。知識・見識・胆識を持って、コトに当たる度量のある人間がいなくなっている。
瑣末な議論に現をぬかし、議論のための議論をやっている。机上の空理空論では、人は動かない。
日本には、地球規模的に日本の国を憂う人、世界全体を俯瞰して、戦略的に国家構想を練れる人がいなくなった。日本丸は、何処へ行こうとするのか。
つまり、日本の未来の指針と方向性を示す「舵取り」に命をかける国士がいなくなっている。こういうことが、日本社会全体におきている。
政治も然りだ。松下幸之助翁の高邁な心で創ったはずの「松下政経塾」も形骸化しようとしている。企業経営のあり方を政治に取り入れるということを本来の目的にしていたはずのものが、いつの間にか、政治屋になってエゴの塊りになっている。
つまり、企業の利益追求だけが先行して、社会が置きざりにされていく。社会を構成する弱者救済の法律を施行するが、それが本来の自然の摂理の理に適っているのかどうか。真の意味での思考力に欠けているような気がしてならない。
政治屋になった人たちは気づかないと思われるが、俯瞰の目で眺めると、空理空論を実際の政治に生かそうとしても、それは生きないことは分かりきっている。それを無理矢理にやってのけようとする。
身体に服を合わせるのか、服に身体を合わせるのか、本末転倒もいいところである。
野党のあいだは空理空論でもよい。政権を掌握する与党になれば、口角泡を飛ばしていた野党時代と同じでは国民から見離される。国際的に通用する国家戦略の構想を練るチームを立ち上げなければならないときである。日本の政権与党の内情で、国際貢献を口約束するのは止めたほうがよい。
政治も企業経営も同様で、テクニックを駆使し、スキルアップを図ることよりも、人間を磨く、つまり人間形成を第一義に考えることが先決である。つまり、人を育成することが急務である。
業務の運営・運用スキルを身につけることよりも、急がば回れで人財を作ることが先決である。
万物の霊長である人間は、「知識・知恵・英知」の『三知』を磨くことから始めなければならない。企業は人で構成されており、組織で動いている。
人が人の役の立つことを学習させるのが企業の責務であり、それが日本社会を良くしていくことになる。
目先の利益(資本家への利益供与)だけにこだわることなく、生産効率を上げるためのテクニックやスキルを身につける教育ではなく、自然の真理・摂理を教育していくことが人材を人財にかえることに繋がる。
紙幅の関係で、イヨイヨ最後の詰めに入ってきた。
最近のインターネットワークによって情報が氾濫するようになっている。驚くべき情報量である。人間が自然の摂理を知らなければ、その情報の量に侵されて中身が分からなくなる。判断の基準や決断の時を逃すことになる。
たとえば、今日、耳に入り、目に入ったことを「これはこうです。このようなことです」という実情の報告をしたり、連絡だけをしていると、その情報は「くだらない」何の役にも立たないものである。
報告や連絡の目線を変えれば「今日は、こういうことを見て、聞いて、解決は、こういう理由で、こういうような解決が望ましいと思います」「その解決策には、こういうような手段方法があります」。
情報を分析し、そこに潜在している問題・課題を取り出して、解決のための選択肢をいくつか用意して、その中から最良と思うものを実践する。
つまり、自分なりの意思決定であり、責任を持つということである。情報の処理方法が甘くデタラメだと判断のしようがないということになる。
人間を磨くと情報の処理方法が適正に行えるようになる。このことは、いかなる戦略を練るときにも必要なことであり、つまり、組織を運営、機能させるのも、マーケティング、生産、販売、労務、会計・財務の管理も、人が管理をするわけだから、先ずは、人育てから始めて、人財に変化させることが肝要である。
つまり、この世は人の世の中であって、金やモノの世の中ではないという一語に尽きる。人育てが企業を未来に向かって繁栄させ、成長させる原動力になる。
人財の育成は、企業の発展ばかりでなく、日本経済の成長戦略の要になることもつけ加えて筆をおく。
およそ1年に渡って、Webでお付き合いいただきましたが、何らかのお役に立てたでしょうか。実は、そこが最も気になるところです。
ありがとうございました。読者の皆さんと編集の皆さんにお礼申し上げます。
執筆者プロフィール
橋本英夫 Hashimoto Hideo
株式会社 ハッピー 代表取締役
経 歴
1949年、兵庫県生まれ。高校卒業後、大型プラントで使用するバルブや弁のメーカーに技術者として就職。蒸気の流体制御機器の設計に携わる。75年にECCハシモトを設立、浄水再生装置の製造を始める。79年石油系溶剤浄油再生装置を開発し、(株)京都産業を設立。「ハッピークリーニング」の名称でクリーニング店の経営にも乗り出す。その後、2002年に(株)ハッピーを設立し、従来のクリーニングの常識を覆す『ケア・メンテ』という新業態を創造して普及に尽力している。2005年、一般消費者に対する啓蒙活動団体としてNPO法人日本洗濯ソムリエ協会を設立。2006年に、従来の洗浄理論を覆す世界初の「無重力バランス洗浄方法」を発明し、方法論特許・装置特許を取得。シルエットや風合いを保ったままの「水洗い」を実現し、地球環境に優しく人体に悪影響を及ぼさない画期的な洗浄方法として、世界からも注目を集めている。
オフィシャルホームページ
http://www.kyoto-happy.co.jp/